魔法に愛された女達
今日から3話連続投稿になります!
いよいよ1部最終回も近くなって参りました!
「どうした! どうした! 急に動きが鈍ったぞ! 死角からの動きに反応出来ていないな!」
「手加減してやってるの! すぐに倒さないためにな!」
もちろん、ハッタリ。強がりである。先程まではなんとか互角で戦っていたのだが奴の重力に縛られない人知を無視した動きに対応出来なくなってきたのだ。
理由は簡単、霞がやられたからである。
霞の把握による力で避けていた背後からの攻撃などが防げなくなってしまったのを見抜かれ、時折、フェイントを織り交ぜられ、攻撃されているのだ。
霞の身は心配であるが、クレアさんと何かを話していたところからきっと何か対処しているのだろうと思い、目の前の相手にだけ集中する。
そうでもしなければいつ、俺の命がとんでもおかしくない。
弾丸でジンの移動できる空間を絞り込み、そこへもう1人の俺が近接戦を挑む。いくら傷ついても治るからこそ、出来る外道作戦だがそれが功を奏していた。
しかし、もう1人の俺が死ぬことがジンの強さを表しているのもそうだろう。俺が2人でようやくジンレベルなのだ。
「ほら! 切断!」
「わっと!」
気を抜けばジンがもう1人の俺を蹴り飛ばし、ありとあらゆるものを斬り捨てる力を持って、こちらに接近してくる。
その剣技は正直に言えば今まで見たことないほどの強さを持っていた。防ぐことは不可能なため、紙一重でかわしていくのだがその目に移る技術には感嘆するしかない。
「次は右! 下! 上だ! さあさあ、頑張ってくれよ!」
「やってやらあっ!」
落ちてくる刃を受け、切り返す斬撃を流し、放たれる刺突を避け、跳ね上がる切っ先に身を回し、袈裟切りの刃を掲げた双銃で絡め取り、反撃に転じる。
弾丸を放ち、改造の足を跳ねあげ、火属性のアーティファクトを使い、銃のつかで殴りつけ、風のアーティファクトでジンを吹き飛ばす。
「なかなかいい風だ。君はてっきり魔法が使えないと思っていたが?」
「生憎、アーティファクトを利用してじゃないと使えないんでね」
「僕は魔法も使えるよ?」
魔眼は使っていた。だがその瞬間、彼の姿は世界から消え
「だから君に勝てる」
次に認識したのは自身の体から吹き出す血だった。
*
「まぁお前の負けだ」
地に這い蹲り、傷だらけの指先で必死にナイフやら剣やらを掻き集め、最後の最後まで往生際が悪く、足掻く姿。
それを見下すのは札に鏡を周りに浮かせた狐、ルナールである。
彼女はアーティファクトをつかみ、自分のものにすると理解した瞬間、ルナールはアーティファクトを封印し、呪法による戦法に移行した。
それに驚いたのはカローラであり、僅かに盗めたアーティファクトを駆使して何とか呪法に対応しようと手を尽くしたものの相手が悪すぎた。
何故なら、カローラが奪えたアーティファクトはそこまで特殊な力が付与されたものではなく、ルナール自身の技術によって裏打ちされたものだったからだ。
そしてルナール自身は特にアーティファクトがなくても問題はない。その時は自身に属する呪法の力を使えばいいのだから。
「無論、妾も鬼ではない。仮にも姫君だ。降参すれば丁重にもてなしてやるぞ? 悪い話ではないだろう?」
両者の間に埋めがたい実力差が存在する以上、その提案に乗った方がいいのは間違いない。だが、その言葉を聞いたカローラの様子が途端におかしくなった。
「違う、私は悪くない。悪いのはあいつらだ! あんな屑どもがいるから、私はこんな!」
「何をトチ狂っておるのだ? のるのか、のらないのか?」
「私はただ、ぶつかっただけだ! ただ、それだけだ! 私は何もしていない! あいつらごと殺すんだ! 世界も全部!」
「面倒だな、そなたは!」
ルナールが札を彼女を中心として八卦に広がり、魔力を通じて結界を作り出す。既に何かに心が囚われた彼女はその結界を壊そうともしない。
「転八卦封印陣!」
結界を狭め、球体を作り上げると中に彼女を閉じ込めたまま縮小。彼女を生かしたまま、宝玉へと変えた。
「終わったか、ルナール?」
「当たり前であろう! ところでだが此奴のこと何かわかるか? 」
「さあな、俺にだって分からないことがある。俺が知ってるのはカローラ姫が護衛を連れて外に出た際、護衛が目を離したすきに連れ去られたらしい」
ルナールはカローラをラクーンに投げ渡す。仮にも守護神として崇められているラクーンが王家に渡した方が都合がいいだろう。
「さて、あらかた片付いたから一旦戻ろう」
「ジゼル達も気になるしな!」
2人の獣人はその場を後にする。何故彼らがここまで世界を恨むのかに想いを馳せながら。
*
「君は運がいい。切断の契約が切られたみたいだ。君の狐ちゃん達が僕の子猫ちゃんを倒したみたいだね」
「やっぱ、日頃の行いがいいからだな………」
正直危なかった。おそらく、ルナールさんだろう。
切断なんて使われてたら、改造で治す暇さえなかった。
「そうだ、君のパートナーの健闘を評して君に治癒の時間を与えよう。ついでに僕たちのことを少し話そう」
「そりゃどうも」
予想以上に傷が深いが相手側が慢心してくれるなら、そこを利用させてもらおう。もしかしたら、話す内容に何らかの弱点があるかもしれない。
「僕らはそれぞれの目的で世界を壊そうとしている。人の記憶に残る為、好敵手と戦う為、腐った国を浄化する為、奪われた未来の為、単に破滅を望む為だ。その中でも酷かった、彼女の話をしよう」
「彼女………?」
「彼女はとある国の姫でした。ですが、ある日護衛の人と逸れ、不安のあまり、焦って人とぶつかってしまいます。ですが、何とその男はただの屑でした。男は世間知らずの女を散々弄び、生まれた子供は奴隷として売り、女を殴り、金をせびる毎日でした」
話の内容はおそらくはカローラ。エルデからの情報で彼女たちがジンのパートナーだということはわかってる。
しかし、カローラがここまで悲惨な目に遭っていたのはわかるが何故世界まで滅ぼそうとする?
「そこへ来たのは空前絶後のカッコいいさわやかな男とヒートにエレナ。あ、アザゼルはまだいないから。旅をしていた僕たちはたまたま彼女を助ける事になってね。それで国へ送り返そうとしたんだ」
「だが断った? じゃなきゃ、こんなことしてないもんな」
「ああ、彼女は自分を落とした奴を殺したがっていた。だから、ヒートの力を借りて、その男を殺したんだけど彼女の憎しみはとどまることを知らない。彼女は憎んだ。助けなかった周りの人。迎えに来なかった家族。あんな屑が生きる世界。全てが憎くかったのさ」
傷は治ったな。だがもう少し、聞いておこう。彼らのルーツがこれでわかる。
「その後、僕たちはウィチェリーに行き、アザゼルと出会って、世界を壊すことしたって訳さ。さて、構えなよ。続きを始めようじゃないか」
大刀を肩に担ぎ、女を落とすような甘いマスクを動かすジンに気を配りながら、俺は情報を読み取る。
名前 ジン
武器 片手剣→大刀
所属 なし
ステータス 魔法 A 甲斐性 A 体力 A 頭脳 C 特殊 A
パートナー アザゼル マリン メロ モルテ
種族 人
追記 最高の血統
親愛度 アザゼル 15 マリン 20 メロ 5 モルテ 7
心武器 『忘却』『結合』『炸裂』『予測』
相変わらずの高ステータスお化けめ。ここらで俺が勝つ手段を見つけなくてはジリ貧だ。幸い、仲が悪すぎて覚醒まで至っていないのが幸いだが。
「何、弱音を吐きそうになってんだ。勝つ! 勝って、リリムさんを助ける! それだけ考えろ!」
余計な事を考えていればそれだけ負ける可能性が高くなる。ここで俺が負ければ、こいつは他のやつを殺しに行くだろう。
「待たせて悪いな。続きを始めようか」
「いいとも。君が頑張れば頑張るほど、世界崩壊までの世界の皆の記憶に僕が残るからね」
金属音が再び鳴り響き、火蓋が切られた。
*
「………何ということだわ。貴方、本当に人間なの?」
「色々入り混じってるらしいけど人間よ! 最高の雑種に翻弄される気分はどうかしら!」
「最悪なのだわ!」
一般人が迷い込めばめまいを起こすほどの過剰な魔力。それらは全て、この2人から漏れ出した余剰魔力である。
ほぼ無尽蔵とも言える魔力から高威力の魔法を撃ち続けるロゼに対し、マリンは低威力の魔法を駆使して魔力消費を抑えているのだが魔力の回復力が違いすぎて、それでもジリ貧となって来ている。
「けど、貴方にこれはやれるのかしら!"蹂躙せよ、死者の軍団!」
魔力によって偽りの命を与えられた死んだ連合軍の兵士達が地上から魔法や弓矢を射る。巨大な壁を思わせるそれらに対して、ロゼは魔力を形にする。
「"空間掌握 斬月"」
瞬間、空間がズレる。
まるで割れた鏡のように、何もない空間に無数の一線が引かれ、その線を起点に隣り合う空間が僅かにずれているのだ。
そして、その空間の亀裂に重なっていた弓や魔法は、一瞬の硬直の後、空間ごと切断されて地へと落ちていった。
「"天からの賞賛"」
次にロゼによって唱えられた魔法は曇天の空から、光を差し込み、それに当たった人間達から偽りの命が抜けて行く。
「なんという技量………こうも魔法の固有属性を自在に操りますか!」
あまりの異質さに戦慄を覚えるマリンは自身が操れる7属性だけに劣等感を抱く。
「………もしかしてだけど、貴方は魔法家の」
「知っていましたのね? そうです。貴方の言う通り、私が魔法を得意とする家系の1人ですわ! 」
感情の高ぶりに暴走しかけた魔力をそのまま砲として解き放てば、ロゼは指先を軽く振るだけでそれをいなす。
「"ウィッチクラフト"魔導の天才とも言える魔法家で数々の魔法を作り出したって昔、本で読んだことがある。だけど、魔導の血を濃くするために近親婚を行い続けたせいで衰退したって」
「その通りですわ! 私はそれを打開するために生まれた調整個体! 魔道の禁忌を犯しながらも最高傑作! 私を介して生まれる子は魔導の王になるほどの!」
怒りを具現化したような火炎が横殴りに空を走り抜け、射線上にあったロゼが焼き払われる。
炎の壁、とでもいうべきそれはひた走った進路にあった体を足下から頭の先まで一瞬で焼き尽くし、塵にする。
「私には家の存続がかかっていたの! だから、私は頑張ったわ! いくつもの画期的な魔力運用を始め、魔法の創造! 私の評価は国中に知れ渡ったはずだったわ!」
「ええ、そうね。だけどある日からめっきり話を聞かなくなったわ」
体に纏わり付いた炎を消し去り、軽い火傷は軽く冷やす。それを見て、血が滲むほど唇を噛み締めつつも雪を強制的にロゼへ向ける。
「ええ! 貴方が九属性使えるという噂が国中に流れたせいだわ! しかも子爵であった私とは違い、公爵家だった貴方へ有力貴族は流れていったのだわ! 」
両手を合わせた風圧だけで雪のカケラを溶かし、蛍火のような光をマリンへと掌から飛ばす。
「だから私は婚約者としてマコト君を選んだのよ? そしたら、いくら貴族達も諦めて貴方をえらぶはずでしょ!」
「誰でもいいわけがないのだわ! この身に余る魔の才能を受け継がせなきゃいけないのが私の役目なの!」
「私が言えたことじゃないけどえり好みできる立場じゃないでしょ!」
一瞬にして全てを爆発させ、マリンの指の先端に集中した魔力が風へと変わる。吹き抜けた風は刃となるも、ロゼの体を覆う白の光はそれを通さない。
「えり好みしたいわけじゃないのだわ! 私だって、一度は結婚もした! 可愛い子供も生まれたのだわ!」
「なら何で世界を壊そうとするの! アンタの子供の未来も奪うことになるのよ!」
「ーーもう死んだ! 息子はもうどこにもいない!」
「しまっーー!」
闇が付与された水のレーザーにロゼは一手、見誤り、押され始める。
自分には体力がない。そのために攻撃を食らったら一撃で落ちる自信があるほどだ。だからこそ、ここからは防御に徹する。
「私の息子は夫の愛人に殺されたのだわ! 侯爵の愛人からすれば子爵の私の血が穢れていると認識したのだわ!」
悲痛な思いに共鳴するような黒い極光が天を走る。ロゼはそれの反対属性で相殺しつつ、合間合間に飛んでくる氷雪の砲撃を空を焦がすほどの熱量で防ぐ。
「私は幾ら傷つこうとも子供さえ私に譲り渡してくれたなら、その女を許すつもりだったわ! だけど! よりによって、私の子供を殺し、私には劇薬を呑ませた!」
地上から登り龍のごと大地がくり抜かれた柱がロゼを打ち上げようとする。ロゼは真っ正面からそれら全てに氷の塊をぶつけ、重力に従って落下させる。
「そのせいでもう私は子供を作れなくなった! 夫は愛人とくっつき、私は家から除籍処分! もう2度と家の名前は名乗れず、後に託す子供も作れず、私の未来は閉ざされたわ!」
ロゼの防壁を7色の光が貫いた。ロゼも同じく、7色の魔力で拮抗するが感情がこもった魔法に撃ち負け、吹き飛ぶ。
何とか空中で態勢を立て直し、マリンへ向けて攻撃用の魔力を高めるが、それは彼女の天地を震わすほどの詠唱に中断される。
「揺れる世界の理よ、空は嘆き、地は呻き、海は怒る。鳴動を喚び 悲鳴を齎すは ただ神の溜息。喰らうがいい! 神の鉄槌を!」
ロゼの脳内にも存在しない魔法詠唱。だが込められた魔力からするに間違いなく、彼女の切り札。
「最大防御魔法陣! "絶界"!」
警戒心を強め、すぐさま防御体制を整えた。おそらく放たれる魔法は範囲が広すぎて回避は既に不可能なのだ。そして、並みの防御では、この魔法には一瞬も耐えられない。
「"冥道富嶽"!!」
彼女の声に応えた魔力が空間を破裂させる。凄絶な衝撃が、地上の連合軍すら一瞬で粉微塵に砕いて、大地を抉り飛ばし、天空の雪雲すら吹き飛ばした。
「な、何とか耐えたわ………」
だがその中心にいたロゼは惨状に慄きながらも無事だったことに安堵する。
彼女が使った絶界は文字通り世界から一瞬、自分の肉体を半ば違う位相の空間にずらすという魔法だ。
これにより、元の空間からの干渉を一切受けなくなる。ある意味、絶対防御となる魔法だ。
無論、繊細な魔力操作と膨大な魔力がなければ運用など不可能で現に半分以上の魔力を持って行かれたロゼの顔色は悪い。
本人もここまで魔法で食らいついてくる相手と戦ったことがないのも原因だろう。故にその後の展開もその経験が運命を分けた。
「貴方なら耐えると分かっていたのだわ!」
そこへ飛来したのはマリン。咄嗟に魔法を解除し、重力に従って落ちることで初撃は避けたものの
「"略 冥道富嶽"!」
先程の魔法の縮小バージョンがロゼへと襲いかかる。絶界を発動出来る時間もなく、ロゼは結界を張るが容易く破壊され、ロゼの体を衝撃が蝕む。
そのまま重力に従って、落ちた彼女は大地に叩きつけられ、身動き1つ取れない。
「私の勝ちだわ! これで私の目的は達成したのだわ! 後は世界が壊れるのを待つだけだわ! 私たちから未来を奪った世界など壊れればいいのだわ!」
勝鬨をあげるマリンは勝利を確信し歓喜で満ちた眼差しをロゼに向ける。
しかし、ロゼの表情を見た瞬間、マリンの背筋を言い知れぬ怖気が駆け巡り、その眼差しに宿す色は歓喜から恐怖に変わった。
何故なら、彼女の目から光は消えていなかったからだ。
「告げる………これは………にあらず、邪悪なるものも………善なるものも………である。故に憎むべきは………であり、その咎は………女神の涙に………浄化される」
小さな声でもその詠唱は魔力を形にし、ロゼが唱える最高の魔法が作り出されていく。
すぐさまマリンの口から冥道富嶽の詠唱が唱えられるがそれより早く、彼女の空間を空から地まで魔法陣で覆われた。
「なぜ、そこまでやるのだわ!? 」
「友達を………守るため」
もはや一歩も歩けない。だから全魔力を込めても問題はない。どうせ動けなくなるのだから。
「馬鹿なのだわ! 仮に貴方達が勝ってもどうせ貴方も戦争が終わったら、用済みだわ! 魔族の姫様に婚約者を取られて、それでおしまい。そんなやつを助ける義理もないのだわ!」
「そんなことない。だって私はリリムの友達だから。友達を助けるのは当たり前のことでしょ?」
きっと戦争が終わって事後処理になれば、王家の血を継ぐ彼女の家系はまた爵位を取られるだろう。そしたら、人族と魔族を繋ぐ架け橋としてマコトとリリムが選ばれる筈。
だからどうした? 愛だ恋だの私情を挟んで友達を見殺しにしたのなら、ロゼはきっと後悔する。
初めて出来た友達だし、トライアルでもまだ勝ち越ししていない。だから、私はリリムを助けなくちゃいけない。
「だから………貴方を倒して、マコト君がジンに勝つ手助けをする………それが私に出来る唯一のことだから!」
これが最後、彼女の中の全魔力をこの魔法に込めれば感情の昂りに魔法は応え、魔法陣が起動する。
使用属性は全属性、ロゼ・イノセンティアが誇る最強の魔法。
「何をするか知らないけど! 先程の魔法使わせてもらうのだわ! 絶界!」
だがマリンも天才。ロゼの魔法を瞬時に見抜き、同じ魔法を再現する。これでは彼女の魔法は当てられない。
「馬鹿ね………私がそれを考えてなかったと思う? これは私が対魔法使いのために用意した魔法よ!"崩魔!」
相手の魔法を逸らすために使う魔力操作を相手の体に使えば相手の魔力の循環は乱れ、魔法が維持できなくなる。
しかし、その時間は2秒。だが緻密な絶界を壊し、自分の最大魔法を当てるには十分すぎる時間だ。
「ここまで、私を超えてくるというの!?」
絶界を維持できなくなり、世界の間に落ちる前にこちらへと帰って来たマリンへロゼは詠唱を唱えきる。
「女神の涙は無罪の証!」
それは空からの落涙のように空と大地を繋ぐ光。神の剣の如き光の柱がマリンを貫き、旭光はより輝きを増していく。
「なんですの、これ!? 」
その魔法を受けながら、マリンは異常に気づいた。自分の体に傷がない。いや、傷つくことがない。だが代わりに体の魔力が消費されていく。
「まさかこれは魔力消失魔法!?」
ロゼが唱えた最後の魔法は相手を傷つけることなく、相手から魔力を消し飛ばす。いくら身体能力に優れようと魔力がなくなれば身動き1つ取れなくなる。
光が消えれば魔力を消失したマリンは地面に落ちる。ロゼは残された僅かな風の魔力で彼女の落下速度を和らげた。
「雑種風情に最高傑作が負けるというの………?」
「確かに私は貴方のような調整は受けてないし、理論や知識は絶対に負けるわ」
悔しそうに呻くマリンにロゼは自らに誓いを立てるように勝利宣言をする。
「だけどーー彼の前では私は最高の魔法使いでいたいのよ」
*
「ロゼちゃん!」
そこへ風を起こすほどの早さで来たのはクレア。メロの遺体を傷つけないように空間に安置し、帰ってくれば天まで登る光を見て急いで駆けつけたのだ。
「しっかりしなさい! 意識を強く持って!」
「………分かってるわよ、クレアさん。私が意識を失ったら、マコト君が危ない」
今にも消失しそうな意識を手繰り寄せ、何とか気張る。気絶して、マコトとの契約が切れてしまえばジンに勝てる可能性がゼロになるからだ。
「貴方は………ジンのパートナーね? 」
「殺すなら殺すといいのだわ。既にジンとの契約を維持する魔力さえも残っていないのだから」
クレアは畝る炎を右腕に宿すがそれをロゼは止める。
「クレアさん、少し待って欲しいの。少なくとも戦争が終わるまで………駄目かな?」
ロゼが嘆願するように目を向ければクレアは少し、考えて腕の炎を消した。
「………はあ、空間に放り込んでおくわ。ロゼちゃんもひとまず城で治療を受けて来なさい」
頑固な彼女にクレアが折れて、何処からか取り出した縄を使って、マリンを縛り上げる。
「ねえ、なぜ助けるの? 私にはそれほど価値がないわよ?」
クレアが来た時点でてっきり殺されるものだと思っていたマリンは逆に困惑する。それを見て、ロゼはちょっと嫌らしい笑みを浮かべた。
「勿論、条件があるの。私にウィッチクラフト家の魔の真髄を教えてもらいたいのよ」
「………貴方馬鹿なのだわ。倒したかった敵を育てる奴が何処にいるのだわ?」
「手伝ってくれればマコト君の力によってきっと貴方の体も治るわ。それでどう?」
ロゼはこの戦いの勝者を決して疑わない。勝つのはマコトでこの先もずっと世界は続いていくと信じている。
その妄想じみた信頼にマリンは毒気が抜けたように疲れた溜息を吐く。
「貴方のパートナーが勝ったら教えてあげるのだわ」
「勝つわよ、絶対に」
マリンの皮肉にロゼは強い信頼を寄せた表情でそう言うのだった。
次回は火曜の18時辺りになります




