自分へのハードル
「先生。わたしは腰痛がひどくて高血圧で疲れやすく、腰のせいか膝も痛いんですけど、いい薬はありませんか」
「それは大変ですね」
「いろんな病院にいったんですけど、薬が増えるわりには全然治らないんですよ」
「他の医者はなんと?」
「ストレスが原因なんじゃないかってことです」
「確かにストレスは身体に密接に関わりますからね。だからとてストレスのたまらない環境に、すぐに身を置くこともできないのが今の日本の労働環境です」
「はい」
「ストレスとうまく付き合いながら、ストレスを軽減する趣味を見つけることも大切だと思います」
「無趣味なんですよ」
「とりあえず、体型を見る限り、腰痛を軽減するのに少し運動をされたほうがいいかもしれません」
「いやですよ。体を動かすのは嫌いなんです」
「でも、肥満というのは腰痛の多くの原因を占めます。膝の痛みにも関わるので、適度の運動はオススメです」
「仕事で動いてますよ?」
「仕事で動いて肥満を解消できるのはスポーツ選手かインストラクターくらいだと思ってください。なんならプロ野球選手にだって肥満体型の人がいるくらいです。普通の仕事や家事でやせるほど動いてると思うのは、大体の場合間違いです」
「でも、休日はのんびりしたいんです」
「……あなた、本当に腰痛を解消したいと思ってますか?」
「思ってます。だけど高血圧だから激しい運動はできないんです」
「激しくなくても、適度に体を動かす習慣をつけることが、結果肥満を解消し、血圧にも好影響を与えます。体力もつけば疲れやすい体も解消できます」
「わたしには向いてないです。他の方法はないですか?」
「……じゃあ、あとは食事療法ですね。昨日の夜とかはなにを食べましたか?」
「からあげ9個です」
「他は?」
「だけです」
「……まずはバランスのいい食生活を心がけるもの大事です。高血圧にも肥満にも。……結果、腰痛や膝にもです」
「作るのめんどくさいので買ってくるんです。つい好きなものを選んじゃいますね」
「他は何を食べてらっしゃるんですか?」
「コンビ二の焼きビーフンとか、イカの塩辛とか……」
「……あなた、本当に高血圧を解消したいと思ってますか?」
「思ってますよ。でも食べないとストレスたまるんです」
「あなたまさか、お酒の量も多いですか?」
「そんなでもないです」
「ちなみに一日どれくらい?」
「500mlのビールを二三本でしょうか」
「あなたホントに健康になりたいと思ってますか!!」
「思ってます! だから効く薬をさがしてるんですよ!!」
「いいですか。薬が症状を治すんじゃないんです。薬は、自分で治そうとする体の働きをサポートするだけなんです」
「じゃあ先生はわたしの症状は治せないというのですか?」
「話を聞いていたら、自信はなくなりました」
「偉そうな言葉を並べて、つまりヤブなんですね。もう帰ります。ここの評価はSNSで広めときますね」
……最近、こういう日本人が増えてる気がしてならない。
すべて比喩です




