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7/12

初雪 寒い時には・・・

「先輩、中村先輩?」

私は空き教室を開けて探しているその人を呼ぶ。

「全くどこで練習しているんだろう?」

普段なら、いると思う所は全部探しているのに今日に限ってどこにもいない。

今日は学校主催のクリスマスパーティー前の貴重な練習日。

なのに、部長であり彼氏でもある先輩は…どこにもいない。

最初は個人練習で、時間を決めてパート練習って言っていたのに、

当の本人が戻ってこないので、他の先輩達の期限が悪いので私は許可を貰って

校内を走って探している。

天皇誕生日で祝日な今日に校内にいるのは、私達吹奏楽部しかいない。



「もう一度、携帯かけてみようかな?」

私は携帯を取り出して、一番良く描ける番号を押す。先輩の電話。

通じたら…私の方が年下だけども怒らないといけないよね?

「もしもし?美紀か。まだ行かないよ。それより俺を見つけて?」

「行かないよ…じゃありません。雅人さん。先輩達が怒ってます」

「今になって焦ったって遅いの。明日は楽しもうよ…美紀が見つけないと

俺…戻らないよ…じゃね」

一方的に切れた通話。これは…副部長に支持を仰ごう。

しかたないので、副部長の携帯に連絡をいれる。

「…だと思った。中村君らしいけど、とりあえず練習しとくから美紀は…

あのへそ曲がりを探して貰っていい?怒られないようにするからね」

「すみません。彼はどこにいるんでしょう?」

「もしかしたら…屋上かもね。中村君はトランペットだから外にいるかもよ」

「ありがとうございます」

私はまずは屋上に向かって走り出した。

外はいつ雪が降り出してもおかしくないって位にどんよりしていて寒い。

こんな時に外で練習するだなんて…雅人さんどうしたんだろう?



ギィッ。鈍い音を立てて扉を開けて屋上に出る。いたよ。探していた当人が。

なんて文句を言ってやろうか…そのことをひたすら考える。

「雅人さん、部長でしょう?」

「大丈夫、うちの副部長は優秀だから。お前も良く知ってるだろう?」

「…従姉妹ですから。知ってますよ。だからって丸投げしないで下さい。」

「まぁ、とにかく…上を見てみろよ」

彼に促されて私は上を見上げた。空から細かいものがゆったりと下りてくる。

「あっ…雪…」

「そうさ、前日にギリギリ練習したって無駄さ。今まで練習したんだから

今は俺と雪を見ようぜ」

彼は言い出したら聞かないから…諦めるしかないだろうな。

「はい…分かりました」

私は諦めて彼に寄りそう。



「美紀の定位置はそこじゃないだろう?」

雅人さんはそう言うと雅人さんの前に立たせて後ろから抱き締めた。

「恥ずかしいってば」

「俺が美紀不足だから…補充すんの。お前暖かいなぁ」

そう言うと雅人さんは私の肩に腕を回して包み込む。

「私は…カイロですか?そうですか?」

面白くない私は悪態をつくことにしてみた。

どうせ、雅人さんにからかわれていじられるだけ。

それでもやってみたいと思うのは…私が幼いからなんだろうな。

「美紀…大きくなったな」

「どこが?背ですか?それともどこですか?」

「全部…かな。俺といることで急に大人になった気がしたぞ」

「それは…雅人さんがしっかりしないからでしょ?」

「そうとも言うがな。でも…ここはこれからの成長に期待するか」

雅人さんはそういうと私の胸のあたりに手を伸ばした。

「ダメ…そういうのは」

「分かってるよ。そういうことを早くに経験すると子宮がんに

かかりやすいんだって。俺はそんなの嫌だからな」

雅人さんは私の知らない事を何でも教えてくれる。

本当に私が横にいていいのかな?こういう時に不安になる。



「お前、またそばにいていいの?って考えたろ」

「う…ん」

「俺…ロリコンじゃないけど…お前は好きだ。ずっと側にいたい」

雅人さんが耳元で囁く。その囁きを聞いて私は耳が真っ赤になる。

「この耳が赤くならなくなるのに後何年かかるかな?」

「…知りません」

私達の学校は付属中と高校の併設校。私と雅人さんは去年の春に

一緒に入学した。一つだけ違うのが、私が中学で彼は高校。

偶然入部した吹奏楽部で知り合った。最初は中学の同期や先輩も

いたけど…今中学生は私しかいない。

入部していろんなことがあった。どんなに頑張っても末っ子だから

どこにいてもいじられて…八つ当たりされて。

技術がない分はその分必死に練習した。

そのおかげでソロコンクールで入賞できるようになった。

部の先輩方には感謝している。



雅人さんから去年のクリスマスコンサートの後の告白されて明日で1年。

雅人さんの方が大人だから喧嘩することはほとんどない。

たまに校舎で会うと、これでもかって位に頭をぐしゃぐしゃとなでて

くるのはもうそろそろ卒業したいなぁって思っている。

雅人さんと付き合いだして、もっと頑張っている。私が手を抜いたら

雅人さんに迷惑がかかるかもしれない。

そんな私を雅人さんはすぐ窘める。-美紀のままでいいのに-と。



「くしゅん」

私はつい小さなくしゃみをした。

「冷えたな。じゃあ…そろそろ帰ろうか?」

私はつい雅人さんの手をぎゅっと握ってしまった。

あの険悪一歩手前の教室に戻りたくない。

「お前の言いたいことは分かる。美紀が頑張れるおまじない」

「おまじない?」

私はよく分からなくて、首をかしげる。

「とにかくこっち向け。それから目を閉じろ」

彼に言われるままに言うとおりにする。

この展開は…漫画やドラマで見られる…アレなんだろうか?

アレはヒロインとかヒーローなら成立するけど…。

私は町娘とかその他大勢なのに…少し戸惑う。

「俺にとっての可愛いお姫様。大好きだよ」

雅人さんはそう言うと柔らかな唇が私の唇に当たった。

それにしても…お姫様か。悪い気はしないけど…照れるから目を閉じろって

言ったんだろうな。全くこの人には敵わない。

「いつかは迎えに来て下さいね。私の王子様」

私は雅人さんの胸に顔を埋めて呟いた。私も顔を見ては言えない。

似た者夫婦って言うんだっけ?こういうの?



空からは粉雪が私達をそっと優しくデコレーションしていく。

こんな寒い日には暖かい温もりが恋しくなる。

本当に大好きなんですよ…雅人さん。

でも…練習がきついんだろうな…ハァ…。

私は小さく溜め息をつくのだった。

初雪の降る中でのキスです。

このキスがファーストキスかどうかはご想像に任せます。


そろそろネタが切れてしまいそうです。

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