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「それで?武闘大会は無事終わったわけだけど、フェリーナ的にはどうだったの??」
気を取り直して、チョコレートケーキを食べながら、私は尋ねる。
私がチョコレートを好きなのは、前世の記憶に引っ張られているところが大きい。もし、平民に生まれていたら、中々口に出来なかったわけだから、かなり複雑な気持ちになる。
フェリーナ曰く、平民でも手の届くスイーツやお菓子はあるけど、チョコレートはかなり贅沢品になる、と言うことだ。
やっぱり、私は運が良かった。
モブってなんだよ!とか思って、ごめんなさい。もう少し、真面目に貴族としての勉強をすることにするわ!
「私的にも、特に問題は無かったよ!彼らもケガしなかったしね!……たぶん、次も頼まれるだろうから気は抜けないけど。でも、普段話さないと人と知り合えて良かったと思う」
楽しそうな報告に、安心する。
平民風情が!みたいな感じでハブられる可能性もあったしね。
素直にそう言えば、フェリーナも頷いて、
「うん、正直、私も心配してたんだけど、意外とそんなことも無かったよ」
そう言って苦笑した。
「そっか、それは良かったね。この調子ならそんなに警戒しなくても大丈夫かもね」
そもそものフェリーナのコミュニケーション能力が高く、着々と味方が増えているのはいい傾向だと思う。
「はー、思ってたよりも平和な学園生活が続きそうで安心するー」
「私はまだまだ警戒が抜けないけどね。成績も下げたくないし!」
「そうだよねぇ。むしろ、本番は卒業後だもんね。うーん、かなりの長期戦よね。すごいと思う」
それなりの成績でそれなりに楽しく卒業出来れば、良いかなーなんて思っている甘々な私からすれば、フェリーナは本当に凄い。この子、貴族に生まれていたら内政チートとか繰り出せてたんじゃないの?!なんて思う。
「そりゃぁね!夢が叶ったんだもん!何年かかったって、可能性があるなら、頑張るしかないでしょ!」
「はぁーマジ、ヒロイン」
フェリーナから後光が指しているようにすら見える。
頑張り屋な美少女って、無敵よね。
「それよりも!ミアはどうなの??」
自分の報告は終わり、と言わんばかりの勢いで、フェリーナはキラキラした視線を向けてくる。
「ん?」
ううん?
どうなの?って何が?
「決まってるじゃない!フェリックとだよ!どうなの??」
「ううん?どうなのって、言われても……」
言い直されたところで、さっぱり分からない。何でそんなに、キラキラした目でこちらを見るのか。何も楽しい話なんて無いわよ。
「はぁー。そこもアレね。鈍感系主人公って感じ」
フェリーナは、自分がヒロインのクセに、何故か私を主人公にしたがる。何故だ。
鈍感って。
そんな都合の良い生き物になった記憶が無いんだけど??
「本当に不可抗力だったわけね。でもでも、それなりに接触があるわけだから、こう……何かあるでしょ?キュンとするものが!どっかに出かけたりとか、何か貰ったりとかとか??」
ワクワクを隠しきれないと言った感じで見てくるフェリーナが、辛い。フェリーナの元の年齢が分からないけど、幾つになっても女性は恋バナが好きとだと言うことだろう。だけど、楽しませてあげられるほどのエピソードが、マジで無いの。
だって、別にアプローチされてるとか口説かれているってわけじゃないからね。
ただの監視。
最近は、あれよ。容疑が晴れたのかあんまり来なくなったけど。つまり、飽きたのね。何より何より。
私の方も変わり無く、よ。
ありがちな感じで、あれ?最近来ない……?シュン……みたいなのもナシ。
うん、良かった。本当に。
「うーん、私の方もね、楽しい話をご提供したいのは、山々何だけど……。無いのよ。別に。強いて言うなら、最近は来なくなったから、私は平和を取り戻したってことくらい??」
「ええー?何それ何それ!じゃぁ、寂しい……とか?」
首を傾げるフェリーナが可愛い。
こんな美少女前にして、手を伸ばせないバーナード先生は、ご愁傷さまって感じ。これは、当分、結婚遠のくわね。先生。絶対、効果あるわ。
「無い。全く、無い。これが驚くほど無いのよ。自分でもビックリよ」
「うーん。ということは、ミアには他に気になる人が??」
「何でそうなるかな?残念ながら、そんなことも無いわね」
「無いのー?つまんないわー。せっかくの乙女ゲームの世界なのに」
ふぅと、心底残念そうな顔で、フェリーナは息を吐く。
うん。
あのね、あれだわ。
ヒロインが気に入られるよくある理由の一つ、表情がクルクル変わるのが貴族社会では珍しく、心惹かれるってあるじゃない?
いやいやいや、そんなことなくない?大袈裟じゃない?
とか思ってたけど。
アリだわ。
こう、何かグラッと来るものがある。
いや、いくら淑女教育をしていたって、気を許したプライベートな時は、その仮面を外すことはあるだろうから、そこまで仲を深められなかったお互いの落ち度とも言えるけどね。
「いやいや。乙女ゲームなのは貴女だけでしょ?モブである私は関係無くない??」
「いや、あるでしょー?よくある展開じゃなーい。モブが攻略対象に溺愛される的な??私、それも結構好きなのー」
キャッキャと盛り上がる姿は、可愛い。
ここに、もう一人、その餌食になるひとがいれば、尚良し。
「まぁ、よくある展開ではあるけど、それもやっぱりチート発揮したり、推しのためにひたむきに頑張ったりとかするわけでしょ?私はひっそりそれらをウォッチする、壁になりたいわけ。溺愛とか重いもの要らないから、それなりに堅実な人と、それなりに上手くやっていきたい……」
「うわ、それ、一番ハードル高いやつ」
「だよね。普通が一番大変よね」
はーと、ため息を吐きながら投げやりにそう言う。
前世からそう。
普通が一番、ハードルが高い。
ここでも同じ。
そんな他愛も無い話をして、私たちは、武闘大会が無事に終わったことを祝った。
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