第36話
これは私にとってかけがえのない初めてだった。
だからこそ、最後でよかった。
無意識にこつこつと音を鳴らす。
誰に言われるまでもなく体育座りになり貧乏ゆすりをするように足が踊る。心臓がその音をリズム取るようにバクバクと内臓を揺らす。
私の指はまるで誰かの足音が近づいてくることを催促するようにとんとんと膝を叩いてる。
全身が疼いている。心の底からないものも飛び出しそう。
私にはなにもできない無力さが歯を食いしばることで力量を知らしめる。こんなことで私の願いが叶うことなんてない。
痺れを切らして立ち上がるも、歩くことしかできない。どこに向かえばいいのか誰も教えてくれない。ただ、リビングと自室を何度も往復するだけ。もぬけの殻になったこの空間に私の居場所なんてない。
あぁ……愛しい人は。恋しい人は。
今、私の見えないところでなにとたたかっているの?
笑美は朝早くに家を出て、昼頃には帰ると言い残して行った。それからは私との時間を守るお約束してくれた。
そのはず。
それは今日一日の予定で、別にどこか違う日程に移った認識はない。全くない。
だからもう、帰ってきてもいい時間。そろそろ「ただいま」と「おかえり」が交わる、焦がれる時間が訪れていい頃合い。
それなのに。
「…………やっぱり」
なにかあったんだわ。
その懸念は夕方まで続きそうな気配がしていた。
いや、それどころかもう帰ってこないのかもしれないと恐怖が上乗せされる。彼女はもう、私とは会ってくれないのではないだろうか……。
自分の穢れを見られたくないから。
それでも、私が満を持して自ずから学校へ立ち向かおうとした。
この際、もう二度と会えなくなる結末が待っているのだとしても。それなら会ってから最後を迎えたいじゃない。
そんな簡単な答えを導いた私の足取りは軽かった。
リビングにいた体は、軽やかに自室へ駆け出し、着替えを済ませようとする。都合よく顔は出来上がっている。彼女に見てもらう面くらいは常に綺麗でありたいと、彼女が出て行ったあとに暇つぶし程度に顔を塗り替えた。
だからあとは服さえ間に合わせればいい。
そのあとは全速力で、心の赴くままに、この足を最速で動かせばいい。
その馳せた気持ちのまま、私は誰にも見られていないと思い、勢いよくパジャマを脱ぎ捨てた。
身を包むのは彼女が好きな色をした下着のみ。
あとは、あとは、あとは……もうすぐ。
もうすぐ会えるというタイミングで、背後から音が鳴る。
私の部屋の扉が開いた音以外はありえなかった。
まさに赤裸々に語るその全身が、露わになる。扉を開けた当人に無防備な姿が浮きだす。
「笑美……?」
ならば見られてもいいや、私は振り向いた。それよりも、今会いたいから会いに行こうとした本人が目の前にいることの安堵の方が大きかった。なによりも溜飲が下がる吉報だった。
そして、私は気付いたときには激しい接吻を交わしていた。
それは、初めてのことだった。
どうもおはようございます雨水雄です。
なんか今日寒くない……?と思っているんですけど、春もまぁ気まぐれなものでときたま冷ややかになる日もあるんだなと震えております。
最近は雨水の頑張りどきですので、体調は崩せませんし気をつけよう……みなさんもどうかくれぐれも無理をなさらぬよう頑張ってくださいね。特に新入社員や新入学生の方々!あまり肩に力を入れぬようときたまリラックスも覚えてくださいね。元気が一番ですから!
さて、今週もここまで読んで下さりありがとうございます。
では来週もよければここで。




