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ちょっときいて  作者: 矢久 勝基


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下界に降りた魔王様(♀)

 知ってのとおり……かは知らないが魔王様(♀)は現在幼稚園児。家にいただけではできなかった多くの経験をつんでいるようだ。

 しかし中には多大な勘違いも多いようで、そのたびに魔王様(♀)は我が家に旋風を巻き起こしている。

「これ召使い。わらわは今度、いもほり遠足なるものに行くのだぞ」

「おお、あれはいい思い出になりますね。私も昔のことはほとんど何も覚えていないのに、いもほり遠足のことだけは覚えているくらいです」

「ふむ。楽しみじゃのう」

「晴れるといいですね」

「うむ。それで、しぇんしぇー(先生)にいわれたのじゃが、イモを掘るのにシャベルが必要らしい」

「用意しておきましょう」

「あとは、掘ったイモを入れておくのにビニール袋も必要だそうじゃ」

「マジックで名前も書いておきましょう」

「そして忘れてはならんものが、イモじゃ」

「え?」

「イモを持参しろとしぇんしぇー(先生)が言っておった」

「いもほり遠足にイモを持っていってどうするんですか!!」

「でもわらわは確かにそう言われたのじゃ!!」

「何かの間違いです!!」

「イモを持っていかないとイモが掘れんじゃないか!! 必ず用意しろ!!」

「何でイモを持ってかないとイモが掘れないんですか!!!」

「そりゃぁおぬし

1、まずイモを埋める。

2、埋めたところを掘る

3、イモがある

 ……これがイモ掘りじゃ!!!!」

「大きな勘違いですーーーー!!!!!」


 ……そんないもほりを終えた魔王様(♀)。意気揚々と、自分で埋めたわけではないイモを持ち帰ると言った。

「これ召使い。いもほりの次ははろりんじゃ」

「はろりん?」

「はろりんを知らんのか?」

「頭痛のくすりですか?」

 それはケロリンだ。

「あれじゃ。お化けになってパーティする……」

「ああ! ハロウィンですね!」

「失礼な! 初めからそう言っておるわ!!」

「はい。それで、ハロウィンがどうしました?」

「うちの幼稚園でははろりんで祭りをする」

「いいですね」

「浴衣を着て踊るそうじゃ。用意せい」

「それは盆踊りです!!!」


 ……さらにある日、おびえて帰ってきた。

 よほど怖いことがあったのか……ということはあまり考えず、熱が出て調子が悪いのかといった状態だったと、召使い2が述懐していたその日……。

 事情を聞けば、魔王様(♀)は切羽詰った声で言った。

「明日は……避難訓練なのじゃ……」

「あ、そうなんですか」

「そうなんですか、じゃなぁぁい!」

「え?」

「火事で死んだらどうするんじゃ!!!」

「訓練だから火は出ません!!」

「地震で死んだらどうするんじゃぁぁ!!!」

「訓練だから地震もありません!!!」

「とにかく死んだらどうするんじゃぁぁぁ!!!!」

「死なないために訓練をするのです!!!!!!」

 ……しかし結局最後まで意味がよく分からなかったようで、その日は決死の思いで幼稚園に向かったようだ。


 ああ魔王様(♀)。

 現在鋭意、成長中である。

 ……いっそのこと成長痛ともいえる日々だ。

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