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ハーレム王に俺はなるっ!

一面真っ白な世界。


あぁ、俺死んだんだ。


何故か現状を素直に受け入れることが出来た。


だってそうだろ?俺の最後の記憶は迫りくるアスファルト。


あの時俺は……。



「危ないっ!」


そう言って少女に飛びつく俺。


その少女が目に入ったのは偶然だった。


気まぐれで登ってみた建物の屋上。以前よく来ていたので馴染みはあるが、その日、その時間に行ったのは、本当にたまたまで、あの時階段に目を向けず、左へ移動していたら、運命は変わっていたのかもしれない。


とにかく、俺は気紛れで登った屋上で、落下防止のフェンスに寄り掛かろうとしていた少女の姿を、偶然目にする。


そして俺はたまたま知っていた。そのフェンスが壊れていて、体重をかけようものなら、そのまま落下するであろうことを。


だから俺はとっさに飛びついた。


なにか考えていたわけではない。


その時の状況を一言で表すなら「反射」だ。


危険から女の子を助ける……その思考が反射的に身体を動かした……のだと思う。


 「キャッ、いやァァァ!」


しかし、少女は飛びついてきた俺を、痴漢か何かと勘違いしたらしく、悲鳴をあげて躱す。


ウン、その行動は間違いじゃない。誰だって、見知らぬ男が飛び掛かってくれば逃げようとするよね?


だから避けたことについて、文句をいう気はない。


ただ、結果として、避けられた俺の身体が、壊れかけのフェンスにぶつかり、そのまま落下した。それだけのことだ。



「あ~、じゃぁここが死後の世界?なんにも無いんだな。」


「ぶっぶー。違いますぅ。ココは魂の一時的保管場所ですぅ。」


誰も居ないはずの場所で、俺の独り言に応える声が聞こえる。


「誰だっ!」


「私だっ!」


「……。」


「……。」


二人の間に沈黙が降りる……。ってか、今のにどう反応しろと?


眼の前に突然現れた少女は、小柄な身体を覆う、フワッとしたドレスを身に纏っている。


腰まであるゆるふわウェーブの金色の髪。クリっとした瞳に、小さな唇。それらの各パーツが、見事なまでに「美少女」を形作っている。


可愛らしくも、どこか神秘的なオーラをまとう少女と見つめ合う俺。


しかし、二人の間には、なんとも言えない気まずい空気が漂っている。


その沈黙を先に破ったのは少女の方だった。


「……コホン。あー、伊藤颯真さん29才童貞で間違いないですね?」


「違っ……。」


思わず反射的に否定するが……。


「違うの?伊藤さんですよね?」


「ハイ……。」


「名前は颯真さんで合ってる?」


「……ハイ。」


「29歳ですよね?」


「……………ハイ。」


「で、童貞。」


「………。」


「童貞ですよね?」


「………………………ハイ。」


「最初から、素直にそう言えよ。これだから童貞は。」


……オイ、今この人、全国何万人もいる(と思う)DTさんたちを敵に回しましたよ。


「えーと、颯真さん。あなたには黙秘する権利があります。」


「何でいきなりミランダ警告っ!」


「…………間違えました。2つの選択権があります。」


「落差激しいな。それでその2つって?」


「1つ目は、このまま戻ること。」


「戻るって……俺死んだんじゃ無かったのか?」


「まだ死んでませんよ。今すぐ戻れば命だけは助かります。」


「命だけって……?」


「えぇ。落下事故による後遺症で半身不随……つまり一生童貞が決定しますね。」


「言い方っ!」


「それから婦女暴行未遂で訴えられますので、その後どのような結果になろうとも、社会復帰は難しいでしょう。」


「何、その罰ゲームっ!却下だ!その選択肢は無い。」


「じゃぁ、もう一つの選択ということでよろしいですね。」


「待った。一応もう一つの内容を聞かせてくれ。」


無いとは思うが、もう一つの選択のほうがもっと酷いということもある。俺は慎重に事を運ぶ質なのだよ。


「ウザっ。」


「何か言ったか?」


「イエイエ。もう一つの選択肢は、別の世界で人生をやり直す事です。」


異世界転生キターーー!


「それで!」


「分かりました。では素晴らしきミジンコ人生を……。」


「チョット待てぃっ!」


「何か?」


「ミジンコ人生って何だよっ!大体ミジンコだと()()とは言わないだろうがっ!」


「男のくせに細かいですねぇ。これだから童貞は……。」


「童貞関係ねぇっ!ちゃんと人間としてやり直させろよ。」


「えー、面倒。」


「面倒言うなっ!」


「ハイハイ。んーと、これでいいか。じゃぁサイコロ振って。」


「は?サイコロ?」


俺は手渡されたサイコロを見る。普通のサイコロと違って、0から9の数字がある……10面ダイスと言うやつだ。それが2つある。


「いいから早く振りなさい!」


その声に促され、俺は反射的に2つのダイスを転がす。


出た目は0が2つ。


「ほわぁ……、珍しい。けどまた面倒な……。」


「な、なぁ、どういう意味だよ。」


少女の不穏当な言葉に不安を覚えた俺は、このダイスの目が意味するところを聞いてみる。


「コレは運命のダイス。出た目によって、あなたの運命の方向性を決めるの。」


「運命って…………。ところでこの目は良いんだよな?」


0のゾロ目って普通に考えて、普通じゃ無いよな。


何を言っているか解らないだろうが安心してほしい。俺にもわからないから。


「運命の内容を教えるわけ無いでしょ。それよりあなたは特典を選ぶことができるの。何がいい?」


「金持ちでハーレムを作る!」


特典と言われて、間髪入れずにそう答える。


異世界って言ったら、チート能力で、俺THUeeeeしてハーレムでウマウマっていうのが定番だよな。


「そういうのは自分で何とかしてください。ここで選ぶのは能力的なものです。」


蔑む様な目で、少女は、俺を見ながらそういう。


「能力か……。」


これはチート能力がもらえるってやつだな。だとすると、『鑑定』『無限収納』『空間転移』の三種の神器に『スキルメーカー』とか『スキル奪取』といったスキルを自在に操れる能力あたりか……。


あっ、無限の魔力とか全属性持ちといった、魔法関連も必要だよな。


「……一応言っておきますが、選べるのは一つだけですよ?」


「……そうなのか?」


「当たり前ですぅ。神の如き凄まじい力に矮小な人の器が耐えられる筈がないでしょ?常識で考えなさい。」


……転生だとかチート能力だとか、すでに非常識なんですが?


俺のその言葉が形になることはなかった。何故なら、業を煮やした少女がカウントダウンを始めて急かすのだから。


時間内に決めないと、勝手に選ぶと言われれば焦りもする。


結局、時間ギリギリで何とか答えたのだが、その直後に、俺は放り出され、気付けば、見知らぬ森の中で佇んでいた。


こうして、俺の異世界生活はスタートしたのだった。

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