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言霊怪奇譚  作者: Mr.M
一章 明日は明日の風が吹く

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23/72

第23話 明日は明日の風が吹く

夏休みに入った。

結局。

肇は終業式にも姿を見せなかった。


上京の事件も、

岩倉と西陣の事件も、

いまだに犯人は捕まっていない。

そんな中。

10日ほど前。

宿禰市本所町のマンションの一室で、

全身から血を流して死亡している

女性の遺体が発見された。

その数日後。

今度は宿禰市の弁天町にある

『弁天公園』で

首が360度捻じれた死体が

発見された。

さらに4日後。

竹下昇という会社員が、

夕暮れ時の宿禰駅で、

人波の中、

突然首が捻じれて死んだ。

その瞬間を目撃していた者達は、

皆が口を揃えてこう語った。

「突然立ち止まったかと思ったら、

 首が捻じれて死んだ」

と。

これらの事件をマスコミは

面白おかしく煽り立てた。

猟奇的犯罪者による不可能犯罪。

ある組織の実験。

はたまた単なる自殺説。

等々。

SNSでは

隣国による陰謀論を唱える者までいた。


こうして。

世間の人々の関心は、

新たに起こった

猟奇的な殺人事件へと移っていった。

結局。

『明星学園』の生徒が

襲われた事件など、

彼らにとっては対岸の火事にすぎない。

そして。

岸からそれを眺める者達は

より激しく燃え上がる方に

目を奪われるものだ。

しかし。

僕にそれを非難する資格はなかった。


8月に入った。

僕は相変わらず、

溢れ出す欲望を、

毎日のように明日美の体にぶつけていた。

そして。

もうすぐ夏休みが終わるという頃。

また新たな事件が世間を騒がせた。


宿禰市の領家町のアパートで、

男が全身から血を流して

死亡しているのが見つかった。

以前に

宿禰市本所町のマンションの一室で、

発見された女性の遺体と同じく、

その死体には外傷がなかったらしい。

この時。

マスコミは『呪い』という言葉を使って、

世間を煽った。


そして僕はその『呪い』という言葉に

椋鳥京花の話を

思い出さずにはいられなかった。

結局。

椋鳥京花からは

あれきり音沙汰がなかった。

彼女は『呪物』を探している

と言っていたが、

それがどんな『呪物』なのかは

明言しなかった。

そして僕も。

明日美の部屋で見た

あの禍々しく不気味な石像について、

椋鳥には話さなかった。

もう一度。

自分の目で確認しようと思ったのだ。

しかし。

あれ以来、

机の引き出しには鍵が掛かっていて、

中の様子を調べることはできなかった。

僕の見たあれは『呪物』なのか。

そして。

もしあれが『呪物』なら。


明日美は・・誰を呪ったのか。


僕は頭を振った。

馬鹿馬鹿しい。

『呪い』なんて存在しない。

それに。

明日美が誰かを呪うなんて考えられない。

明日美は人一倍正義感が強く、

心の優しい子だ。

僕は明日美の外見だけでなく、

その内面にも惹かれているのだ。

このままずっと。

いつまでも。

僕は明日美と一緒にいたい。


しかし。

僕達の穏やかな日々は、

ある日突然終わりを告げた。


あと2日で夏休みが終わるという、

その日の朝。

『明星学園』の裏門の前を流れる

毘沙門川に1つの死体が浮いていた。

発見したのは

犬の散歩をしていた老夫婦。

そして。

その死体は明日美だった。

死因は失血死。

明日美は舌を噛み切って自殺したのだ。


明日美の葬式が終わり、

僕は主のいなくなった部屋に入った。

明日美の遺品から鍵を見つけた僕は、

机の引き出しを開けた。

『呪物』が失くなっていた。

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