エピローグ
あの話のその後です。かなり短いです。これで、つむぎの物語は完結です。
映像が終わった途端、弾けるように拍手が【研究映像】を流していた部屋にこだまする。下卑た笑みを浮かべたホムンクルスの研究の大体の権限を持ったボンクラたちは頭を下げる我らの所長の手に札束を握らせ去って行く。
魔法は機械の発展によりそこまで重要視されない学問となった。つまり、上層部はすっかり腐りきっているということ。我々の作戦はそれを利用した。いつの時代でも少女とおとなの途中にある女性に興味を持つ男たちは少なくない。また、血なまぐさいものを好むのも大昔に処刑が庶民たちの1つのショーのようになっていたことからもうかがえる。
つまり、あの少女たちの惨劇は我らの資金を稼ぐための、【実験】であった。
表向きは本来血を求めるホムンクルスが人間社会に適応できるかどうか。本当は誰もが気づいていた。そもそも本当にできると考えていたなら彼女が【幼い頃】犯した殺人の際に中止していた。たくさんの少女を投入して、消費して手に入ったのは所長の所有する札束だけだった。
「……頼む」
気づけば所長の側には秘書が控えており、恭しく札束を受け取り仕舞いに行った。そのまま魂が抜けたようにふらふらと所長室へ向かって行く。当然だろう。娘を、奇跡に重なる奇跡で産まれた愛する娘をこのような実験に投入した、愚かな、哀れな父親だ。
所長の娘、実験内での名称『ねむ』、本名は『音無こなた』。彼女は所長と、偶然の産物である生殖機能を持つことに成功したホムンクルスの間にできた子供だ。彼女の母親とも言えるホムンクルスは彼女を産むと同時に亡くなった。
ー資金は尽きていた。所長は必死だった。妻を蘇らせたかった。娘に母親を与えてやりたかった。
そして、唯一産み出された人間と変わらないホムンルス。それが、つむぎだった。彼女の容姿は最高傑作であり、それを見た所長は1つの考えに至る。
それが、大規模な実験と称したアウトローな映像の撮影。少女たちの悲劇を撮影することであった。皆が唇を噛みながら撮影をした。思考を記録した。
結果は大成功。あの資金で我々の研究はまだ続けられる。
たくさんの、負債を背負いながら。
*
彼女の部屋へ向かう。彼女はこの実験の生存個体の中で最大の被害者と言っていいだろう。
「失礼します。【つむぎ】さん、少しいいですか?」
まるで学校の先生のような口調で語りかければ、彼女は虚ろな瞳でこちらを見やり、【かのじょ】を持ってこちらに近づく。
「ほら、つむぎちゃん…よびだし」
「……」
「また魔法数学の成績悪かったんでしょ…?」
「……」
背筋に薄ら寒いものが走る。それを隠しながら【かのじょ】を受け取り部屋を出た。
音無こなたは完全に精神が崩壊してしまったのだ。実験が中止になったという妄想の中に生き、死体と成り果てたつむぎに声をかけ続け、偽りの学園生活を送り続けている。
もう我々の言葉も届いていないようで、無理に死体と引き離そうとすれば尚更暴走する。我々は死体に防腐処理を魔法で施し続け、彼女を妄想の世界で生かし続けている。
彼女の頭脳、能力は我々の実験には不可欠だから。そして、所長はなんとしてでも彼女の心をこれ以上壊したくないから。
この選択が正しいものかはわからない。現に、彼女はもう現実の世界を見れてはいない。
ただ、1つ、研究員でもない、僕が言えるとすればーー。
「実験、だったの…騙してて、ごめんね」
『ショックだったけど…、いいよ。わたし、ねむちゃんのこと大好きだから。わたし達、きっと、親友だから!』
「うん…私ね、つむぎちゃんのこと、いろいろなこと知らないんだ」
『わたしもだよ。だから、これから知っていこうよ。…ねむちゃん、もう一回、友達になろう?』
「…うん、ありがとう、つむぎちゃん」
きっと、少女達は箱庭の中で何も知らずにいれば幸せになったのだろうということだけだ。
ここまで読んでいただきありがとうございました。拙い小説でしたが、ここまで読んでくださった読者の方々には感謝でいっぱいです。
この後は二部としてねむ視点の話を書こうと思っています。そこでつむぎ視点での疑問点や背景を紐解いていけたらと思っています。




