第55話 青天の霹靂
シャワーを浴びて部屋に戻ると、
一文字が全裸のまま
ソファーに腰掛けていた。
「いい加減、
服を着たらどうですか?」
「気にするな。
サービスショットだ」
一文字がにやりと笑った。
私はその軽口には取り合わず、
隣に座った。
「・・そう言えば。
『明星学園』の
生徒が襲われた事件ですが・・」
「あれか?
同日同時刻に別の場所で
3人の生徒が襲われたっていう。
結局、
3人共死んだんだよな」
「はい。
もしかしてあの事件も
砧明日美の仕業でしょうか」
「いや。
被害者の1人である上京は
明日美が呪物を使ってまで
手に入れた彼氏だ。
それを殺すなんてあり得ないだろ。
それに。
仮に3人を殺したのが
明日美の願いだったとして、
その代償を彼女は払っていない」
「それはつまり。
犯人は別にいる。
ということですか?」
「さあな。
どちらにしても。
そんなことはどうでもいいだろ?
目的の呪物は
砧明日美が持っている。
さっさと奪って御堂に売りつけようぜ」
ふいに肩を押され、
私はソファーに倒れ込んだ。
次の瞬間。
一文字が覆い被さってきた。
「ちょ、ちょっと待って下さい!
さっきしたばかりです・・」
「ククク。
そう言いつつも体は濡れてるぜ」
「それは・・シャワーを・・あっ・・」
一文字の指が私の敏感な部分を刺激した。
「だ、ダメ・・」
その時。
スマホが鳴った。
「ま、待って下さい!」
私は力一杯一文字を押しのけた。
「おいおい。
そんなの放っておけよ」
私は立ち上がると
ベッドへ駆け寄り、
サイドテーブルのスマホを手に取った。
画面に
『足枷』
の名前が表示されていた。
私は一文字の方へ顔を向けて、
人差し指を口に当てた。
「・・はい」
「どこにいる?」
「最近見つけた・・バーよ」
「やけに静かだな?」
「小さなお店だから。
それより・・何?」
「源之介が死んだ」
「えっ?」
一瞬、
聞き間違えたのかと思った。
「ついさっき警察から連絡があった。
所持品の中の名刺を見て、
事務所に連絡してきたそうだ。
『弁天公園』で死んでいたらしい」
「何かの冗談?」
「馬鹿が。
源之介は殺されたんだ」
「えっ?」
「死体は強い力で
首を捻じられていたらしい。
そんなこと。
普通の人間には無理だ。
殺られたんだ。
呪物持ちに」
関白の声が遠くから聞こえた。
源之介が死んだ・・。
そんなこと・・。
「おい。
聞いてるのか。
俺達には身内がいない。
兎に角。
お前が行って死体の確認をしてこい」
そして通話は一方的に切られた。
「何かあったのか?」
缶ビールを手にした一文字が、
訝しげにこっちを見ていた。
私はふらつく足で
ソファーまで歩み寄ると、
一文字の手から缶ビールを奪い取り、
そのまま一気に流し込んだ。
「源之介が・・殺されました」
「何?
櫓源之介が?
そいつは穏やかじゃないな。
で。
誰に殺されたんだ?」
私は無言で首を振った。
「・・お願いがあります。
砧明日美の件は後回しにして、
源之介を殺した犯人を
見つけ出してくれませんか?」
「それは警察の仕事だろ?」
「源之介を殺した人間は、
呪物所持者です。
つまり。
警察には捕まえることはできません」
「ま・・。
確かに。
人を呪い殺したなんて
誰も信じないからな。
いいだろう。
その依頼、
引き受けてやる。
ただし。
依頼料はしっかり払ってもらうぞ」
「・・わかっています。
いくらですか?」
「ククク。
そうだな。
犯人を見つけ出したら、
お前の体を好きにできる、
ってのはどうだ?」
そう言うと
一文字はぺろりと上唇を舐めた。
「・・今も。
好きにしてるじゃありませんか」
「ククク。
なら何も問題はないわけだな」
私は小さく溜息を吐いて頷いた。
「よし。
契約成立だ
約束を守らないとどうなるか、
わかってるよな?」
一文字がソファーから
ゆっくりと立ち上がった。
天に向かって屹立しているソレを見て、
私は思わず目を背けた。




