3.初舞台の輝き
舞台袖に立つと、心臓の鼓動が耳の奥まで響いていた。
照明の熱、客席のざわめき、幕の隙間から漏れる光。
銀盆を抱えて走り回っていた昼間とは違う。今はもう、僕は演者だ。
「大丈夫? 顔がちょっと固いよ」
ストレッチをしていたダンサーのエリナが、にやりと笑って肩を叩いてきた。
「観客の視線は俺がさらうから安心しな」
マジシャンのカルロスはカードをひらひらさせ、軽口を飛ばす。
緊張を隠すための冗談だとわかっていても、その軽さに救われる。
奥では歌姫イザベラが声を放っていた。
透明な響きが空気を震わせ、スタッフまで思わず息を呑む。
あの歌声が舞台に出れば、きっと客席を涙で満たすだろう。
深呼吸をひとつ。
汗ばむ掌をぎゅっと握り、僕は思った。
――ボーイとしてだけじゃなく、演者としても、この船に必要とされたい。
やがて照明が落ち、場内は一瞬にして静寂に包まれた。
次の瞬間、眩い光が幕を裂き、音楽が轟く。
僕は舞台に飛び出した。
歓声が押し寄せる。
光に照らされると、全身の力が解き放たれるようだった。
軽やかなステップで走り、宙を舞うバク転。
エリナのダンスが流星のように広がり、カルロスのマジックが観客の驚きを引き出す。
イザベラが声を放つと、背後の銀河ホログラムが瞬きに合わせて強く輝く。
観客の頬に涙が流れ、拍手が爆発した。
音と光と人の感情が渦を巻き、僕の胸を震わせる。
――夢は現実になった。
ここで浴びている視線は、街角の拍手とは違う。
宇宙そのものが僕を見てくれているように思えた。
幕が降りる瞬間まで、僕の心臓は燃え続けていた。




