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春嵐

「梅桜物語」本編の最終話すぐ後の部分になります。短編集前。

【卯月】


「あ…」


 ふわりと最後の一片が舞い、広げた両手にそっと落ちる。

 散る間際まで桃のように濃密色だったそれはすでに何にも染まらぬ純白となった。

 覚悟はできていたから悲しむことはない。むしろ、思い返せば十分幸せだった。

 ほう、と吐いた息は溜息ではない。


「次の春までもつかしら」


 そっと呟く独り言。口に出したのは期待したかったからなのかもしれない。

 けれど。運命とはいつもながら残酷だと知っているから、本気にしたりはしない。

 そっと古木の幹を撫でる。ざらざらとした感触はいつまでも変わらず。


「ご苦労様。還りましょう、本来在るべき黄泉ばしょへ」


 応えるものはいなかった。


***********************


「黄泉守姫、見つけた」


 そこは天守閣の最上階。

 銀髪の男が筒のようなものを持ちながら外を見渡していた。

 部屋にはもう一人、肩より上で切りそろえられ緩やかな波を打つ髪の少女が興味なさそうに「ふぅん」と返事をする。


「“珠玉たま”は?」

「別の身体ばしょかなぁ」

「まぁ、においでわかるよ」

「だといいね」


 どこか呑気に話している二人のもとに、もう一人の女性が現れ呆れたように言う。


「だったら早く探しに行きなって」

「あ、おかえりー! 黄蝶こちょう


 嬉しそうに手を振る少女に、黄蝶と呼ばれた女性は溜息を吐く。

 そんな彼女に銀髪の男は目もくれず、まだ外を眺めながら話しかける。


「どうだった?」

「当たりさ。向こうから話しかけてきたから問題ないだろうねぇ」

「さっすが黄蝶! これでひとつは手に入るのね」


 両手を組みはしゃぎまわる少女を置いて、黄蝶は男に尋ねる。


「そっちはあんたに任せていいんだろう?」

「問題なし。ようは信用を得ればいいんだからね」


 どこか楽しそうな口調。

 振り返った男はにやりと笑うと、指示を出す。


「さぁ、いただきに行こうか」



短いですが次から元の長さに戻ります。

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