ラフ&スムース 第三章 ⅩⅩⅦ 初稿
実は今回のこのエピソードには二通りの分岐話があったのですが
どうもどっちもしっくり来ず、一旦考えるのを放棄して別の趣味に走っておりました(笑)
しかしいつまでも放っておいても埒が明かないと思いなおし
二つのエピソードを悪魔合体させ再構築させていってます。
まだ書き切れてないですが、とりあえずこんな感じで進めております。
なんとか上手くいくといいなあ……
「ラフ&スムース 第三章」
「うう~~むむむぅ~」
「そ、そう、そこで、ぐっと引っ張って、
そんでもって千枚通しで上から突き刺すのー」
「ちょ、ちょっと待って!
この引っ張り具合でテンションって変わってくるんだよな?
だったらもっと思い切り引っ張り上げないと!」
「あんまやりすぎたら変形しちゃうよー。
いや、多少は変形しても良いんだけどね。
後で横糸で調整するからー
でも、鯨筋はそこまでテンション耐性高くないからほどほどにねー」
「そ、そうなんだ……じゃあ、これ、くらい……?」
「もうちょっと、引っ張っても大丈夫だよー
あ、そこで千枚通しっ!」
「うりゃ! ……よし、これでどうだ?」
なるほど、百均で購入した千枚通しはこういう使い方するやつだったのか。
最初はウチでタコ焼きパーティーでもするのかと思ってたよ。
「そこで千枚通しでテンション固定した状態で
グリップ側から1、2、3、4……
5番目の穴に先っぽを通すの。
あ、先っぽはちょっとニッパーで鋭角にカットしてねー」
「ん、こうか?」
パチン
「そう、それで入りやすくなるから、穴に通してえー
あ、それでも入りにくかったらラジペン使ったらいいよー
あ、そうそう! そんでクルッと縦糸に巻き付けて通してー」
「ちょ、ちょっと待って! 教わったこと思い出すから!
結び方は確か……」
「そう、そこで一回目の巻いた輪っかに通して……
そんでもって引っ張ってお団子完成。
そうそう、これが”パーネルノット”っていう結び方だよー」
パチンッ!
「う、うし! とりあえず、これで縦糸完成! ……かな?」
おそるおそる、上目遣いで彼女の表情を伺う。
「あははー、これでだいたい半分だねえ」
ほっ……
「……助かる。 千里さんありがとう!」
「いえいえ、どういたしましてー」
何がどうなってこういうことになったのか?
一応説明しておこう。
今現在、時は現在土曜日のお昼過ぎ。
辰刻法で言えば未の刻の一つ時、つまり午後二時だ。
話は少し前に遡る。
◇◆
土曜日の学校休みの日
僕らは次の試合に向け、やる気を出して
朝から集まって皆で乱打をしまくっていた。
ただ、僕一人だけは、ずっと素振り一筋なんだけどね。
結局、昨日は
「ご、ごめんね! 溜まってるパソコンでの仕事が
もう締め切り過ぎちゃってるのがいくつもあるのよ!
明日は学校休みだけど教頭は休日出勤で出て来るって言うし
私もソフトテニスの部活で一応学校には行かなくちゃならないから
絶対に教頭にはカチ逢っちゃうの! だから……!」
あ~なるほど。
いつも部活に全く顔は出さないけれど
部活があるときは一応学校には居るようにはしてたんだね。
だからギリギリ顧問の言い訳にはなってたのか。
万一の事故とかあった場合は
すぐ駆けつければなんとか対応はできるからね。
事後対応になるけれども。
「……はいはい、わかりました。
先生はお仕事、片づけててください。
横でアドバイスしてくれるなら、私が今から自分で手張りしますから」
「できるの? 鈴音」
みゆきちゃんが心配そうに聞いてきた。
「わかんないけど、たぶん……でき……いや……う~ん……?」
できなくはないと、思う。
孝志の記憶だと、昔は割と誰でもやってたっぽいからなあ……
とりあえず、教えてもらえば一応のカタチにはなるとは思う。
ただ、素人が銘々に感覚だけを頼りにやるもんだから
テンションの不揃いとか、ラケットの変形とかも
日常茶飯事的に発生していたんだよね。
自分の好みの打感を得られるかどうかは、
本当に神のみぞ知る、というやつだ。
おそらく、初回一発張りで満足いく出来には
奇跡でも起きなければ、まず、ならないだろう……けど。
「…………やっぱ、私が張ろうか?
明日、教頭に丸一日ぐちぐち愚痴と小言を言われ続けられながら
職員室で耐え忍んで頑張れば良いだけだし…………うっ……つらい……」
「……い、いえ! 折角パソコン直ったんですし
先生はお仕事頑張ってください。
じゃないと、寝る間も無くなっちゃいますよ?」
「そ、それはそうなんだけど……う~ん、
でも貴女と約束しちゃってるからねえ……」
「そ、それなら、ガット交換は日曜日の朝までになんとかお願いします。
流石にそこまでは無理言えないですよ。
明日、土曜日の午前の練習は、以前使用してたラケットでやりますから」
「だ、だからそれはね!」
「わかりました。 じゃあ、素振りでもしています」
日影先生はどうしても
折角身に付いた木製ラケットの感覚を損なわせたくないようだ。
正直、私にはまだそこまでの精密なショットは
打てていないと思うんだけどな……。
少々ラケットが変わった程度で
調子が上がったり下がったりするのは
トッププロというか、相当なハイレベルの選手だけだと思う。
まあ、確かに成長過程でコロコロ得物を変えるのも
あまり良くはないのかもしれない。
成長を遅らせる要因にはなるのかも知れないが……
私には、そこまでのことはよくわからない。
「ま、まあ素振りくらいなら……でも、う~ん……
折角練習にきて素振りだけじゃあねえ……試合も近いのに……
…………あっ! そうだーっ!」
「え? 何か良い方法、思いついたんですか?」
「ふ、ふっふっふ…………そうね。
これなら、きっと……間に合えば、いける筈」
そう言って、不敵な笑いを見せつつ彼女は闇夜に消えていった。
「…………」
いや、単に仕事の残りを片付けに
ウチの空き部屋に引き籠っただけなんだけれどね!
結局その日はそれでお開き。
私はガットを張らなくてもいいことになったらしい。
私たち二人は客間で就寝となり
先生は仕事をするため一人でパソコンと共に別室に籠ったのだった。
ちょっとくらいは寝ないと、流石に身体に悪いと思い
一応布団一式は部屋に持っていってあげたんだけど
朝、私達が起きた時にはもう先生はどこかに行っていなかった。
みゆきちゃんと二人で軽く朝食を摂り
私は朝練の為学校へと向かう準備をする。
お昼はみゆきちゃんの手料理が待っているとのことらしいので
寄り道せずに帰ってくることを約束して家の門扉を出た。
そうは言っても軽く孝志のお見舞いはしていくつもりだ。
昨日寄れなかったので少々気にはなっている。
まあ、お母さん(孝志の)もいるだろうしすぐに退散するつもりだけどね。
途中、春菜ちゃんと合流し一緒に汽車に乗る。
普段ならば部活は休みであるこの土日、
つまり今日と明日のことなのだが
試合前なので午前中だけは目一杯練習する予定となっている。
練習開始から小一時間ほどした頃だろうか
素振りだけで一時間は流石にもう飽き飽きしてきたところに
それはやってきた。
土埃を舞わせながら校庭に侵入してきた
一台のコンパクトスポーツカー。
ちなみに、真っ黄色だ。
そこから颯爽と? 現れたのは
我が女子ソフトテニス部幽霊顧問である日向日影であった。
「今日は、練習試合をします」
……は? また、ですか?




