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ちょっときいて  作者: 矢久 勝基


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発想力

 魔王様(♀)は幼稚園に通い始め、いろいろな初体験に触れているようだが、傑作にかわいらしい話を聞いたので、"ちょっときいて"。


 メロディオンって、皆様ご存知だろうか。

 鍵盤ハーモニカで分かる人はそれ。ピアノみたいな鍵盤に息を吹き込んで音を鳴らす仕組みの楽器である。まぁ、ラッパの音階を変える部分がピアノの形をしてると言えば……分かる?……原理はアコーディオンみたいなもの。

 もう、どうしようも分からなければ検索かけてみて。(←表現者失格)

 この楽器は、口にパイプみたいなものをくわえて、ラッパや笛のように、それに息を吹いて音を出す。その時に鍵盤の『ド』を押せば『ド』が出るという寸法だ。


 しかし魔王様(♀)は、その仕組みが分からない。

 幼稚園の先生が、

「さぁ、『ド』を吹いてみましょう」

 と言って、クラス内で次々に発せられる『ド』を聞いて回っていたところ、どうも変な音が聞こえてきたらしい。

 その音の発信源に誘導されてみると、一人の新入り女子児童。

 魔王様は音の出し方がいまいち理解できておらず、『ド』『ド』『ド』という"声"をパイプに送り込んでおられたそうだ。ウケる。

 一応弁護してやれば、音が出なかったのは彼女だけではなかったらしいので、まぁ、初めて楽器に触れる子達にとっては難しい部分もあるのだろう。


 まぁホント、バカな話かもしれないけども、ここを読んだクリエイターの方々の中で、ネタとしても今の話を聞く前にこんな発想を四コマ漫画とかにできた人ってどれくらいいるだろう。

 少なくとも矢久にはない発想であり、これは親バカとは別に、発想力がすげぇと思ってしまう。

 しかし、子供の世界というのは過酷だ。

 人と"ちょっと違う"というものを受け入れられず爪弾きにしていくし、それがため、皆個性を消して人と同じになろうとする。子供の頃は特にそれが顕著な気がする。今は違うのかな。


 しかし自称クリエイターの矢久は思うのだ。

 人と違う発想ができる能力を、他人に馬鹿にされるから伸ばしていけない土壌というのは、損だよなと……。もっともっと自由に、独自の発想を広げて憚られない環境に子供達がいたら、彼らの頭の中身ってどうなるんだろうって思う。

 俺自身は昔から協調性がなく、教師をして親に「お宅の子供は迷惑です」と訴えられていたらしいから、そうとうトバしていた子供だったのだとは思う。しかしそれでも、人に馬鹿にされないように……みたいな気持ちはたくさん持っていたし、それがためにやらなかったことや遠慮したこともいろいろあった。

 それってやっぱり、他の子供に対する遠慮からくる、能力アップの放棄だったと思う。

 生き残るために人に混ざって目立たないようにするのも、一つ、大切な社会性なのだと思うのだが、そういう遠慮がまったくなかった場合、自分に、他に身についている能力や発想はなかったか。

 発想を武器にする夢を目指す、今にして思う。


 今、魔王様(♀)はとにかく自由奔放だ。

 『ド』『ド』『ド』もそうだが、「英語で歌を歌う」とか言いながら、自分で言葉を作り出した自称英語という名の宇宙語で歌を歌ってみたり、幼稚園で絵を描かせても、なんか一人だけ全然違うものを描いてたりしてる。矢久の娘だけにトバしている。

 しかし、そんな魔王様もきっと、だんだん人に混ざっていくんだろう。そうやって失くしていく発想力とかがあるとすればちょっともったいない気もする。

 平凡な発想しかできない矢久脳の詰まった頭を自分で開けてみて、深くそう思う毎日だ。

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