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言霊怪奇譚  作者: Mr.M
二章 同じ穴の狢

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25/52

第25話 惚れた病に薬なし

それから・・4日後。


牡丹が自殺を図った。


幸い未遂に終わり、

牡丹は今、病院に入院している。


この日。

アタシは最近評判の

駅前のラーメン屋で昼飯を済ませ、

タクシーを拾った。

行き先を告げると、

バックミラー越しに運転手が

含みのある笑みを浮かべた。

アタシはそれを無視して

シートに背を預けた。

運転手は「ちっ」と

小さく舌打ちをすると、

乱暴にアクセルを踏んだ。

アタシはスマホで運転手の身分証を

撮影してから、

ついでにいくつか興味のある

芸能ニュースを眺めた。

その時。

リンク先のとある記事が気になって、

アタシはその記事をタップした。


『先月、

 弁天町の弁天公園近くの土手で、

 男性が死亡していた事件に関して、

 新たな事実が明らかになった。

 当初、

 男性の死因は

 自ら舌を噛み切ったことによる出血死

 とみられていた。

 しかし、

 その後の司法解剖の結果、

 男性の舌には強い力で

 引っ張られた痕跡が

 あったことがわかった。

 このため、

 舌根が気道を塞いだことによる

 窒息死の可能性も指摘されていたが、

 さらなる詳しい調べの結果、

 男性の死因は口内に溢れた血液が

 気道に流れ込み

 窒息状態となったことによる、

 いわゆる溺死だったことがわかった。

 警察は、

 男性の舌を引き抜こうとした何者かが

 事件に関与している可能性がある

 とみて行方を追うとともに、

 当時の詳しい状況について調べている。

 また、

 男性の財布からは

 現金がなくなっていたことも

 確認されており、

 警察は強盗事件の可能性も

 視野に入れて捜査を進めている』


想像するだけで、

ゾッとするような事件だった。

自分の血を飲んで溺死だなんて・・。

アタシは記事を読んだことを後悔した。


しばらく走るとタクシーは病院に着いた。

アタシが1万円札で支払おうとすると、

運転手のオヤジは

また「ちっ」と舌打ちをした。

アタシは運転手のオヤジの顔を

こっそりと撮影してから、

お釣りを受け取ってタクシーを降りた。


病室に入ると

やや青白い顔の牡丹が、

ベッドの上で体を起こして、

アタシに向かって微笑んだ。

「だいぶ顔色がいいじゃん」

アタシは病人に対する

お決まりの台詞を口にした。

「うん・・」

牡丹が弱々しく頷いた。

「アイツは?」

「うん・・。

 今日はまだ・・」

「ふうん。

 薄情なヤツだね」

「仕方がないよ、

 仕事が忙しいから」

「仕事っつってもさ。

 恋人の見舞いくらい来れるだろ?

 もうさ。

 あんな男とは別れちまいなよ」

「無理っ!

 竜次さんと別れるくらいなら・・。

 私・・」

牡丹は両手で顔を覆うと

激しく首を振った。

『惚れた病に薬なし』っていうのは

あながち間違いでもないらしい。

アタシは溜息を吐いた。

そもそも。

先に惚れたのは竜次の方だったのにさ。


「で。

 結局。

 浮気はしてたけど、

 浮気相手はわからないんだって?」

「・・うん」

牡丹が力なく頷いた。

「この際さ。

 探偵にでも依頼したらどーなんだい?

 『花鳥風月』のママが言ってたけど、

 腕のいい探偵がいるらしいよ。

 どんな嘘でも見抜く

 ってことらしいけど。

 名前は何て言ったっけ・・えーっと。

 十文字とかなんとか・・」

「ううん。

 大丈夫」

「大丈夫って言ったってさぁ。

 次にまたアンタに自殺されちゃ、

 アタシだって敵わないんだよ」

「・・うん。

 ごめんね」

牡丹が目尻をそっと拭った。

アタシは溜息を吐いた。

「ま。

 もう馬鹿な真似はするんじゃないよ」

「うん・・」

「じゃ。

 アンタの元気そうな顔も見たし、

 今日のところはこれで帰るからね。

 出勤前にちょっと休んでおかないと、

 昨日は飲みすぎて寝てないんだよ」

「うん。

 忙しいのにありがとう、ジェラ」

そして牡丹は

ふたたび弱々しく微笑んだ。


病院を出たところで、

バッグの中のスマホが鳴った。

発信者の名前を確認してから、

アタシはアイコンをスライドした。

「もしもし。

 今病院を出たとこだけど?」

「病院?

 お前どっか悪いのか?」

「馬鹿ね。

 牡丹のお見舞いよ」

「ああ・・そっちか。

 それより。

 家にいるから早く来いよ。

 あっ。

 ついでにコンビニで

 アイスコーヒーを買ってきてくれよ」

「はぁ?

 自分で買いに行きなさいよ」

「冷たいこと言うなよ。

 後でたっぷりと礼はするからさ」

「何よ。

 自分が気持ち良くなりたいだけでしょ」

「はっは。

 細かいことはどうでもいいじゃねーか。

 兎に角。

 アイスコーヒーを頼むぜ」

そこで一方的に通話が切れた。

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