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嫌な知らせ

人通りの多い道を二人で歩いていると何回かはぐれそうになってしまう。

それもそのはず、恋人同士だったり兄弟だったら手を繋いで行ったり出来るのだが、少なくともギコラスとは絶対に手を繋ぎたくないし、むしろ気持ち悪い。

だからこそ、はぐれてしまうのは仕方がのない事だと思う。

それに、はぐれたのは僕ではなくギコラスだ。

そう……現に今、僕は一人でどこか知らない場所に立っていた。

周りにはレンガでできたたくさんの家と、ところどころにある小さな木と花壇に咲いている花だけだ。

人も何分かここを通る程度で、決して人通りが多いわけではない。

探そうと思えば探せるのだが、面倒くさいし、歩き疲れてしまったし、なにより久々の一人の時間だもう少しのんびりしていたい。

ため息をついて、近くのベンチに腰を下ろす。

空は青々としていて、日差しがとても暖かい。

うとうとし始めた僕はそのまま寝てしまおうと思ったのだが、邪魔がはいってしまい気持ち良いこの状態で寝ることが出来なくなってしまった。


「あ……ジェラルドさん!!」


よりによって嫌な人にあってしまった。

僕は目を背け他人のふりをしたが、彼にはそれが通じないのか笑顔のままニコニコと近づいてきて、隣に座った。

外出する際も、ワイシャツに黒いベストを着ているようだ。


「ギコラスさんはどうしたんですか?」


「……どっかに行ったよ」


隣で弾丸か何かのように一気に話しかけてくるが、僕が返事をする前には次の話題に移っていて返事をするまでもない。

彼の言葉はすでに耳に入ってはおらず、飽き飽きしていた僕は、もはや違うところに意識が向いていた。

それは一瞬の事だった。

僕の視線のさきの路地裏で、わざと僕の目に入るように、白い光を浴びると綺麗に光る羽がひらりと一枚落ちたのだ。


「ごめん。

急用が出来た」


「え?ちょっ……」


タルコットの呼びかけを無視し、僕はマントをなびかせながら路地裏へと走った。

裏に入るとまるで僕を誘っていたかのように、一人の青年が立っていた。

顔の周りが青く、顔は真っ白な毛色をしていて、首には赤い首輪に金色に輝く鈴をつけ、麻布のマントを羽織っている。

その姿に僕は見覚えがある。


「や、久しぶりにょら」


「……相変わらず変な語尾をつけてるんだね」


「これは、ポリシーなのにょら。

ほっといてほしいにょら」


そういうと、頬を軽く膨らませたがその行為が許されるのは若さゆえだからだろう。

目の前の青年、シモンは怒ったような表情から一変少し真面目な顔になった。

しかし、可愛いに近い顔つきからは真剣そうな感じは見受けられないが。


「そうじゃなくて、ジェラルドに言わなきゃいけないことがあったにょら……」


言い切る前に俯くとどこか言いにくそうにキョロキョロと目を動かして困った素振りを見せた。

その煮えきらない態度にイライラしてきた僕はため息をついて、シモンから目を背けた。


「わざわざココに来たってことはそれなりの事でしょ。

なに?」


「……もし天界(こっち)に来る機会があったのなら、その時は迷わず僕ら全員を殺す覚悟で来てほしいにょら」


「は?」


僕は怪訝な表情を露骨に浮かべてシモンを見た。

シモンは、僕に背中を向けてうっすらと光る真っ白な羽根を広げる、飛ぶ体制に入る。


「それは、必ず守ってほしいにょら」


「ちょっと、待ってよ」


全く理解の出来ていない僕を無視して、シモンは地面を蹴りあげると真っ青な空に一瞬で消えて行った。

空から一枚だけ落ちてきた羽を掴んだ瞬間、ドロリと溶けて、僕の手の中から消えてなくなった。


「意味がわからないよ」


彼らを殺す覚悟?

つまり僕は殺される覚悟で行くということか?

いや、殺される理由がわからない。

それとも、彼らの気でも触れたのか?

考えても考えても答えは出ず、気がつけば頭の上の屋根からカラスの声が聞こえた。

一度思考を停止して、空を見上げると空はすっかりオレンジ色に染まってしまっていた。

ギコラスの事をふいに思い出した僕は、その事を考えながら足を踏み出した。

しばらく、ギコラスを思い描きながら歩いていると情けない姿の彼を見つけた。

道のはじにうずくまり、顔を青ざめて小さく震えている。

通りすがる人たちは、その姿に心配そうな、気味悪そうな視線を送りつつも、関わりたくないのか早足に彼の横を去っていく。

正直これは、僕も他人の振りをしたい。

いや、ほんとに。

ギコラスの前まで近づくと、ギコラスは青ざめた顔を僕に向け息を切らしながらつぶやいた。


「腹が……腹がいてぇ…」


「……」


僕は何も言わずその場を去ろうと踵を返したが、マントを羽織っていたのがいけなかった。

彼はマントの裾を力強く掴み僕の動きを止めた。


「……わかった。

わかったから、離して。

首がしまる」


そういうと、彼はうめき声を少しあげながら手をおろした。

しかたがなく、彼を担いでどこか近くの家でトイレを借りるためにぼくはその場をフラフラと歩いた。

それにしても、重い。

僕よりも細い体型のくせに、筋肉が多めについていて重い。

やっぱり、その場に捨てていってはダメだろうか。




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