伝説のバカップル ~哲&真美~
あの二人の卒業式の模様です。
普通に終わるわけがありません。
今日は私の卒業式だ。地元の国立大学の教育学部に合格した私は
4月からは大学生になる。
それから…愛する人と家族公認で一緒に暮らすことになっている。
それも私の自宅で。正しくは父が転勤で北の大地に赴任するのに
母が着いていくという話。
姉は先月長男を出産したが、そんな事情の為里帰りしていない。
姉自身も…隣の町に住んでいて歩けば10分位しか離れていない。
「真美…本当に同棲するんだ」
「うーん、親公認だし、水曜日と土曜日は哲の家でご飯食べる約束
になってるからね」
「籍は?どうするの?」
「事実婚を先にして…哲の卒業を待ってからしようと思ってる」
去年の文化祭で学習したことから両家でちゃんと話し合って決めた。
去年の文化祭が新婚さんカフェで本当に助かったよ。
「それよりも…歩美はもう籍を入れたんでしょ?」
「うん…先に…ごめんね」
歩美は申し訳なさそうに私を見る。まだ私しか知らないけど
歩美のお腹には彼氏である担任との愛の結晶が芽生えている。
「平気だけども、学校はどうするの?」
「彼と相談してて、前期は単位を履修して後期は休学する予定」
現在妊娠初期の彼女予定日は11月の末になるらしい。
「それで…いいの?」
「うん。子育てしながら教職に就きたいから、臨時採用で十分」
「折角4年一緒に行けると思ったのにな」
「ごめんね。どうやら哲君と一緒になりそうだよ」
歩美はへへっと笑った。全く…何を考えているんだか。
それよりも彼女の彼氏は…担任の体育教師。現役体育教師が
家族計画を失敗するってどういうことよ?
もしくは…計画的犯行だったりする?分からないなぁ。
「良く…歩美の両親が卒業前に入籍を認めたね」
「まぁ…いろいろね。父親が法律に詳しいって都合がいいね」
そう、歩美のお父さんは弁護士事務所を開いている。
ダンディな素敵なおじ様なんだけどね。
「竜也は?佳代先生とどうなったの?」
「佳代先生がこっちの採用になったから千葉大だよ」
「佳代先生の方も親御さんを説得したみたいよ」
「そうなんだ。遠距離恋愛じゃなくて良かったね」
「知らなかった?竜也、佳代先生の地元の宮城の大学を
受けようとしていたの」
私達は目線を斜め前の幼馴染の竜也の方を見る。
「竜也は一直線だからね」
「良くも悪くも…ね。佳代先生の手綱捌きはすごいよ」
盲目的に彼女を愛している竜也。独占欲は皆無と思っていたけど、
現実はその逆だったので私達は驚いたものだ。
卒業式は淡々と続いている。そろそろおしゃべりを止めないと
いけない。私は総代で卒業証書を受け取るのだ。
面倒くさいのやりたくないんだけども、そうもいかないのが卒業式の
学生の事情。更に答辞までやらされる羽目に。
本当は鳥飼君がやるはずだったのに、後期試験前で欠席が確定して
急遽私がやることに。どんどん気分が沈んでいく。
そんな中、私の名前が呼ばれた。返事をしてリハーサル通りの行動をする。
卒業証書を受領した私はステージから全体を見ておじぎをした。
保護者席の最後列のはじに彼がいることに気がついた。
両親は引き継ぎがあるからと言ってもう赴任先にいる。
誰も出席しないと思ったからすごく嬉しかった。
無事に答辞を終えて、淡々と式は進んでいく。
ようやく式が終了した。気分は晴れやかなものだ。
気ごころのしれた幼馴染との3年間。今後も同じ大学だけども道はきちんと
分岐している。各自の夢に合わせた道に。
大好きだった片思いの幼馴染としての歩みと彼氏として寄り添った時間が
私を更に強くしてくれた事を私は実感している。
初恋が最後の恋になることは後悔していない。彼に恋していた時よりも
今の方が彼のことを思っている。
-卒業生退場-
進行役の先生の号令で1組である私達は立ちあがった。
歩美の目は涙で潤んでいる。そりゃそうだよね。この1カ月で劇的に変わったんだもの。
周囲はどうなのかと思ったら…皆は目元は潤んでいるけど泣いている子はいなかった。
そうだよね。クラスの半分は同じ大学に残りは自宅からの通学圏内に集中してる。
3年間の結束は今後も続く事が分かっているからだ。
私達の列が少しずつ前に進む。私もゆっくりと歩み始めた。
通路を歩き進めると、他のクラスの状況が見える。他のクラスではちらほらと鼻を
すする音がしている。晴れやかな顔が多いのは1組だけかぁとのんびり考えた。
会場である体育館を出る。そこには両手を広げた彼が待っていた。
「真美…おいで」
「哲、ありがとう」
私は重力に逆らわないで彼の胸に飛び込んだ。
「おめでとう。お前らしい立派な答辞だったぜ」
「ありがとう。諒くんの送辞も良かったわ」
皆は呆れかえっているだろう。式が終わってすぐに抱きあっているんだから。
気がつくと私達は、1組の皆に囲まれていた。
「なぁ、折角だから誓いのキスでもしといたら?」
「俺ら証人になってやるよ」
歩美と竜也がそれぞれ言う。それってどんな罰ゲームよ。
「どうする?」
「結婚式の予行練習になるだろ」
哲はささやくと、私の唇に自分の唇を合わせた。
いつもよりは軽いキスをした後、二人で目を合わせた。
「私達…幸せにやっていくわ。皆…ありがとうね」
そして私達は微笑みあった。
「バカップルは最後まで健在だな」
「っていうか、いつ入籍だ?」
「本当は妊娠してたりして…」
クラスの皆は口々に言いたい放題言っていたけれども…
その中で歩美の顔が蒼褪めた事は言うまでもなく、
最後のホームルームで先生の口から、二人が入籍したこと・命を宿したことが
報告されたのだった。
私達の皆の前でしたキスはクラスの中ではお咎めなしで済んだけれども…
ホームルーム終了後に二人で校長室でお説教を受けたことは言うまでもない。
「全く…最後にお説教だなんて」
「まぁ…それもいい思い出と言うことで」
ようやく咲き出した梅の木を見ながら私と彼は歩いている。
今日で私達が制服を着て歩くのは最後だ。
「最後に写真撮ろうぜ」
「いいけれども…誰が撮るの?」
私はきょとんとして彼に聞いた。裏門の方からよく知っている人が
走ってくる。諒君だ。裏門前に住んでいる彼は着替えてやってきた。
「おめでとうございます。真美先輩」
「ありがとうね。今後の学校をりおちゃんに託すわね」
諒君の彼女のりおちゃんは私の後の生徒会長になる。
「ごめんね。私がりおちゃんを巻き込んだばかりに」
「いいんですよ。りおなりに楽しんでますよ」
「りおちゃんは?」
「生徒会室で原稿作ってますよ。きっと。お昼になるんで迎えに来たんです。
写真撮りますよ」
諒君はそう言って哲のデジカメと取りあげた。
「サンキュ…頼むな」
私と歩美の様に哲と諒君はずっと続いて行くんだろうなと二人のやり取りを
見て思う。
「じゃあ、取りますよ」
哲は私の腰を引きよせる。密着した写真を取られた。
「もう一枚撮りましょうか」
「あぁ、頼むな…真美こっち向けよ」
わざと私の耳元で囁く。耳は弱いの知っててやるんだから性質が悪い。
「愛してるよ…俺の奥さん」
「もう…バカ…」
哲が体を屈めて顔を近づけて来る。私はゆっくりと目を閉じた。
先生にバレたら…どうするつもりなんだろう?
哲と再び唇を合わせながら、シャッター音と聞くのだった。
体育館でのキスが私達のバカップル伝説として学校で語り継がれる事を
そのときはまだ知らなかった。
制服での最後のキス+誓いのキス…でした。
バカップルは最後までバカップルってことで。
先生…先生が子供作っちゃダメじゃない…。




