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…………。
「なにこれ……」
口を挟まず一連の流れを、ひたすら静観を守っていた護流の感想だった。
「あ、護流ちゃんだ! いいところに来たね。ちょうど、いまからいろんな重ね穿きの定番を試着してみようか、みたいな話題になってたんだよ。護流ちゃんもいいでしょ?」
「だから、護流ちゃんて――」
「いいじゃん、いいじゃん。一回だけでいいからさ。ね。お願い! このとおり!」
パン、といい音を鳴らして手を合わせる心一。
そんな心一の後ろでは、たしかにイヴと緩が特異そうな衣装をダンボール箱から出していた。
「わ、わかったから。一回だけ。一回だけだからな」
「ありがとう! さすが護流ちゃん、懐が深い! 恩に着るよ」
「お礼とかもいいから、早くしろ。私はあまり時間がないんだ」
あ、そうだったね、なんて上辺の返事をする心一は、とやかく急かす護流の背中を押す。
「じゃじゃん。どう。いっぱいあるでしょ」
「そ、そうだな。じゃあ、私はこれで……」
木目調のテーブルにずらりと並べられた、数々のパンツを守る壁になってくれる衣類たち。
護流は、その中から無難な「短パン」を手に取ろうとすると、心一は短パンを横から奪い去った。
「な、なんだよ……」
なにか嫌な予感をよぎらせつつ、眉をひそめる。
「護流ちゃんには、ぼくが昨日作った自信作の『コレ』を穿いてもらいたい。ぜひ」
ポケットをごそごそ漁って、一枚の布地を護流に手渡した。
「境心一……。あなたはまたこんなものを……」
開かずともわかる。護流の手のひらに置かれた過激なレース調の黒い――パンツ。
「手芸部の誇りを胸に。護流ちゃんが最近好む、大人パンツを徹夜で作成してみた所存であります! どうでしょう、お気に召しましたでしょうか」
「わ、私はそもそも好きであんな派手な下着をつけているわけじゃ……」
「まあまあ、そう隠さなくてもいいじゃないか。わりと好きだよ、ぼくは。大人パンツ」
「なんだそれ……。また守り方を変えないといけないのかぁ……」
「どうしたの? よくわからないけど、大丈夫だよ、そんなに虚勢を張らなくても。好きなんでしょ。ぼくのこと」
「んな!? ど、どうしてそうなるんだぁ!?」
心一の突拍子のない発言に、慌てふためく。
「だって、すぐに突っかかってくるし。ぼくの目が肥えないために、パンツに目を配ってくれてるし。一種の愛情表現じゃないの?」
「違うから! 突っかかるのは、あなたが問題児で。下着だって、大衆であろうと恥ずかしげもなくデザインを言うから、穿けなくなるだけで」
勘違いされている誤解を、必死に解こうする護流。
それをニマニマ眺めている心一だった。
「もう素直じゃないんだから、護流ちゃんもイヴも」
「なんでそこでわたしの名前が出てくるのよ!! べ、べ、べべ、べつにわたしは、心一のことなんか、好きなんかじゃないんだからね!」
部室の奥隅に設置されている簡易の更衣室から、イヴが顔を出して叫んだ。
心一が護流と話をしているあいだに、イヴと緩はどうやらなにかに着替えているらしい。
「同意だ。あなたの思考回路は、一本道でできているんじゃないか。きっとそうに違いない!」
「え~。じゃあ、ぼくの勘違いなのかな。そりゃそっか。あんなわかりやすいツンデレが現実にいるわけないし、頑なに弁解するわけないかぁ」
「そ、そうよ! いつわたしが心一に惚れる用途があったのよ! ないでしょ! 心一は、恋よりゲームセンター専用のコインのほうがお似合いよ! …………なに言ってんのよ、わたしは……。もうわたしのバカバカバカ……」
罵声を浴びせるなり、イヴはカーテンから出していた顔を引っこめた。
「まあ、ゲーセンのコインゲームは好きだけどねぇ~。あと、イヴ最後なんて言ったんだろ。ま、いっか」
呑気にかまえる心一の制服の袖を引っ張って、もじもじする少女が現れた。
「お、おにいさま。あの、そろそろこのすぱっつをぬいでもいいですか。やっぱりなれなくて……」
「うん? あ、いいよ。脱いだスパッツは、ぼくのカバンを入れておいて」
「はい! わかりました。おにいさま」
なんだか嬉しそうに返事をして、その場でスカートの中に手を入れてスパッツをスルリと抜き取った。
それをくしゃくしゃのまま、心一の通学カバンに無造作に放りこむと、
「いままでしめつけられていただけありまして、スカートのなかがスゥスゥしてきました。それと、いまさらいうのもなんですが、ぱんつの部分がいちばん、張りつくといいますか、ゴムが食いこんでいたかったですよ」
「そうだったのか。ごめんな、あとがついてないか? 帰ったら薬を塗ってあげるよ」
「ありがとうです、おにいさま。えっと、ココ、ちょっとお手洗いに」
「いいよ。行っといれ。なーんて」
「寒っ……」
「?」
心一のウケもしないシャレを、冷えた目で見る護流を疑問に思いつつ、心愛はトイレに向かった。
「ではさっそくご堪能しようか。現役女子小学生の脱ぎたてほやほやのスパッツを」
「変態……」
蔑んだ目で、罵る護流。
しかし、心一は意に介さず、思うがまま自分のカバンに丸めて入れてあったスパッツを、秘宝でも発見したように慎重に手に取った。
「うおぉぉぉ…………ん?」
温もりの残ったスパッツを左右に開いたところで、スパッツの中に白い布らしくものが心一の視界に入った。
「こ、これは!」
おもむろに手を差し入れ、確認するとなぜか、心愛が穿いていたはずの花柄のパンツがあった。
どうやら蒸れて、スパッツと一緒にパンツまで脱いでいたらしい。
これにはスパッツ以上に心一の胸は躍った。
「あなた、それどうする気なんだ。もちろん、伝えるよな――ってなにをやって」
「え? なにを、って、脱ぎたてのパンツを見つけたら有無を言わさず、頭に被るものだろ? 違ったっけ?」
「…………。はぁ……」
妹のパンツを躊躇なく、平気な顔で帽子にする境心一という境心愛の兄の姿を見て、淡瀬護流は怒りや訂正する気も起きなかった。
やけに心愛の出番が多いですね……。バランス調整をせねば。
友城にい




