希望の凱旋
どうもお久しぶりです。ソラです。
今回は2部序章としておさらいになります。
僕の友達である彼についての話をしよう。彼は四月に遠い国から留学してきた男だ。
留学制度の前例ではショーコという校長の元パートナーがおり、魔王退治の際、行方不明になっていたがそれは置いておく。
彼は貴族社会がない田舎の国から来たようで礼儀などなってはおらず、王子にタメ口を聞くほどだ。
終いには由緒ある決闘に横から割り込み、なんの力もない癖に出しゃばった挙句に一撃で意識を失うという面白い男だった。
しかし、次に彼が目を覚ました瞬間、彼の動きが変わった。話を聞く限りでは心武器など扱ったことがない上に1つしか出せない心武器を2つ出すなど常識外な事をしだした。
そして、この僕ことイワン・シルベストリアに勝ち、彼は『双銃の希望 マコト・カラスマ』として産声をあげたんだ。
その後はしばらく、恐怖で彼の前で吐いていたが気付けば見た目麗しい女性たち3人をパートナーにしていたではないか。
1人目は真面目系清楚美少女 ロゼ・イノセンティア。ディアブレリー王国の公爵令嬢であり、魔法の天才だった。
2人目は妖艶すぎる魅力的な美女 龍人 クレア・トゥルエノルム。勇猛の英雄の隠し子であり、元騎士団長であり、数々の武勇伝を持つ歴戦の傭兵。
3人目は無感情系冷徹美少女。魔族 リリム・ブラウ・ウィチェリー。魔族の姫であり、世界の研究と魔眼を持つ才女。
そんな女の子達をパートナーにして彼は学園へと馴染み始めた。
ところがアルフレッドという奴の怒りを買い、ロゼさんが誘拐されたのだ。元々ロゼさんのパートナーだったアルフレッドは彼女と無理やり再契約をし、学園の女子生徒を手篭めにした。
契約は女子生徒の方から解除できるが、当時のアルフレッドは公爵家という後ろ盾があり、それに刃向かうことができない身分の者ばかり集めていた事もあって、女子生徒達は心を殺して従っていたようだ。
エルデ王子もいちゃもんをつけられて、砂漠の大監獄に送られて、アルフレッドの暴虐を止められる者がいなくなり、万事休すかと思った先にあの男、マコト・カラスマは僕の元を訪れた。
親友だったアルフレッドを止めてくれと頼んだ僕に彼は頷き、そして本当にアルフレッドを止めて、ロゼ・イノセンティアを連れ帰ってきたのだ。
アルフレッドは数々の女子と契約をしていたことで無数の能力を持っていたにもかかわらず、マコトはそれを倒したということだった。
後で知ったのだが、なんとマコトは超越の英雄シェンデーレの隠し子であったのだ! ショーコとの間に生まれた彼は母が死んだ後、父に助けられたと言っていた。
それらを聞いて彼の強さに納得し、つるむようになった。賠償金なども貰ったし、王族と仲がいい英雄の子の側にいれば借金まみれのうちも立て直す機会があるのではないかと思ったからだ。
そして5月、新歓旅行の際に彼はまたすごい事をした。
まず、グラマソーサリーの火山に住んでいた神竜にエルデ王子の婚約者であるグラマソーサリーのガルディ姫と公爵令嬢に復帰したロゼ・イノセンティアが拐われたのだ。
それを倒したのは神竜騎士団と協力したマコト、エルデだった。しかも最後の方ではマコト1人で倒したようでディアン元陛下から賞賛されていた。
更に気付けばまたもやとなりに女が増えていた。
なんて羨ま………あ、待ってアルル。僕は君一筋だから。だから、怪しい臭いがする薬を近づけないで!
彼女の名前はルナール。義賊王と謳われる盗賊であり、狐の幻獣種 九尾の獣人だった。
好き放題やる彼女へマコトは引き攣った顔で対処していた、ざまあ。
問題もおさまり、気を抜いた俺だったがあろうことか今度はプレイアデス傭兵団という阿保が叛逆を起こしたのだ。
プレイアデス傭兵の団長であるイグニスは正義に固執した都合の良い事しか言わない馬鹿らしく、これまでの失態を背負わされて首にされたのだ。
それの復讐なのか、正義の行いなのかは知らないがイグニスが乗っ取った国を取り返すためにマコト達とその他の英雄の子たちが立ち向かった。
そして見事にマコトとクレアさんの2人のおかげでこの事件の首謀者2人を捕まえて、救世主としてマコトの名は国中へ広がった。
ディアン元陛下もマコトを偉く気に入り、宝石の採掘場を与えて彼はそれを元手にアクセサリーのお店を開けば一山当てたのだ。
財産を持ったマコトと提携したおかげで少しばかり、楽になったがまだまだ山のような借金は残っている。
しかし、6月、期末試験の為に訪れたヘクセレイで僕にもようやく運が向いてくる事になる。
ヘクセレイにてマコトのおかげで颯爽と課題を終わらせた僕達はしばらく観光として街に残っていたのだが、なんとそこへ人喰という化け物が襲って来たのだ。
だがマコトがいればなんでもないと僕は思っていたのだが………まさかマコトが痴情のもつれでその場にいないなんて!
余裕の態度だった僕はロゼさんに巻き込まれて、英雄の子であるアクセルとエリスと一緒に避難誘導及び、人喰の足止めをする事に。
今だから言えるが、若干チビってた。
だってめちゃくちゃ怖いわ!
人のぐずぐずになった肉の上着みたいなものを着て歩いて、口が全身から生えてるやつに立ち向かうなんてどうかしてる!
だから逃げていいかと聞いた時にロゼさんから逃げるな! と言われた時には遺書を書こうか迷った程です。ええ、はい。
しかし、その時僕以外には精神性も含めて女性しかいなかったので泣く泣く立ち向かうしかなく、ほぼヤケクソ気味にやってました。
何とかロゼさんのおかげで切り抜けたかと思ったが人喰はしつこく追いかけて来て、最終的にヘクセレイまで乗り込まれる。
ああ、死ぬんだなと思い、最後はアルルに甘やかされて死にたいと思っていたがその感情を吹き飛ばすほどのことが目の前で起きた。
何と、ヘクセレイの教皇様が気絶した民達を人喰に差し出して見逃して貰おうとしたのだ。
それを見て、僕は咄嗟に体が動いていた。反射的に心武器を使って、奴らの動きを止めると民達を守るように立つ。
僕の行為はふつうに考えれば重罪でそれを突くように騒ぎ立てる教皇達。
「貴様が何とかできるのか!!守りきるというのか!」
こんな言葉を吐き出していた教皇達に僕は黙らせるように彼らの前に心武器を叩きつけ、感情の赴くままに早口で叫ぶ。
「僕には無理だけど僕の友達だったら最後まで皆を見捨てたりはしない!彼はきっと来るさ!英雄の子だからな!」
いつだってあの男は皆を助けて来た。ロゼさんだって彼を信じてる。なら、僕も友達として彼を信じることに決めたのだ。
そしてその思いが届いたのか、彼は帰って来た。
またもや隣に女を連れて!
手を出すのが早いよ! 今まで何してたんだお前は! など色々な言葉を口にしたかったがその前に彼は言った。
ーー力を貸してくれと
あの英雄の子であるマコトがだ。僕に力を貸して欲しいと頼んだんだ。英雄の子のアクセルやパートナーのエリスではなく、この僕に!
なら答えるしかないだろ!
そして過程を省くがマコトは無事に人喰を成仏させて、ヘクセレイを救った双銃の希望として名を馳せたのだ。
そして彼への褒美に新教皇の娘、ジゼル・クラシカリアというマコトが連れ帰って来た女性をパートナーにして彼は二つ名を受けた。
これで終わればいつも通りなのだが……何と教皇達の悪逆を止めたとして僕にも褒美が与えられたのだ!
与えられたのはヘクセレイの森にあるタイフネという町の薬草収穫権利だった。元々高い回復効果を持つそれらは元教皇による愚行によって取り引きが途絶えていのだ。
それが新教皇の手で復活し、その採集の権利を与えられたのだ。幸い、アルルの家系は薬草学の研究で成り上がっていたためにそれを持ち帰り、上手く加工して売り捌いたところ富を得ることに成功したのだ。
おかげで借金は無くなり、アルルと旅行ができるほどの楽しい夏休みを送れることになる。
そして7月、僕とアルルはコンジュレイにある獣王祭へと来ていた。唯一の懸念として盗賊団に襲われるのではないかと思ったのだが、僕たちがついた時には盗賊団は大監獄に送られていたらしい。
優雅に祭を楽しんでいた僕たちだったが、酒場の主人から何度目になるかはわからない友達達の名前を聞いた。
そう、マコトと王族であるエルデである。彼らは僕らと入れ違いになったらしいがまたもや国の闇を暴き、膿を消し去ったらしい。
酒の肴として詳しく聞けば主人は快く教えてくれた。
どうもエルデは後に起こる人魔対戦での同盟締結のためにコンジュレイを訪れており、今回の盗賊団壊滅はエルデが指揮を執ったものらしかった。
何故ならマコトは盗賊団によって嵌められて冤罪を負わされた挙句に大監獄に収監されてしまったからだ。
幸い、ルナールの伝手により大監獄内の身分は保障されていたもののマコトは手をこまねくしかなかったようだ。
しかし、運が良かったのか、悪かったのか知らないが何と盗賊団が大監獄に乗り込んできたのだ。
どうも大監獄はルナールを主とした移動国家だったらしく、ルナールが普段使うアーティファクトの倉庫、および宝物庫が大監獄の地下にあったらしかった。
マコトのパートナー達は策略に気づいたエルデによって、大監獄に向かい、エルデの使用人であるガルムは盗賊団と繋がっていたベスティア姫を追求。
エルデ本人は国の地下に蔓延っていた盗賊団の根城を急襲し、全員を捕縛後、大監獄に向かって団長を捕まえたようだ。
捕まえた際に仲間割れしたのか、団長の首だけしか残っていなかったようで誰がどうやって殺害したのかは未だに不明らしい。
しかし、他国の王子であるエルデが何故こんなことをしたのかといえば彼が大事にしていた幼馴染の精霊族を起こすためだったようだ。
そこら辺は他国の話のために詳しくは語られなかったがちらっとディアブレリーで見た際には褐色の精霊族の女の子を連れていたから、きっと彼女がそうなんだろう。
とはいえ、旅行を満喫した僕たちは僕の領地で退廃的な生活を送っていた。そんな食っては愛を交わして、寝るという毎日を過ごしていた僕たちにとんでもない情報が流れて来た。
何とディアブレリーとコンジュレイがウィチェリー帝国へと戦争を仕掛けたのだ。その準備のために優れた回復薬が欲しいと打診された僕は急いで準備を始めたのだが、正直迷っていた。
何しろ、友達であるマコトのパートナーには魔族の姫であるリリムさんがいる。マコトの性格から考えれば彼は十中八九、帝国側へと着くだろう。
だけど家柄のこともある上に稼ぐにはまたとない機会に僕は葛藤し……僕は両方ともにどっちつかずの選択をした。
回復薬を薄め、軽い傷なら直ぐに直せる程度のものを売りつけて、急には無理だったと理由をつけて追い返した後、精霊族の知り合いからジゼルさんに会う約束を取り付けた。
WSと呼ばれる喫茶店の会長であるジゼルさんに純正の回復薬を売りつけることに決めたのだ。ジゼルさんはすぐにそれらをいい値段で買ってくれた。
その後は戦争に参加するという貴族の三男坊達を眺めながら僕とアルルは領地に引きこもって友達達の無事を祈った。
そして戦争が終了し、国中の隠していた闇が明らかになったなど世間が騒ぐ一方で僕はもう1つの情報を聞いて安心した。
次期魔王候補 マコト・カラスマが世界を滅ぼそうとしたジン・ファミリアを下し、世界を救ったと。
「よかった……みんな無事だ」
僕が知る人物達は皆、生きててくれた。夏休みが終わってもまだ帰れないようだが彼らが無事ならそれでいい。
さてと、なら僕は彼らが帰ってくるまで学園の維持に努めよう。平穏な日々を望む希望が帰って来るまで。
*
「魔王? ああ、お前が魔王ね。何だ、俺より若えな。こんな奴が学園の生徒たちが望んでた希望なのかぁ? 笑わせるねー!」
「次期魔王な。そこのところは間違えないでくれ。じゃあ、まずは話し合いをしよう。あまり暴力沙汰にはしたくないからな」
周りを見ればかつて俺が通っていた筈の高校の制服を着た人が数十人。そのうち、こちら側に明確な敵意を向けているのが25人。
その中心に立つのはまさかのジャージ姿の教師。確か、体育の先生の石田じゃなかったか? セクハラと体罰で有名で俺も貧乏だと馬鹿にされたな。
「ま、真か?」
そして尻餅をつき、こちらを呆然と見るのはかつての友達、風桐礼央。お馬鹿な友達思いの熱血ボーイだ。
「久しぶりだな、レオ。事情は後で話してやるから。今はおとなしくしてくれ」
レオにそう言って、ガンくれてるエルデの側に立つとエルデからお前の知り合いか、あ? みたいな重圧がのしかかる。
「馬鹿か、お前らみたいな屑には話し合いなど必要ない。この『無敵』の力があれば俺は負けないからな」
「状況は?」
ひとまず目の前の教師失格を無視してエルデに問いかければエルデもまた淡々と返してくれた。
「あの教師がリーダーで学園のFクラスの女半分を人質……物質にしてる」
「ものじち? おい、まさかとは思うが……」
「俺はこの騒動が終わった後、どうやってキズモノにされた娘の家に弁明すりゃいいと思ってんだ、ああ? わかるか、この怒りが。誰のせいか、わかってんのか!?」
なんで俺たちが学園から離れた間に何でここまで災難が降り注ぐかな。神様は俺たちが嫌いか?
まあ、わかったのは1つ。
こいつらは敵だ。
「おい、どうした? 来ないのか? ハッ! 怖気づくのも無理はないか。所詮、ただのガキ。大人が怖いもんな〜」
「あんな感じで挑発を続けているがこちらも打つ手ないからな。互いに睨み合いで今に至るんだが、ようやくそれも終わりそうだ」
エルデの手が肩に置かれる。つまり、これはそういうことか。
「後は任せたぜ、希望さんよ。ここは学園の中だ。致命傷を受けても問題ない」
「はいはい、任されましたよ」
右手に黒い銃を出す。それを石田に向ければ馬鹿にするような態度で自分の脳を指差す。
「ほら、狙いはここだ。よーく、狙えよ」
まるで自分が負けるとは微塵も思っていない仁王立ち姿に笑いがこみ上げているエルデとは違って、内心冷めている。
異世界にきて、まだ日は浅いのにもう能力を扱えた気になって、自分が世界で一番強いと思っている。そんな奴に5ヶ月積み重ねたものがある俺が負けるかよ。
「受け取れよ、先生。解雇通知だ」
引き金を引く。同時に銃口から発射された弾丸は物理法則に囚われず、真っ直ぐに石田へ向かい、無敵の鎧を……貫通した。
間一髪避けたことで致命傷は避けられたが、後ろに吹き飛んだ先生に周りの目が奪われた間に石田の吹き飛ぶ先に回り込み、それを足で地面に押し付けた。
何がなんだかわからないと目を白黒させる石田の胸辺りを力を込めて踏めば、汚い唾とともに空気が吐き出される。
「な、何でだ! 俺の能力は無敵だ! おまえぇ……何をしたァ!」
「説明がもったいない。悪いが二日酔いなんだ。さっさと蹴りをつけさせてもらうぞ」
俺の足裏から発生する冷気が石田の能力を『無視』して彼の体へ浸透し、その姿を氷の人形へと変える。
「ゲームオーバーだ、人生やり直せ」
完全に凍ったことを確認して足を離せばこちらを畏怖の目と恐怖を宿した目で見つめる姿。
「おとなしく降参しろ。悪いようには……いや訂正、罪を犯していないものは悪いようにはしない」
その言葉に思い当たる節があるもの達は怯え始め、こちらへ向けて心武器を構える。女性から契約が切れる筈だがそれがないってことは脅されているのだろう。
大方強制セミヌード写真がスマホに入ってるとか何とかか。
俺を囲うようにジリジリと距離を詰める地球からの転移者達。しかし、構えは隙だらけで屁っ放り腰。カタカタと心武器も小さく震えている。
「どうした? まさかそうやって一日中立ってる気か?」
挑発めいた言葉を使えばようやく向かってくる男たち。それに対して、俺は足をトンと地面に押し付ける。
そこから水面に広がる波紋のように光が迸ったかと思うと甲高い音を立てて、氷が世界に干渉し、氷の大結界に閉じ込める。
「ま、こんなもんか」
瞬きの直後、立っていたのは完全に魔族となった俺と凍らされた哀れな侵略者達。
そして地を揺らすほどの歓声が学園へ帰還した魔弾の王を出迎えたのだった。
次回は明日の18時からになります




