欠片310.『一夜に届く友達の想い』
欠片310.『一夜に届く友達の想い』です!
※本作の「」と間にある───の種類について説明
[]=人物の名前、年齢、種族、テキスト
「」=ヒト族の話しているセリフ、名称
『』=人外、多種族などのセリフ、名称
() =ヒト族の心のセリフ
《》=人外、多種族などの心のセリフ
{}=ヒト族の念話
{{ }}=人外、他種族などの念話
〔〕=現在の行動に合わせて他の場面や
過去のセリフをその場面に照らし合わせて
喋らせる時
【】=漫画で例えると『四角いコマ内』の
『ナレーション語り』や『用語説明』など
・・=強調
" "=強調、効果音など
─1本=漫画で例えると『場面転換』や『幕間』
─2本=漫画で例えると『時の流れ』
➖─➖=過去回想に入る終わる・過去の時間軸
『"穿皇血・混血巻貝"』
自身の血液と血肉を利用して太く膨れ上がったヴラドルナの右腕は、腕先に向かうにつれ細長い巻貝のような形をした槍へと変化していた。
『……!』
目を見開いて驚くリョースは、水色に輝く瞳で鋭く見つめていた。
《槍のような形状…》
《接近しなけれ──ば》
『──ッ!!』
《なんだと!?》
リョースの目の前には、一瞬で3メートル近いヴラドルナがその巨大で迫ると、太い槍になった右腕を後ろに構えていた。
ガバァッ──"ドシュゥンッ"!!
『くっ……!』
サッ──ピッ。ツー。
リョースはヴラドルナの攻撃をギリギリでかわすも、頬に軽く触れており切り傷を負っていた。
《速いッ!》
《図体からは想像もできないほどの速度。》
《どうやって……》
『…ヴヴ…ヴゥ……。』
ビキビキ……ビキキ…
リョースがヴラドルナの体を観察していると、体の至る所に血管が太く浮き出ていることに気が付く。
『……。』
《なるほど。血流を活性化させているのか。》
《魔力強化と血液の循環による
──短時間の体への過重負荷》
《しかし、その反動で
数日分の稼働エネルギーを
今、消費しているのか。》
『強靭な肉代だからこそ
耐えうる技のようだな。』
『ヴヴヴゥ……』
『ヴガァァァァァ!!!』
闇雲に槍を振るうヴラドルナに対して、リョースは跳躍しながら後退していく。
そして、木々の合間に身を隠すと、ヴラドルナを囲むように周囲から矢を放っていく。
『──"聖月銀炎星・射撃"──』
シュ──ボォォォゥ──。
ギィィンッ!!
『ヴガァァッ!!』
辺りを見渡すヴラドルナは迫って来る矢を弾くと、槍先を木々の方に向けていた。
そして、低く唸り声のような声で呟くと、森の中に機関銃のような発砲音が響き渡る。
『"血刺槍弾"』
"ドビュシュッ"──"ド……
ドドドドドドドドッ────ドドドド"……
槍先に空いた小さな穴から、細長い針のような血の弾丸が高速で発射される。
そして、360度回りながら木々に向かって撃ち込むヴラドルナ。
ババッ──ギリギリリ……
『こっちだ。』
シュパパッ!!
ヴラドルナが声が聞こえた方向に顔を向けると、上空には逆立ちの格好をしながら、下にいるヴラドルナに向けて数本の矢を放つリョースの姿があった。
ヒュガガッ!!ブシュッ…!
『ヴヴヴゥ……ガァァア!』
"ドドドドドドドドッ"……!!
『穿皇血・混血巻貝』を頭の上に翳すと、リョースの放った矢が突き刺さる。
しかし、すぐさまリョースに向けて『混血巻貝』を構えると、血の弾丸を発射するヴラドルナ。
リョースは手を前に翳し、淡い黄色い光の魔力を前に展開させると血の弾丸を防いでいた。
シュゥゥゥゥ──…
ストッ──ギリギリ…
『──"聖月銀炎星・射撃"──』
そして、地面に着地するとすぐさま矢を放つ。
『ヴゥ……"血蟲点"ァ"ァ"』
向かって来る矢に、ヴラドルナは巨大な槍を突き出すと、そのまま矢を破壊していた。
《私の一矢ではヤツを倒せないな。》
《火弓しかないか》
─────────────────────────
『ハハッ!見ろよッ!』
『テメェの連れ、何もできやしねェ
ドラギュル様があんなに言うもんだからよォ』
『正直ビビって損したぜ』
『あんなお荷物を配下に持つたァ
テメェも苦労してんだな。ケケッ。』
バチュ──バシュンッ!ビチャチャ…
『貴様らのように、仲間を
仲間とも思わない者に何を言われようと』
『その言葉に意味などない。』
・・
『オレは、友を信じている。』
再生する100匹の血の蝙蝠に囲まれたフレイは、木の枝の上で瞳を閉じ、両足を揃えて立っていた。
そして、『勝利の剣』を顔の前に立て両手で構えると、目を見開いて遠くの景色を見据えていた。
『草月花の舞──』
『──"草月花・向日廻"』
フレイは『勝利の剣』を一周回すと、自身の背後に『向日葵』の花のような形をした光の魔力が出現する。
そして、中心の円に沿って付いている花弁のような光は、一本一本が光の剣で出来ており──
夕日を背景に、花びらが宙に舞い上がると、フレイの側に停滞していた。
『これから日は沈みゆくが』
『同時に──』
『闇を照らす月が、皆を照らし続ける』
『日はまた明日を照らすために廻り
闇である貴様らに居場所はないッ!!』
光り輝く『勝利の剣』と光の刃を蝙蝠に向けるフレイに、サッキ・ザックは答える。
『クセェこと言ってんじゃねェよ』
『オレが聞きてェのは……』
『テメェらの悲鳴ダァァァァアッ!!!』
『血楔操ォッ・"身影姿ノ反鏡散珠"ァ!!』
──ピュンッ!──スゥゥゥ"キンッ"
"キキンッ"──"キン"──"キンキンキン"──
"ビシュ"!!
小さな蝙蝠の口から血の弾丸が発射されると、フレイは顔を避けかわすも、後方にいる蝙蝠が血の鏡に変化すると弾丸を反射し始めていた。
そして、反射された先にいる蝙蝠も鏡に変化すると、高速で鏡反射した弾丸がフレイの頬を掠っていた。
『蜂の巣ゥンなったときィ〜……
テメェの悲鳴が聞けるとイイなァ…!』
『安心しろ。貴様らを倒すことに変わりはない。』
『我の友を侮辱した貴様には
神の信託は降りぬのだからな。』
『オレ達の崇拝する神はもういねぇ…』
『テメェの主は神ですらねェ
それに、半端もんだろうが』
『そんなヤツの力を借りた
テメェらエルフは。
それでもオレ達を………』
『穢れた悪魔と呼べんのかよォッ!!』
『ナァッ!!!』
沈黙するフレイに、サッキ・ザックはその後も語り続ける。
『……。』
『のうのうと生きてきたテメェらが
この世界の正義ヅラしてんじゃねェぞ。』
『魔族こそが、常に追い求めてきたんだ!』
『これは……そのための戦争だ。』
『ベレト様の為に、オレ達はテメェらを始末する』
──ガパッ、ガパパパパッ!!!
100匹の蝙蝠がギザギザの口を開くと、血の弾丸を発射し始める。
『"蝙蝠・群蝠紫蝙地獄"ッ!!!』
『百発の無限弾ダァ!!』
『かわせるもんならかわしてみやがれッ!!!』
高速で鏡反射する100発の5ミリ程度の弾丸が、フレイに迫っていた。
─────────────────────────
『フレイの方も手こずっているようだな。』
木々の合間から矢を放つリョースに、ヴラドルナは雄叫びを上げていた。
『ヴヴヴゥ……ヴォォアアアアッ!!!』
──ドチャ……ドチャドチャ…
地面に血肉が垂れ落ちると、肥大化した腕が裂け始める。
そして、本来の腕から血と肉片が外れると、腕から血液の管が数本生え、その管が地面に落ちた『穿皇血・混血巻貝』に結合すると、血液が注入されさらに大きな槍へと変化していた。
『"混血金剛皇穿貝"・"蜷局"
…………フヴゥ"ゥ"ヴゥ"…』
ズル……ズルル…
『ア"ァ"ァァ……』
"ギギギギュゥ"──
『なんだ…アレは……』
《さらに悍ましい姿に…》
────────"ブワッ"─────────
『───!!』
《目の前に──》
シュピュ──パッ
ピピッ──パタタ…タ。
ヴラドルナが振り払ったその一振りにより、周囲360度の木々が切断される。
結合した血管を伸ばすことで、中・遠距離まで攻撃範囲が拡大した『蜷局』によって薙ぎ払われていた。
リョースが気付いた時には遅く、ギリギリで体が反応するも──槍先に触れたことでリョースの両目は切り裂かれていた。
ザザッ───……パタタ…ピタ、ポタ。
『……ハァ…。ハァ…』
《半歩身を引くのが遅ければ…
顔が半分になるところだった。》
《目をやられたが、魔力探知がある。》
《落ち着いてヤツの攻撃をかわすんだ》
後方に下がったリョースの両目は閉じられており、目元から流血していた。
深呼吸をして気持ちを落ち着かせるリョースは、フレイとの記憶を思い返していた。
『フゥー……』
《あの時を思い出すな。そうだろう?》
《フレイ》
➖───────────────────────
【オリジン458年──リョース12歳
フレイ12歳】
【ボク達が生まれた時にはもう
エルフ族は二つの派閥に別れていた】
【フレイの父親である
ユングリング家の王子を中心に
エルフをまとめ上げるべきだと
年配のエルフ達は口を揃えて語っていた】
【それに対抗する派閥として──
膨大な魔力を有し
語り継がれる噂は全て里に仇を成す
化け物 アース家の生き残り】
【アース・オルテという
エルフ族とは思えない
背丈をしたエルフだった】
『ハァッ!ヤァッ!… …ハァ。』
──カァァン ──キィン──ガガッ!
『なんで同じエルフ族なのに。
争いなんかするんだろう。』
木の的に剣を振り翳すフレイの側で、体育座りで座るリョースは浮かない表情で小さく呟いていた。
『……知るかよ。』
『オヤジでも、オルテってヤツでも
そんなんもんどっちでもいい。』
『えっ?』
『里を守る目的は同じなんだろ?』
『なら──』
『どっちも仲間のために行動してんじゃん。』
『どっちが正しいとか関係なくね?』
『どっちも正しいと思ってやってんだからさ』
『エルフ族にとっていい未来なら
──オレはなんだっていいよ。』
【その時──ボクは思ったんだ】
【フレイはいつか
─────いや】
【フレイこそが、エルフの長になればいいなって】
『キミは王の息子だろ?』
『もしキミのお父さんが長になったら
その後はキミが受け継ぐんだよね?』
『ん〜〜』
剣を地面に刺して汗を拭うフレイは、リョースの顔を真顔で見つめて答えていた。
『オレはそういうの向いてねぇよ』
『王ってのは
自分から戦場に出向いたりしねぇだろ?』
『オレは戦士に憧れたんだ。』
『みんなを、悪いやつから守れる戦士に。』
『だから興味ねー。
オマエの方が向いてるんじゃねーの?』
『え?ボクが?』
顔を見上げてフレイの顔を見るリョースは、驚いた表情で問いかけていた。
『オマエ、優しいじゃん。』
『優しいって……それだけで長なんて…』
『王だの、長だのってさ。』
『周りからの目がどんな感じか分かる?』
『え…?わかんないよ…。』
『期待。妬み。嫉妬。尊敬…』
『いっぱいあるけど、毎晩毎晩寝れないんだ。』
『オレのオヤジは寝れても数時間……
家にいる時でも、毎日震えてるよ。』
目を逸らしながら話すフレイは、満点の青空を見つめて話を続けていた。
『里のため、みんなのため』
『その期待に応えるための重圧は────
知らず知らずのうちに性格を変えるんだ』
『優しかったオヤジはもういない。』
『今はもう、遊ぶことすらなくなった。』
『フレイ……。』
『それに、身分の差だってある。』
『王族に何かあったらいけないからって
オレには友達はいなかった。でも……』
『オマエは違った。』
『オレが欲しかったのは、家族からの愛情や
なんの身分差も気にしないでいい友達だ。』
『誰もがオレに近寄ろうともしない。
それでも、オマエだけはオレに』
『"声をかけてくれた"』
『──!』
【あの時のフレイの顔は忘れられない】
【今にも泣き出してしまいそうで
孤独を抱えてきた ただ一人の少年の顔を】
『だから、もしオレが受け継ぐことになったさ』
『オレがオマエを王にするよ!』
『そんなの…里のみんなは認めないよ。』
『そ、それに…ボクなんかはやっぱり…』
『いーや!認めさせるね!』
『民を本当に救えるのはさ
支配とか権力じゃねぇーんだよ。』
『民を想う心が折れないヤツだ。』
『民を想う心……』
胸に手を当てるリョースに、フレイは両手を広げ満面の笑みで答えていた。
『そうだ!』
『オマエは誰にでも優しい!
だから、優しい王様になれよ!』
『オマエは弓すら的に当てらんねー
へっぽこぴーだけどよ……。』
『オマエの前に立ち塞がる困難があるんなら
そんときは、オレがその道を切り開いてやるッ!』
『だから、オレの背中はオマエに預ける!』
『ボクが…フレイの背中を……』
────────────────────────➖
『見えなくても分かる。』
・・
『今、ボクとキミがやるべきことが。』
──スッ。 ギリギリ……ギリリ……!
リョースは一呼吸おくと、一本の矢に魔力を最大限に込めていた。
『"聖月銀炎星"───』
ヂリヂリ……"シュボッ"──
──"ゴゴゴゴゥゥゥ"──
ジュゥゥゥ───………
激しく青銀色に燃える矢を持つリョースの手には、火傷によって皮膚が焼け始めていた。
《熱い。でも、暖かくて
やっぱり"綺麗な炎"だ》
《闇夜を照らす、月明かりのように》
夕日が沈みゆく中、目を閉じたまま少しだけ微笑むリョースは、ヴラドルナがいる方向に矢を向けていた。
そして、ただ一点を見つめる"失った瞳の奥"には、青銀色をした炎がゆらゆらと揺らめいていた。
《この一矢に全てを込める。》
『───火弓。』
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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[今回の一言♩]
生き物の中でリクガメが一番好きなんですけど、先日二匹目の家族をお迎えしました。
まだちっちゃくて全体的にかわいい。




