表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星海の涙  作者: サク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/20

2.星海の饗宴

展望ダイニングのきらびやかな光の中、僕は銀盆を抱えてテーブルの間を歩いていた。

ボーイとして客に仕え、グラスを満たし、笑顔で言葉を交わす。

けれど、それは僕の役目の半分にすぎない。


もう半分は――舞台に立つ演者として、この船で光を浴びること。

昼は給仕として走り回り、夜は演者として観客の視線を受け止める。

二つの立場を持つ僕の生活は慌ただしいが、そのすべてが夢の続きのように感じられた。


展望ダイニングは、まるで宝石箱をひっくり返したような光に包まれていた。

窓の向こうには地球が蒼く浮かび、その輪郭を金を散らしたように夜の大陸の灯が彩っている。

天井を横切るのはオーロラを模したライト。ゆるやかに流れる光が銀のカトラリーに映り込み、虹色の輝きを散らす。


香ばしい肉の匂い、焼きたてのパンの甘い香り、シャンパンの泡がはじける音。

五感すべてが「ここは特別だ」と告げていた。


「見て! 夜の大陸が光ってる!」

少年がテーブルの上に乗り出す。

隣の母親が慌てて肩を掴むが、目は同じように輝いていた。


「これは……宝石箱のようだ」

老紳士はワイングラスを傾け、声を詰まらせた。

隣の夫人は目頭を押さえ、微笑みながら頷いている。


「こちら追加の赤ワインです」「どうぞお楽しみくださいませ」

笑顔を浮かべ、グラスを置く。

演者として光を浴びる瞬間とは違う。けれど、この煌めく空間を支えているのも自分の役目だと、胸の奥でひそかに誇らしく思った。


ラウンジでは、AIが投影するホログラムのピアニストが旋律を紡いでいた。

人間の指は触れていないのに、音色は不思議と温かい。

客たちはグラスを傾け、目を閉じて静かに聴き入る。


プールエリアは透明なドームに包まれ、外には満天の星空。

水面が照明を受けて揺らめき、飛び込む子供たちの笑い声が弾けるたびに、水飛沫は虹の弧を描いた。

「宇宙で泳いでいるんだぞ!」

少年の叫びに、大人たちまでもが笑顔を見せていた。


そして夜が訪れると、シアターの幕が上がる。

客席を包むホログラムの星雲、舞台中央に浮かぶ銀河の映像。

歌姫イザベラの歌声が響くと、映像の星々が瞬きに合わせて光を強め、観客の頬には涙が流れた。


――僕は舞台袖に立っていた。

銀盆を下ろし、深呼吸をする。

これから自分が立つ舞台を、観客はどんな顔で見てくれるのだろう。

演者として光を浴びる瞬間が、すぐそこまで迫っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ