欠片12.『白岩屑鳥』
欠片12.『白岩屑鳥』です!
※コッキング
スライドを引いてバネを縮め、弾を装填する動作のこと。
広大な岩の上で二人は、景色を眺めながら歩いていた。
「天気も快晴!空気もうまいッ!」
「さいっこうー!!」
「ふぅおおお〜〜!!」
「太陽の光が岩に反射して、キラキラしてるぞ!」
アストラはサーチを見た後、周りを見渡した。
(この岩も星屑の影響があるみたいだな。)
(全面、白色なのにも納得がいく)
「師匠!みてみろよほら!スゲーキレイだぞ!!」
「ああ、そうだな」
「フッ」と微笑むアストラだったが、何かの気配に気づく。
「……!」
「止まれ、サーチ」
「え?どうしたんだ」
「何か来る」
「何かって、何もいないけど?」
「どこだ?」
キョロキョロしながら前方を眺めていたサーチは答えた。
「前じゃない」
「上だ!!」
「……!!」
"ハッ"としたように上を見上げたサーチたちの前に、鎧翼型の機屑物が現れた。
『キィィィィィィイィ!!!』
「アレが白岩屑鳥か!?」
「いや違う」
「アレは、白銀屑鷲だ」
「鎧翼型の機屑物だ」
「襲ってくるぞ」
白銀屑鷲は勢いよくコチラに向かってきた。
白い装甲の翼に、太陽の光が反射して銀色に輝いた光景にサーチは動きを止める。
「……あんなキレイな機屑物もいるのか」
「サーチ!!」
思わず見惚れてしまっていたサーチは反応が遅れる。
「しまっ…!!」
「『針』!!」
攻撃が当たるギリギリの所で白銀屑鷲の体に孔が空いた。
"ボッ"…!!
『キュェイィ………!』
……ガシャァン…!
地面に落ちた白銀屑鷲を見て、地べたに腰をついていたサーチは息をはいた。
「……ッハァ〜…危なかった…。」
「助かったよ…ありがとう師匠!」
「いつも気を抜くなと言ってるハズだ。」
「集中を絶やすな。」
そう言うと取り出していた『龍屑・ 孔』を腰に戻す。
「………。ごめん。」
サーチは俯きショックを受けていたが、すぐに気を持ち直した。
(確かに…ヤツらはオレの倒すべき敵なのに…)
(何やってんだ……クソッ…。)
「アストラ……ごめん。」
「もっと気をつけるよ。」
「分かったらいい」
「先へ進もう」
「うん」
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歩みを進めていると150mほど先に、枯れ草で作られた鳥の巣のような物がたくさん現れた。
その周辺には多くの白岩屑鳥が群れをなしていた。
「アレが白岩屑鳥か!」
「図鑑で見た「ダチョウ」ってヤツに似てるな」
その群れの中に一際大きな個体を見つけるとサーチが"小声"で話しかけた。
「アイツだな。」
「ああ。」
「……。」
「よし、やるぞ。」
2人はもう少し距離を縮めるように前に進む。
サーチは『破片ノ銃剣』を取り出し、標的を見る。
(距離は100mくらいか)
(…風もあるな)
※
分析が終わり、コッキングをした瞬間。
カチッ。
白岩屑鳥が一斉にこっちを振り向いた。
逃げ出す小型の白岩屑鳥と違い、大型の白岩屑鳥はこちらに向かってきていた。
大きさは小型の3倍はあり3mくらいの大きさだった。
その大きな白岩屑鳥が50m進む時間は2秒たらずで、あっという間にサーチの目の前まで迫る白岩屑鳥の迫力は凄まじかったが、サーチは冷静だった。
『キュイィィィィィ!!!』
(まだだ…)
(まだ引きつけろ)
サーチとの距離が8mを切ろうとした時、白岩屑鳥はジャンプし、足を振り下ろしてこようとした。
その瞬間、サーチは前方に素早く走り出した!
そして、スライディングしながら白岩屑鳥の下に潜り込み、頭上に向けて引き金を引いた。
"パパァァンッ"!!!
『キュィッ…ィィ…』
"バキバキッ"!!!……"ボジュッ"!!
バガァァン……!!
そのまま滑り、体勢を整えたサーチが白岩屑鳥の方を見ると白岩屑鳥は倒れており、胴体には大きな穴が空いていた。
その周辺には肉片や装甲が砕けて飛び散っており、破片は赤く染まっていた。
「……やった!やったぞー!!」
「みたかー!師匠!!」
「……。」
「よくやった」
アストラは白岩屑鳥を見つめ、何かを思った後にサーチを褒めた。
「これで町のみんなも安心だな!!」
「あぁ。」
「なんだよ師匠、どうかしたのか?」
アストラは少し考え、サーチに話しかけた。
「巣があった方に行くぞ」
「え?」
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「これって…」
「ああ、彼らの卵だろう」
「もしかして……コレを守ってたのか?」
「おそらくな」
「じ、じゃあ…オレは。」
「サーチ」
「これは自然の摂理だ。」
「オマエがやらなければ、ワタシが代わりにやっていた。」
「……。」
「それでも…」
「もしかしたら……何かいい方法があったかもしれないだろ!」
「師匠は最初から分かってたのか…?」
「途中からだ」
「巣を見た時にな」
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「そうみたいだ」
「……。」
「よし、やるぞ。」
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「なんで止めてくれなかったんだよ。」
「止めたらあの町の人々はどうなる?」
「一度町に戻って話しができたかもしれないだろ!!」
「解決策はあるのか?」
「オマエは白岩屑鳥をあのままにして、そのあと町人に何かが起こらないなんて保証ができるのか?」
「自分のとった行動の責任をとることができるか?」
真っ直ぐサーチを見つめながら問いかけるアストラ。
「それは…」
顔を逸らし、アストラは町の方へと歩み出す。
「分からない、出来ないならそんな考えは持つな」
「二度と……後悔したくないならな。」
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「アストラ…オマエだけでも…」
「…逃げてくれ…。」
「……!!なんで……どうして。」
「イヤっ……。」
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昔の記憶を思いしたアストラは、いつもより歩く速度が速くなっていた。
そして、道中2人は無言のままだった。
そのまま、白岩屑鳥の討伐を終え、巨岩洞要塞へと帰還していった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
─裏メモ。─
『深峡谷』の由来
深い ディープ
大峡谷 キャニオン