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パンツマン~境心一は今日も、パンツを信仰しています~  作者: 友城にい
第一話 責め立てた意味♪ 重ねたパンツ♪ 見せる意義を探してた~♪
9/22

     ▽


「おにいさまたいへんですよ! いつのまにかココのぱんつがありません!」


 トイレから帰ってきた心愛が、心一に詰め寄るように言った。

 だが、別段慌てているとか恥ずかしがっているわけではない。むしろ、パンツが突然消えたことに好奇心が刺激された。とでも言っておこう。


「それはへんた……じゃなくて、大変だね。このままでは、風邪を引いてしまいかねない。なにかべつのものを」

「なに心愛ちゃんから目線をはずして話してんだか。おまけに自分で『変態』って、言いかけてるしな」

「どこにいったのでしょうか、ココのぱんつ。あれけっこうおきにいりだったのに……」

「ふむ。たしかに心愛の花柄パンツはとても似合ってたな。あとで兄ちゃんも一緒にさがそう」

「おにいさま……。いいんですよ、べつに。きっといまごろ、ココのしらないところで、ココのぱんつはしあわせにしていますから」


 無邪気な笑顔を見せる心愛。


「ったく。心愛はいい子だね。しかし生憎、予備のパンツはない。ブルマなどを直に穿かせるのは、衛生上あまりしたくない。うーん」


 失踪したパンツ(心一のポケットの中)の代わりになりそうな、あてを考える。


「あ」


 途端、心一はなにかを思いだしたかのように、護流のほうを向いた。


「な、なんだ……。あ、あなたまさか、これを……」


 護流は、右手でずっと握りしめていた、心一自作の黒いレースのパンツを背中に隠した。


「ごくり……小学生にレース下着……ごくり……悪くないかもしれない」


 生唾で喉を鳴らす心一。

 護流は後ずさる。

 あなたがポケットに忍ばせている心愛ちゃんのパンツを返せば、解決する問題だろ! と、言いかけて呑みこんだ。


「これは心愛ちゃんのサイズに合わないだろ。私と身長差が三十センチほどあるんだ。ズリ落ちるぞ」

「し、しまった……。じゃ、じゃあ、どうすれば」


 イスに崩れるように座りこみ、本気で落ちこんでしまった。


「…………」

「わかったよ。くっ……。パンツを愛する者として手放すのは心苦しいが、ぼくはそれよりも心愛の身体のほうがだいじだ……」


 護流の、「はあ? ならポケットにあるパンツを早く返してあげなよ」オーラの圧をかけられて、心一はべそをかきながら、心愛に隠してあったパンツを差しだした。


「お、おにいさま! いったいどこでみつけたのですか?」

「心愛が間違えて、スパッツと一緒に脱いでたんだ。ごめんな。すぐに言えば、ひんやりさせることもなかったのに……のに……」

「へいきですよ、おにいさま。よかったです。もってくれていたのが、おにいさまで。あ、このぱんつ、おにいさまのにおいがします」


 受け取ったパンツを、包みこむように手の中に収めた。隙間からでも、ほんわかと漂う体温に洟を近づけて、くんくんと子犬みたいに嗅ぐ。


「寒いだろ。早く穿いたらどうだ? いくらこの部屋が暖房を効かせているとはいえ、女の子なんだから身体に悪い」

「そ、そうですね。よいしょ」


 護流の気遣いを素直に受け止めて、足にパンツをとおした。

 そこに、


「だぁ――っ! やっぱり諦めきれない! 心愛、帰ったらそのパンツください!」


 素早く心愛に頭を下げ、懇願した。


「歪みないな、あなたは。兄としての威厳とかないのか」

「ぼくはありのままのぼくを、心愛に見せることにしてるんだ。兄である前に、ぼくはパンツ信仰者だからね」


 それを聞いて、護流は呆れるようにため息を吐いた。

 と、同時に、


「――だめです」

「え?」


 心一の中では、予想外だったのか頭を上げて、心愛を見上げる。


「このぱんつだけは、おにいさまにあげません」

「な、なんで?」

「とくべつ、だからです。たったいまとくべつに、かくあげしました」

「いまなったの? うーん、心愛がそこまで言うなら諦めるしかないかぁ……」


 赤髪をぽりぽりかいて、心一はしっかりと身体を起こした。


「ごめんなさい。元々、おにいさまからもらったぱんつなのに、ココのわがままで」

「いいよ。それより護流ちゃん、早くぼくの作ったパンツ穿いて見せてよ」


 ぺこりと平謝りをする心愛。

 そして、なぜか突然、心一の興味の先が護流に転じていた。


「あなたまだ、心愛ちゃんの下着のすべてを用意してるのか。あと穿きません。見せません」

「相変わらずガードが堅いね、護流ちゃんは。けど、そっちのほうがぼくは俄然、燃えるけどね」

「うるさい! 従ってこれは没収しておきますから」


 護流は、手に握っていた下着をスカートのポケットにしまった。


「そんなこと言って、本当は試し穿きしたいだけなんでしょ。もう心愛や緩ちゃんみたいに素直じゃないんだからぁ~」

「境心一!」

「きゃ!」


 冷やかしてくる心一を一喝する。と、同時に誰かが更衣室から出てきた。


「お待たせしてすみません。着付けに戸惑ってしまいました」


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