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曇天の下の極彩色  作者: 雨水雄
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第34話

それを絶望と呼ぶにはまだなにも行動していなくて。

またそれを失望と叫ぶにはまだ早すぎる。

渇望したい存在は今、隣で寝息を立てていて。

そのことだけで守る希望は決まりきっている。

厄介……面倒。

波乱が乱雑に煩雑に……複雑に私の思考回路を雁字搦めにきつく結んでいく。

笑美えみが。危ない……。

凄まじい危機感が悪寒を呼び、背筋が害虫を這いつくばるように震える。

今はもう太陽でさえノンレム睡眠しているであろう深夜帯のこと。学校生活を送るために組み込まれた習慣のせいで、私もいつもに倣えば熟睡に徹しているころ。

だけれど今はそうも言ってられない……。

ベッドの端にまるで飾りのように置き去りにされている笑美えみの携帯は一度光を取り戻し、私に衝撃を与えた。

ーー『笑美えみ、担任の先生から連絡があって……』

その一文のみだけで大いに察することがある。

瞬時に体に電流が走る感覚が襲う。今まで味わったことのない危険信号……笑美えみが危ない。

もう一度確認しようと、今度は頭だけを起こして少し上から笑美えみを挟んで覗いてみる。

「…………あ、」

その画面はすでに消えていて、自動ロックされていた。

「………………」やむを得ない。

これはもはや本能的だった。咄嗟の反射のような能動的な動作で、私はその手を伸ばした。もちろん、笑美えみは隣で寝ている。視界にそれを確認するくらいの冷静さはまだ冴えていた。

それにしても……この彷彿する憎悪は。嫌忌は。厭悪は。

ーー「だから、明日から宇野山うのやまを消すってことで」

ーー「でも、どうやって先生にバレずにやるの?」

ーー「いや、先生もグルにしちゃえばいいじゃん」

ーー「……え、誰がやるの?」

ーー「別に私でもいいよ? まだあいつ若そうだしハズレではないっしょ」

ーー「まぁ、確かに……めっちゃいやってことはないかな」

ーー「ほんと、担任が若い男ってのはチョロいか」

ーー「じゃ、そゆことで!」

…………いつしかの記憶が蘇る。頭蓋骨の内側にこびり付いたまま剥がれることはなかった吐き気を催すほどの傷跡。

なぜ、私の大切な……私だけの……よっぽど真面目でまともで魅力的な彼女がその餌食に選ばれなければいけないのか。その宛てもなく彷徨う忸怩たる思いは、結局寄る辺もなく私の追憶の隅で拭われることはなかった。

なぜという口惜しさが、いつもいつも笑美えみと触れ合うことで緩和されて、その度にやっぱり私は間違ってないと確信を得て。

元々話し相手が笑美えみしかいない私にとって口さがない行動はもってのほかであり、それすら自尊心への冒涜だった。

「…………………」

ならば、せめて私なりに私が信じてる被害者である彼女を守るためには。

私だけの言葉を。

私はずいっと上半身を乗り出してその携帯を摘み出した。

罪悪感がないと言えばうそになる。全くもって負い目がないわけではない。

かといってこの沸き立つ剣呑が収まることはなく、唯一残る正義感だけを盾にして私はそれを手に取った。

開くと、先程と同じロック画面だけが表示されて、どうスライドしても暗証番号が行き場を遮る。

益体もない私にはどうこうできっこないのは分かっている。

滞ったこの状況を打破することは不可能だし、なにより今は音沙汰なく笑美えみに迷惑かけることなく沈静を取り戻したい……。

私はそこで唯一の理解を得た。

「お母さんからの連絡は随分と前なのね……」

釘付けにしたその一通のメッセージはちょうどお昼頃の通知になっていて、笑美えみは今までそれを確認していなかったことになる……もし画面を一度でも開いたなら、通知画面は消えるものね。

…………つまり。

笑美えみはいつもあまり連絡を取り合っていない……?

確かに、私との約束はいつだって口頭で終わらしていた。

それだけの信頼を得たのか。

はたまたそれを開きたくないなにかがあるのか。

…………私はそのきな臭さに歯痒さを覚えながら、目を瞑った。

そのあとは自然と眠りにつくのを待ったようなものだった。

どうもおはようございます雨水雄です。

一瞬で散る桜は儚くて、その分春の貴重さを物語っているようで……今年もそんなか弱い風物詩を堪能できたことに時間の大切を噛み締めてます。

と思った矢先、なんでまだ早朝はこんなに寒いんでしょうか……。昼間は上着なんて一切必要ないのに……。

この温度差でまだ体が翻弄されている日々を送っていますが、みなさんもどうか体調には気を付けてくださいね。というわけで雨水は本日グリッドマンを観てきますので!

さて、今週もここまで読んで下さりありがとうございます。

では来週もよければここで。

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