表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/22

第二十話  誰かの思い

 今日も記憶の図書館は営業中だ。シオンは仕事の合間に窓の外を眺めていた。追憶蝶アスターは今日は近くにおらず久々に一人で廊下を歩いていたのだ。

 真っ赤な紅葉が一枚落ちていく。風に押されてひらりと舞っている。その様子をシオンはじっと見ていた。


 静けさが妙に心地よい昼時、そう思っていたが長くは続かなかった。

 バタバタと足音が聞こえる。シオンはそちらに目線を向けた。金髪の使用人マリーが走っている。


「シオン様!!窓から離れて!!」


 金髪の使用人マリーが大声を出した。シオンは何事かとそちらに行こうとした次の瞬間だった。




 開いていなかったはずの窓は全開に開き、冷たい風がシオンを包み込む。舞う紅葉の中に人影が見えた。

 青目と紫色のオッドアイの瞳が飛び出そうなほど真ん丸で、金髪が揺れている。

 その男性はシオンの腕をとらえ、そのまま肩を捕まれた。

 間に合わなかったようだ。だが、男性から敵意のようなものを感じられない。


「……やっと見つけた。こんなところにいたんだ。」

 つかまれた腕は力強く、簡単には引き離せない。


「”やっと見つけた”?」


 マリーは間に合わなかったことへ、敵と自分に対して腹を立てているのか不満そうに男性の言葉を繰り返す。

 男性は、シオンの肩に手を添えながら言う。


「マジで大変だったんだ。こんなところにいるとは思わなかった。で、この前の話はどうなったんだ?」


 まるで、かなり前からの知り合いに話しかけるような口調でシオンに声をかけている。シオンは眉をひそめていた。


 もし仮にこの人が記憶を失う前の知り合いだったとするなら、今すぐ事情を話すべきだ。

 だが侵入者、あるいは自分を利用しようとする人物だったなら?


 シオンは迷った末、首を傾げた。どちらでも効く行動だ。

 その男性はシオンのしぐさを見て目をパチクリとまばたきをする。


「……え?忘れたの?」


 シオンはその目から視線を外さないまま言う。


「申し訳ありません。何のことでしょうか?」

「いや……人違いなわけがない。確かに姿はちと変わってるが……。」


 男性は指をさして震わせている。シオンはその指をじっと見るだけだ。そして男性は、困ったようにマリーを見て尋ねた。


「こいつ、記憶喪失か?」


 マリーはそれを聞いてピクリと眉をひそめるも、持ち武器である鎌を向けて尋ねた。小柄な彼女に似つかぬ禍々しい黒い鎌。その矛先が男性に向かっている。


「その質問に答える前に、名前と主様との関係、それからその話について白状して。じゃないと切りつけちゃうよ。」


 その言葉に男性は両手を挙げた。

「はいはい……言うからちょっとその武器をしまってくれるか?」

 マリーは横に振った。「だめ。」

 男性は深くため息をついてシオンから手を離し、後ずさった。罰が悪そうに頭を掻いたあと言う。


「俺の名前はリン。そいつとの関係はまぁ、昔のライバルって感じ。」


 リンは腰に手を当てて眉をひそめながら言う。


「んで、話は俺の組織にはいらないか?っておさそい。」


 マリーはそれでもまだ疑っているのか鎌の先を向けながら尋ねる。


「どうやってあのセキュリティを超えたの?その組織の名前は何?」

 質問をいくつか並べるも、リンは淡々と答える。


「え?あー、テレポートで超えた。あれ高度な魔法しか検知しないみたいだから。ごめん気配見つけたのがうれしすぎてつい……。」


「組織名はミツバ。よくあるギルドだよ。」


 あまりにもあっさり話すものだから、マリーも武器を持つ手が下がりつつある。だが、シオンがリンの近くに以上警戒を解くわけにはいかない。


 マリーはジト目をしたままリンに言う。

「ええと、じゃあ君は寄り道ついでにここに侵入して、主様に来やすく触れたってわけ?」


 彼女の言葉にリンはこくりとうなずいた。マリーはもう呆れている。


「はあ……アヤメさんになんて報告しよ。とりあえず、リンだっけ?事情聴取したいからついてきて。主様もこっちにきて。味方がいる可能性もあるからさ。」


 シオンはしばらくその場で固まっていたが、マリーの隣に移動する。リンはそれを静かに見ていた。




 たどり着いたのは、いつも通り開いている客室。リンと向かい合わせになる形で着席した。

 マリーは水晶を使ってどこかへ連絡した後、頬杖をついてリンを見つめる。

「……で、主様についてどこまで知ってるの?」

 マリーはいてもたってもいられなかったのか、一番聞きたかった質問を投げた。シオンも知りたかったのかじっとリンを見つめる。

 リンはオッドアイの瞳をマリーに、シオンに向けた後首を傾げた。


「結構知ってる。だが、俺はまだ序の口だな。」


 リンは腕を組みなおし、じっとシオンを見る。

「ちなみに、どこまで忘れているんだ?」


 その言葉にマリーは作った笑顔で言う。

「教えるわけないでしょ?ちょっと今日は帰らせないから覚悟してね。」

「いや……悪かったって。」

「反省が見られないので明日もね!」


 マリーにくぎを刺されたのか、リンはおとなしくなった。だが、シオンからは目を離すことしないようだ。


 シオンはリンの視線を受けながら、意識の奥を探るようにぼんやりとしていた。


 なにかを覚えているというよりも、感じているようだ。


 ふと、外の紅葉が視界の端でちらつく。シオンは紫の目をそちらを向ける。赤、黄色、枯れてしまって茶色く染まった木が相変わらず、風で揺れている。


 その時だった。ずきりと頭に痛みが走る。典型的な記憶が思い出す予兆。そのままぐらりとシオンの体は揺れて倒れてしまう。視界は定まっておらず目の前が暗転する。

近くにいたマリーが慌てて支えた。体を揺さぶり、声をかけている。


「主様!!しっかりして!」

「おい!大丈夫か?」


 シオンはぼんやりとリンとマリーの声を聞きながら、静かに目を閉じた。何かを探しに行くように。




 目を覚ましたというべきか、気が付いたというべきかシオンは目を開ける。

 今日は以前見たような暗闇の夢の空間でなく、どこかの街にいた。レンガの道に、歩く人々。それから、背丈よりもはるかに高い建物が並んでいた。


 今のシオンにとっては全く見覚えのない光景だ。どこにいるのかは定かではないが、一歩一歩と前へ進む。


 その先に何が待っているのか、シオンにはわからなかった。

こんばんは、作者です!

ついに20話を迎えました!そして、遅くなりましたが200PV超えました!

ここまでついてきてくれた方々ありがとうございます!

そこで告知です!


3月末の(3月28日~)に用事があるため設定の見直しに専念します。

なので、投稿をお休みしたいと思います。

楽しみにしている方、本当に申し訳ありません。

よりパワーアップした内容にできるよう頑張ります!


3月27日までは通常通り投稿します。

そして、4月1日に再開しようと思います!

それでは、次の作品でまた会いましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ