欠片9.『実力』
欠片9.『実力』です!
奇声に思えた猿人似屑の咆哮に、サーチは動揺する。
「な、なんだ!?」
「……呼んだか」
と、アストラの言葉に、サーチは質問した。
「呼んだって……なにを呼んだんだ?」
「猿人似屑は、激昂した時に仲間を呼ぶ習性がある」
「仲間を?」
「…ッ!!じゃあ、ココにヤツの仲間が集まってくるってことか!?」
「そうだ」
ニヤリと笑う猿人似屑に、サーチは再び恐怖を感じた。
次第に…森の中から木の枝や葉っぱが揺れる音が聞こえてきた。
"ガサガサッ"……
"ザワザワ"…
…"ガサガサガサッ"……
全方位から鳴り止まない音に、サーチは辺りを見渡す。
次第に音が止み、その光景に驚愕した。
二人を囲むように、木の上には100匹は超える猿人似屑がコチラを見つめていた。
『……キキッ!』
『キキャッ!!』
「こ、こんなの……どうすれば…」
アストラはサーチに声をかけた。
「サーチ」
「ここからはワタシがやろう。」
「後ろにいろ」
「し、師匠!!」
「いくらなんでもこんな数無茶だ!!」
「……。」
「ワタシを信じろ。」
その言葉にサーチは、アストラの言葉を思い出していた。
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「フフッ」
「安心しろ」
「もし、キミがやられそうになったら」
「その時は師匠であるワタシが助けてやる」
「だからどんなことがあっても」
「ワタシを信じてくれないか」
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(師匠を……信じる。)
「分かった!!」
返事を聞いたアストラの顔を見ると
一瞬……笑っていた気がした。
「さて、準備運動といこうか」
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彼女は背中に背負っていた大剣を、サーチに手渡した。
「コイツを頼む。」
「──ッ!!オモッ!!」
「おっとと…」
ドサッ……!!
渡された大剣のあまりの重さに、そのまま地面に座り込んでしまうサーチ。
そして、アストラは腰に刺してある細長いレイピアを取り出した。
「『龍屑・孔』」
『龍屑・ 孔』
全て白色の装甲をまとっており、まっすぐに伸びた刀身は、細長く5cmほど。先端は尖ってはおらず、角が少し…丸みを帯びた長方形の形をしているレイピアである。
その見た目は農楽園要塞に住む、機巧技師が造った『刀』と呼ばれる破片ノ武器の鞘に形が似ている。
(……細い。あれでどう戦うんだ…?)
(たしか、むかし…師匠のおじさんから譲り受けたって話してた破片ノ武器だっけ。)
「サーチ、目は閉じるな」
「へ?」
「よく見ておけ」
"ザリッ"……グググゥ───
地面を蹴る音が鳴った。次の瞬間。
目の前にいた数匹の猿人似屑の胸に、大きな孔が空いていた。
「は?」
サーチは、目の前で起きた光景を見ていたのにもかかわらず、理解ができなかった。
それは、猿人似屑も同じで倒れている仲間を見て、さっきまでニヤついていた表情が変わった。
「なにをそんなに驚いている」
「"ただの突き"だ」
「どうした、来ないのか?」
『……』
『キキィィィィィィィィェエ!!!』
怒り狂った猿人似屑たちが、アストラに飛びかかっていく。
猿人似屑の速度は決して遅いわけではなかった。
しかし、サーチが見たのは…その何倍もの速度で攻撃から身をかわし…次の瞬間には、猿人似屑の体に孔が空き、次々に倒れていく姿だった。
「す、スゲェ…!!!」
「これが、師匠の実力か!!」
汗一つかかず、まるでスローモーションのような身のこなしは…あまりにも滑らかで、その光景はまるで……流星を見ているかのようだった。
ビュッ!!スチャ。
「運動にすらならなかったな」
スタッ──スタッ……
全ての猿人似屑を倒したアストラは、サーチのもとへ向かい預けていた大剣を受けとった。
ガチャリッ……。
「終わった、行こうか」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
今後、技名などまだまだ出てきますのでお楽しみに!
─裏メモ。─
『破片ノ銃剣』の由来
銃剣 ベイオネット
破片 シャード




