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異世界からの留学生

「さてと話し合いといこうか、随分と好き勝手にやってくれたけじめをつけよう。なーに、心配するな。連帯責任だ。全員の身分を奴隷に落としたくなかったら、罪を犯したものを前に出せ」


 学園のある魔族を軟禁していた研究室に閉じ込められていた傷だらけの裸の女性たち。それらを保護し終わった後、怒りの冷気を身近に浴びながら俺とエルデ、そして怒れるリリムさんは交渉の席に着いた。


 目の前にいるのは75人の転移者達。脱出口に当たる部分にはクレアさんと分身したルナールさんが備えている。


「聞こえなかったか? ならもう一度だけ言ってやる。悪事を犯したものをだせ。身内で裏切れ。まさかと思うがここから『僕たちの異世界譚が始まる!』とか思ってねえだろうな? 」


 エルデさんが怒ってらっしゃる。めちゃくちゃ怒ってらっしゃる。顔が笑ってるけど溢れる殺意だけで傷がつきそうだ。


「ってか、さっきから失礼だと思うんだけど? アンタ何様よ!」


「そ、それに僕たちは東の方からやってきただけで……」


「誰が俺たちにそんな舐めた態度を取っていいって言った? テメェらの目の前にいるのは国王と次期魔王、魔族の姫様だ。それにテメェらが地球からの転移者だってことは判断がついてる」


 だってここにいるのは転生者と転移者と異世界の住人ですからね。そりゃあ、見分けがつくってものよ。


 そしてまさか自分と同じくらいの年齢の奴らが王族だとは思っていなかったようで途端に黙りこむ異世界からの転移者達。


「後、何秒だ?」


「は? えっと、どういうーー」


「後、何秒、テメェらに時間をさけばいいのか聞いてんだ」


 空間を震わせるほどの圧に平和な日々を過ごしてきた転移者達はそこからは阿鼻叫喚。悪事を犯したものを前に差し出し、自分が押し出されのではないかと恐怖し、誰かを押し出すなどの地獄絵図が続くのだった。




 *




 あちら側を全てエルデに任せて俺はリリムさんを連れてイワンに会いに来た。俺の体にしがみついていたロゼさんと霞に怪我した者達の治療を任せて。


「おいーっす、イワン、元気かーい?」


「何とかね、君の時に比べたら幾らかマシだよ」


 挨拶をしたら、皮肉で返されたのでベッド脇の椅子へ座る。イワンの体からは傷は消えているが、疲労は抜けてないだろうから医務室で安静にしていたのだ。


「事情を聞きに来た」


「あ、リリムさん。婚約おめでとうございます。お幸せに」


「……ありがとう」


 照れてるリリムさん、すごい可愛い。


「それで事情ですね。実はやらかしたのはうちのFクラスの方なんですよ」


 イワンは俺たちがいない時のことを語り出してくれた。


 イワンが言うにはFクラスの女子がパートナーはこの学園にはいない! なら私の召喚術で自分に合うパートナーを呼び出すわ! と行動に移したらしい。


 そして学園が始まって早々に彼女の召喚陣を使って彼女が呼び出したのだが、数を明確に記していなかったせいか百人ほど呼び出してしまった。


 そしてその事態を把握した親父がひとまず、俺の活躍で得た寄付金によって広くなった学園の空いている居住へと住まわせたのだが


「なんか、以前の君を見ているようだったよ。貴族相手に喧嘩売るとか」


「やめて」


 学園内では身分の有利不利などはないはずだがある事はあるのだ。つまり、身分もわからない彼らが貴族相手に失礼な真似をしたのだろう。


「因みにその時の貴族側の言い分は汚い金髪に気持ち悪い刺青が彫られた男にパートナーがキスされたらしい」


「DQNかな?」


「マコト、あなたの世界って倫理観とかない世界?」


 失礼な、ある人はしっかりしているよ。たまにそんな阿保がいるだけで。


 ともかく、それらのいざこざから対立が生まれて両者の間には埋めがたい溝が生まれた。そして、事件は起きた。


 親父が学園から少し離れることになったのだ。元を辿れば俺の婚約とかの根回しに行ったのだろうと思うがほんの3日ほど、何も起きないとタカをくくっていたのだろう。


 そりゃあそうだ。仮にも先生たちは常駐してたし、SクラスにAクラスのトップがいないとはいえ、イワンたちのような手練れもいる。


 だからこんな事になるとは予想外だったのだろう。


「まさかあの……すーまほ?」


「スマホだな、ありゃ酷かった」


 俺は見なかったのだがスマホの中に入っていたーー涙を流す裸の弱者の写真を見たクレアさんがその持ち主を原型がなくなるまで壊しそうになったのを止めたりした。


「あんな冷めた表情で殴り続けるクレアさんとか初めて見たよ」


「僕はフェルムの時に見たけどね」


「当時のあいつはそこまでやられたのか」


 結局、パートナーがいないFクラスを脅して協力させて彼らは自分たちに有利な楽園を作り出したのだ。


 非日常だから多少は興奮していたのかもしれない。だけどやってはいけない一線も間違いなく存在する。


「僕はAクラスを率いて無事なFクラスを保護したんだけど……」


「あの教師がやって来たのか」


 そう、常駐していた先生たち全ては石田にやられたのだ。無敵の力を持つ彼によって。


「彼はFクラスの女子たちを好き勝手にし、金を巻き上げて文句あるやつは半殺しだ。情報も制限されて手紙を書くことも出来なかった」


「ならどうやって俺たちに手紙を届けた?」


「レオと言ったかな? 彼と事件の張本人、『S級冒険者』のドロシーが手を貸してくれた」


 レオと契約したドロシーが俺に繋がりがある女性を呼び出し、イワンが書いた手紙を渡した。呼び出したのはティフォン。


 その後、逆召喚によって店に戻された彼女はすぐさまWSの繋がりを用いて帝国まで手紙を届けた結果、俺たちの元に届いたのだ。


「すぐにバレたから、なんとか応戦してたんだ。あのまま負けてたら、アルルまで奴らの手に落ちるところだった」


 イワンは話し終えてようやく肩の荷を降ろしたようだ。だから俺はイワンの肩に手を置いて、


「ありがとな、助かったよ。イワンのおかげだ」


「世界を救った英雄さんに言われたくないさ」


 そうやって互いの健闘を讃えたのだった。




 *




「さてとここからはマジな話だが。どうすんだ、校長さんよ?」


 エルデと俺、リリムさんに後、霞。他の面子はルナール、クレアさんを筆頭に見張りをし、ロゼさんとガルディさん達は学園の生徒の指揮を執っている。


「お互いの情報を擦り合わせた結果、どっちもどっちってことがわかった訳だが?」


 実はエルデもガルムに力を借りて、尋問した結果、地球側のある奴が自分に合う相手を召喚するとか何とか言っていたらしい。


 誰かは知らないが何人もそれを聞いているということは間違いはないはずだ。


「つまりふざけて書いた魔法陣にこちら側が干渉しちゃった訳か」


「目的も一緒だから可能性は高い」


「ん? その場合、不味くないか? 私たちや先輩みたいにまた世界崩壊の危機が訪れるんじゃ……」


「あれは地球人に異世界の魔眼が宿ったせい。本来あり得ないはずの私達の世界でしか持てないものが地球人に宿ったせいだから」


「だけど俺たちから魔眼を取れば今度は地球人の魂が異世界人に宿るみたいな矛盾が産まれねえ?」


「それは違う。この異世界にしかない魔眼が地球にしかない貴方達の魂に宿ったからいけなかっただけ。だけど、異世界にも地球にも人はいて、肉体はある。それに宿る分なら問題はない」


 アザゼルの言葉にリリムさんの考察を踏まえて推論を述べる。


 ようは地球にはない魔眼が異世界にはない地球の魂に宿ってしまったのが世界が初期化されるなどの自体を引き起こしただけだ。


 異世界にも地球にも存在する人間という肉体に地球の魂が宿ったくらいでは大丈夫なはずだというのがリリムさんの考えらしい。


 現に異世界の魔王の魂が宿った俺が地球で暮らしても特に何もなかったからな。


「幸い、世界崩壊なんて未来は見ていない。だから心配無い」


 リリムさんがそう言うなら大丈夫だろう。


「で、どうするよ? 返せるやつは返すか?」


「だがなぁ、俺もマコトもそうだが超越も移動も世界越えとなるとかなりの時間をかける事になる。最悪、あちらから帰ってこれないこともあるからな」


「罪を犯した奴らは強制的に大監獄行きだ。残された奴らだけ、何とか保護は出来ねえか?」


「しかし、保護するだけでも75人は下らないぞ? 少しくらいなら私が引き取っても構わないが」


 しばらくの間、案を出し続けた結果、学園に残すのは35人。WSで預かるのが20人。俺の領地で20人預け合う事にした。


 幸い、WSも全国展開を果たした事で人手が足りないし、俺の領地も温泉地として繁盛しているからだ。


 基準は学園のFクラスが減った補填分を補う形だ。十中八九、今回の件で傷を負ってしまった子達は学園を去るだろうから。


 そのため不良や危なそうな奴らは俺の領地で働かせて、女子達はWSで働かせることにした。


「資金面は大丈夫か?」


「まあお前とWSの寄付があれば何とかなる。ちょっと負担が増えるが勘弁してくれ」


 ともかく方針は決まった。後は彼らに伝えるだけか。




 *




 ハロー! ナイスミートゥートゥー!

 マイネームイズ レオ!


 あれ? 異世界人って外国人とかと違うの? 何で早くそれを言ってくれないんだよ!


 こほん、はじめまして僕は風桐礼央。ある日、僕たちは何と異世界に召喚されたんだ!


 そこでまあ色々あったんだけど僕はこの世界で友達と再会した。


 異世界に転移したら友達が魔王だった件、まるでラノベのタイトルみたいだね!


 ってそれはどうでもいいんだ。学年全体が召喚されたんだけど、この学園ではこれだけの人を保護は出来ないらしく国中に散らばるらしい。


 僕も当初は友達の真の領地に行くつもりだったんだけど僕と契約を交わしたドロシーって外国人に止められたんだ。


 あ、ドロシーっていうのは僕たちを間違えて召喚した女の子で頭にとんがり帽子をかぶって、改造した黒いブレザーを着ているんだけどぱっちりした目に長い睫毛、色白の肌にすごく出るとこは出てる可愛らしい魔女みたいなんだ。


 どうも彼女と契約した以上、彼女のそばにいなきゃいけないらしくて真の勧めもあって僕は学園に残る事にした。


 けどこの学園は最高だね! 今まで彼女がいなかった僕でもこんなに可愛らしい女の子とキスできてしかも学園生活が送れるんだよ!


 最高じゃないか!


 これも帰るまでの夢だと思って楽しみたいと僕は思うよ!




 *




はい、皆さんに集まってもらったのは学園の生徒たちからの不満が酷いせいです。てな訳でーー補習だ」


 瞬間、脱兎のごとく逃げ出したレオと愉快な仲間たち。あまりにも洗練されたその動きからはよほど補習を受けたくない気持ちが伝わってくる。


「あ、言い忘れたけどーー外には逃走防止の罠がある」


 扉から逃げて言ったレオが再び帰ってきた。その服はほとんどちぎれて半裸の状態だ。


「何か言うことは?」


「やはりそうなったか」


「ぶち殺すぞ、コラ」


 エルデ直伝、相手を苦しめる罠の取り付けを行った結果がこれである。


 現在俺は空き教室にて異世界からの転移者たちを集めていた。親父に異世界について教えろと頼まれたからだ。


「ひとまず座れって。誰もお前の裸体を見て喜ぶ奴はいないから」


「失礼な! 上下左右どこから見ても恥ずかしくない王子みたいなかっこいい男でしょうが!」


「中身はすっからかんな馬鹿王子だけどな」


「馬鹿って言った方が馬鹿なんだぞ、真!」


「そうか、因みにだが円の面積の求め方は?」


「半径×半径×1/2だよ! 僕を馬鹿にしすぎじゃない!?」


「ああ、もう一回中学からやり直した方がいいな」


「ま、漫才しないで話を進めてくださいませんか?」


 如何にもなガリ勉眼鏡がそう手を挙げる。レオもそれを聞いてそそくさと退散したので俺も黒板に名前を書いて自己紹介していく。


「初めまして地球から召喚された諸君。俺の名前は鴉間 真。一応、半年間君達の学校に通ってたから知ってる人はひとまず手を上げてくれ」


 かなりの少人数だが手が上がる。俺も少しは知っているがこれなら一からやり直したほうが良さそうだ。


「よしじゃあまずは色々聞きたいだろうから質問を受け付けるぞ。何か、聞きたいことはあるか?」


「はい! 真って魔王って呼ばれてたけどまじで魔王なの!?」


「次期な。俺のパートナーが魔族の姫様だから、婿入りする形になってるからだ」


 集められた33人はそれを聞いてヒソヒソと何やら話し合う。その中で1人がおずおずと手を挙げた。


「あ、悪いが名前も名乗ってくれると助かる………確か神楽坂だったよな?」


「は、はい! 神楽坂 有朱です………ま、魔王ってよくある感じだと思っていいんですか? 私たちはそういうのを倒すのに召喚されたとか」


「ゲームに出てくる魔王って感じじゃ無いけどな。さっきのあいつの名前は知らないけど悪の親玉っていうならそれは嘘だ。最近まで世界初期化とかしかけてたが俺たちが止めたから大丈夫だ」


 神楽坂有朱と名乗った少女はビクビクと瓶ぞこ眼鏡をつけて茶髪おさげが震えている。

 更に目の前の教壇に立つ男が世界を救った男だとわかった瞬間、クラスの人達から落ち着きが消えた。


「さ、参加していない焔君は大丈夫なんでしょうか?」


「別にサボったからって酷い目に合わせたりはしないよ。学園内では殺しは御法度だから。というか、なんか主人公っぽい名前なのな」


 今ここにいない2人のうちの1人、本名 白銀 焔。すごいキラキラネームのような気がするのだが親は一体どんな気持ちでつけたのだろう。


 ざわざわとする中でまたもや誰かが手を挙げた。


「白鳥 翼だ。俺たちはいつ帰される?」


 そこにいたのは名前は聞いた事がある美少年。海外ドラマの俳優かと思えるほどの色素の薄い髪で目鼻立ちが通った男が手を挙げる。


「悪いが不明だ」


 これは本当に分からない。返す方法がないわけでもないが、かなりのリスクを伴う以上、できれば避けたい。


「か、勝手に呼び出しといてそれはねえだろ!」


「そうよ! アンタ、頭おかしいんじゃないの!?」


 やんやんやと騒ぎ立てる気持ちもわかるがこっちだって慎重にやらなきゃいけない場面なんだ。1つ間違えれば世界初期化だぞ?


「静かに」


 どうやって止めようかと悩んだ俺だったが止めたのは白鳥だった。水を打ったように静かになる中で彼は重苦しく、口を開く。


「原因は俺らにもある、だろ?」


「鋭いな、お前」


「伊達に人の顔色見て生きてはない」


「それは自慢できないと思うんだ」


 ともかく指摘された通り、色々混み合った事情を話すと誰もがその犯人探しを始めようとするので手を叩いて話を戻す。


「犯人探しはこっちでやっておく。ひとまず君たちは学園で保護することが決定した。他の人達は悪いが………態度に問題があるために学園の息のかかった場所に配属される事になってる」


「はい! 質問!」


 元気よく手を挙げたのは赤髪ツインテールの女の子。引き締まった肉体と快活な笑顔を振りまき、男子にも気安そうだ。


「私、時風 舞! 彼らに不当な扱いはしてないよね!」


「大監獄に送った奴ら以外はな。元に戻す際には全員送り返してやるから心配ない。ただし、悪事を働き、誰かを殺したならそいつは地球には帰れない」


 これも事前に決めていた事だ。悪事を働き、人殺しを行った際にはそれぞれの責任を持ってこの世界で殺せと。


「殺しをした奴らが地球に帰っても怖いだろ? そっちはこっちが受けてやるから」


 クラスの声が止んだ。どうやら命の危機とかそういうものを今更になって認識したらしい。


「はい! パートナーとか何だよ! 教えろ!」


「名前は?」


「山本弘明だ、つかさっさと教えろよ!」


 寝癖付きの眼鏡で脂汗が光るその男は鼻息荒く、手を挙げる。若干立場をわきまえていない気がするがそれはどうでもいい。


「簡単に言うとこの世界ではカップルで戦うんだ。その相手をパートナーっていう。契約はキスで結ぶんだ、いい例としてレオ!」


「は! な、僕は寝てないよ!?」


「よだれを拭いてから言ってくれ。こいつはすでにこの学園の生徒をパートナーにしている。別に無理して作らなくてもいいけど、いざとなったら自分の身を守れる方がいいだろ?」


 しかし、花も恥じらう思春期にそんな行動はきついだろう。現にクラスメイト達は顔を真っ赤にするやつや鼻息荒く、女子を見るやつなどに分かれている。


「後、お前たちがパートナーを結べるのはFクラスだけだと思っておいてくれ」


「はあっ? なんでそんな事をお前に言われなきゃなんないの?」


「………既存のパートナーがいないのがFクラスだけだからだ。それ以外は基本的にパートナーを組んでると思ってくれ」


「ふうん、なら別に誰かのパートナーを寝取ってもいいんじゃないの? 例えば………君とか」


 調子に乗ってるのか知らないが俺を指差してそう答える、山本。流石にクラスメイト達も止めようとするが俺が黙っている事をいいことに話を続ける。


「だってさ、お前のパートナー、たくさんいるなら1人くらいよこせよ。どうせ欲しがってるんだから、俺が満足させてやるから」


「おい、山本! 失礼だろ!真は僕達に常識を教えてくれてるのにそんな失礼な真似をしていいわけないだろ!」


「馬鹿は黙ってろ! どうせ、お前のパートナーだってきっとこいつのお下がりだぜ? 都合が悪いから黙ってるんだ。さあ、ほらさっさとーー」





「いい加減にしろよ、お前」





 教壇を叩き割り、魔族となった俺は舐めた事を抜かす山本を凍てつくような目で射抜く。所詮は平和な世界で生きてきた一般人、これで十分だ。


「倫理観を持ってるのか? 普通に考えて誰かを寝取るとか頭に浮かぶか? そんな常識ない奴がこの間、大監獄に送られていったのを見ていないのか?」


「は、はは、あれは無理やりだっただけでこっちの魅力があればそんなことーー」


「なら少しは自分を磨け。何も可笑しなことは言ってないからな? 寝癖整えて、脂汗を拭いて、少し痩せれば誰だってそれなりの見てくれになる。それすらやらずに魅力がどうとか言う資格はない」


 クラスの女子たちがうんうんと頷き、男子たちがさりげない感じを装って寝癖や汗などを確認していく。


「異世界に来たからって調子に乗るなよ? 言っておくがチート能力を持って無双とか淡い希望抱いてるならすぐに捨てろ。チート能力があったとしてもこの世界ではそれなりに苦労するからだ」


「………それって真の実体験?」


「まあな」


 魔眼があっても体が考えについてこないし、魔族の力も自在に使えるようになったのは人魔大戦前。それにチート能力を扱うにしても俺より上がいるとこの世界で教わった。


「もう一度言う。調子に乗るな、大人しく過ごしてれば余計な軋轢も何も生まれない。ちょっと長い海外留学だと思って過ごしてほしい。質問は以上だ。説明に入るぞ〜」


 緩い空気が締まった気がする中、ただ1人、黒板に文字を書いていく俺の背中に敵意をぶつける奴がいたのだった。

次回は明日の18時過ぎからになります

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