姫(3)の算数教室
魔王様(♀)よりも姫(3)の話題が増えたのは、べつに魔王様(♀)が留学したとかではない。
ただ、幼稚園に行って接する時間が少なくなったため、昼の少しの合間に遊び相手になるのは、もっぱら姫(3)になった。
「くまさんが4匹いて、うさぎさんが2匹いる動物園は、全部で何匹の動物がいるでしょう」
「6です」
「おぉ……」
なんか、最近姫は、足し算にハマっている。
「お饅頭を4つとおだんごを3つ用意しましたが、姫はすぐに2つ食べてしまいました。そうしたら魔王様もきて「わらわもほしい」というので、1つ分けてあげました。残ったのはいくつでしょう」
「4です」
「足し算と引き算、完璧ですね」
3歳でこのレベルを暗算できたらすごいと思う。姫(3)の場合は5円玉のような形をした木のブロックを50個持っていて、わたしが提示するストーリーにあわせてそのブロックを増減させ、最終的に数を数えるので、まぁ、間違えることはないのだが。
すごいすごいといいながら頭をなでていると、姫(3)も楽しいようだ。
ただ、彼女は算数が好きなわけではなく、いろんな動物や食べ物が話に出てくることが大事なようで、
「3足す4は?」
みたいなのじゃだめだ。大事なのはストーリー。
そのうち、自分もそんなストーリーを作ってみたくなったらしい。
「今度は自分がやる」
とばかりに、わたしに問題を出してきた。
「カエルさんが9いました。うさぎさんが3来ました。そこへまーちゃん(魔王様の仮のあだ名)がきて、わたくしも来ました」
黙って聞くわたし。もちろん『わたくし』みたいな言い方はしない。エッセイ内での姫補正だ。
「その後、カエルさんとうさぎさんは、飴に変わりました。そしてまーちゃんがきて……」
「ちょっとストップ」
魔王様が二人になってしまった。
「わたくしも2人来て……」
「……」
確信犯らしい。
増殖した姉妹は、飴に変わったカエルとうさぎを物色し始める。
「まーちゃんとわたくしは「どれがいいかなー」と言って、「これがいいよ」と言って、「でもこれは少ししかないから」と言って……」
……もはや、足し算でも引き算でもなくなっている。
姫(3)はさらにシルバニアファミリーの家を持ち出して、
「うさぎのお父さんは、船に乗って……」
「あ、あの……姫」
「なんでしょう?」
「あ、いえ、何でもありません」
何かご質問でも?……という、無垢な瞳に、何もいえない。
結局、別の遊びが始まったのだろうと眺めていると、おもむろに姫(3)は言った。
「パンダさんは何個でしょう」
「パンダ一回も出てきてなーーーい!!!!」
……そんな漫才。(笑)




