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俺が銀髪美少女に幸せにされるまで  作者: 結城ナツメ
銀髪美少女は俺の胃袋から幸せにする
38/40

四種のハンバーグ

警告。深夜に読んではいけません。

 昼休み。俺は初めて、昼休みというのが待ち遠しくなっていたかもしれない。

 理由は単純。天津川の弁当が楽しみだからだ。

 一昨日の晩は豚の生姜焼きを作ってもらった。プリプリ食感の豚肉に、甘いタレが凄ぇ美味かったのを憶えている。葵も大層喜んでいた。

 こうして味覚が戻ったおかげで、食への楽しみが何倍も増えた気がするな。


 そして今日の昼飯となる弁当は、ハンバーグらしい。

 天津川の料理の腕は、唐揚げと生姜焼きでわかっている分、期待値が高い。

 ハンバーグの味も憶えていないし、なんだか初めて食べる感覚だ。


「ファミレスのハンバーグより先に食べることになるとは思わなかったな」

「あ~。三澄君はよく、葵ちゃんをファミレスに連れてってるんだっけ?」

「ああ」


 弁当を持っている天津川が来るまで、小鳥遊と話していた。


 葵の希望で、俺の作った飯かファミレスのどちらかが晩飯が決まるのは今更ながらおかしいと思う。

 おかげでファミレスだけは忘れることはなく、飽きる領域まで行くことに…。これはこれで、良い思い出として残り続けたと言うべきか?


「お待たせしました。すみません、先生にわからないところを聞いていたら、遅くなってしまいました…」


 小鳥遊と適当に会話していると、鞄を持った天津川がこちらにやってくる。


「気にしなくていい。わざわざ弁当を作ってきてくれてるんだ。いくらでも待つ」

「そ、そうですか…。でも、やっぱり朝に渡しておいた方がよろしいような気がします。私を待たずに、先に食べることが出来ますし」

「確かにそうだけど、俺は天津川と一緒に食いたいからな。弁当待った状態で自分にお預けするより、天津川が来るまでお預けされてた方がまだいい。だから気にするな」

「??? え、え~と…。わかり、ました…?」


 俺の言葉に顔を少し赤らめつつ、困惑の表情を浮かべる。

 だけど俺もなんとなく思ったことを口にしただけで、特に意味を理解していないから説明に困る。

 ……自分の言ったことに責任が持てない男ってこういう奴のことか?


「うわ~。ここにいたくないなぁ…」


 俺と天津川の様子に、小鳥遊がそんなことを言う。

 なぜそんな心境に至っているのか気になるが、それよりも早く天津川の弁当が食いたいのでスルーしておく。


 そういえば、いつも真っ先に来るうるさい奴が来ないな?今日は別の奴らと飯食ってんのかな。

 て、そんなこと考えたら飛んできそうだし、アイツのことは考えないでおこ。


「やっほー!お待たせ~。購買のデザート買いに行ってて遅くなりもうした~」


 やっぱ少しでも考えちゃダメだったか~…。


「よぉうるせぇの。珍しく遅いと思ったら、デザート買いに行ってたのか。てっきり授業中居眠りして、そのまま永眠してるのかと思ったぞ」

「辛辣オブ辛辣!?それ遠回しに僕のこと殺してるよね?三澄の中で」


「弁当サンキューな」

「はい。どうぞお召し上がりください」


「無視が一番傷付くんだぜ…。せめて否定してくれよ」


 やかましい兵頭のことを放っておいて、天津川から受け取った弁当箱を開ける。

 昨日言っていた保温性の弁当箱はかなり大きく、一般男性が使うのより大きいんじゃないかというサイズだ。

 まぁ日記に書いてあった重箱よりはマシだろ…。それにこれは二段だし。


 気になるその中身はというと、ソースがかかった少し大きめのミニハンバーグが四つ。枝豆。ポテトサラダ。そしてミニハンバーグの下にレタスが敷かれていた。

 二段目にはなんと目玉焼きが乗ったご飯。なんて贅沢な弁当なんだ…。


「美味そうだな~」

「ありがとうございます。久し振りに三澄さんにお弁当を作るので、張り切っちゃいました」

「そうか……ところで、なんでミニハンバーグ四つ?一つに纏めた方が簡単な気がするけど」


 俺の為に張り切ったと言う天津川に、少々くすぐったい感覚に襲われながら、一つ気になった部分を聞いてみる。

 一個に纏めると入れずらかったとかだろうか?


「まぁまぁ。とりあえず食べてみてください」


 しかし特に理由も言わず、なにやら少々含みを感じる笑みを浮かべながら言う天津川に従い、右下のミニハンバーグを一口食べてみる。

 瞬間、ピリッとした感触……いや、味か?それが口の中に広がった。

 長い間味覚が無かったからわからなかったけど、これは……


「ピリ辛?」

「はい。そちらはピリ辛ハンバーグですね。お父さんが好きで、ハンバーグを作る時はいつも作ってるんです」

「へぇー。美味いなぁ、これ」


 ピリリとした味わいが、肉の旨味と上手くマッチしている。食欲をより刺激された気分だ。

 そして俺は気付いた。今天津川は「そちらは」と言った。もしかしてさっきの含みがある笑顔は……


 俺は今食べたハンバーグを食い切る前に、今度はその隣、左下のハンバーグに口を付ける。

 すると今度は、サクッとした食感がハンバーグの中身から感じた。


「っ!? ……揚げてる?」

「はい。そちらは揚げバーグですね。ビックリしてほしくて、外側を薄っすらお肉でコーティングしちゃいましたが、どうでしょうか?」

「美味いに決まってる。まさかハンバーグでサクサク食感を味わえるなんて思わなかったな…」


 しかも外側の肉が天津川の言った通り薄く(・・)コーティングされてるから、カリッとした食感がして尚俺好み。

 こんなのに低評価付ける奴いたら正座させてやる。


 次はその上、左上のハンバーグを口に入れる。これは中身に何も入っておらず、スタンダードタイプ……かと思ったが、ソースが他のに比べてかなり濃厚で、風味も強い気がする。

 ……そういえば、四つのハンバーグは一つのおかずケースに入れられていたが、このハンバーグだけ別のおかずケースでさらに分けられている。

 このソースだけ他と違うからか…。


「そちらは包み焼きハンバーグです。ちなみに、ご飯の上にある目玉焼きの黄身に付けて食べると、もっと美味しいですよ」


「「……ゴクッ」」


 先ほどから黙って見ていた兵頭と小鳥遊が、ついに我慢が出来なくなったのか、生唾を飲む。

 その気持ちはよーくわかる……記憶障害のせいで、卵に付けたハンバーグの味とかわからないが、なぜか俺の頭が訴えてくるのだ。


 ―――付けたら超美味いぞ、と…。


 天津川の言葉に従い、黄身を割ってそこに包み焼きハンバーグを付けて、残り全てを口の中に放り込む。

 ……あぁ。トロトロの黄身を纏ったハンバーグが、さらに濃厚な味わいになった…。

 そこに米をぶち込むと、さらに美味い!


 ここまで食感だけで食ってきたのが悔やまれるのは初めてかもしれない……マジでめちゃくちゃ美味い…。


「こんなに美味かったのか……ハンバーグというのは…」

「そんな、大袈裟……でもないですね。はい。ハンバーグはこんなにも美味しいんですよ。最後のも食べてみてください。そちらは私の家族皆が好きなハンバーグなんです」


 天津川の言葉にまた従い、最後の右上のハンバーグを口に入れる。

 すると、とろ~りとした感触が口の中に広がり、口を離したハンバーグからも黄色い液体のような物がとろ~っと溢れ出していた。


「あー!チーズハンバーグ!?それ私めっちゃ好きぃ!」

「万民が認めるチーズインハンバーグ……罪の味の権化…!」


 ついに我慢の限界が来たのか、兵頭と小鳥遊が声に出てしまう。

 なるほど。これがチーズの味……風味が独特で、好き嫌いが分かれるそうだが、少なくとも俺は好きだ。

 しかし二人は万民が認めると言っている。もしかしたらチーズインハンバーグというのは別なのかもしれない。


 いや、たぶん完全に別だろう。口一杯に広がるチーズの風味は、口の中全体が舌になったのではないかと思うほど、濃厚で深い味わいだ。

 これは兵頭が言ったことも間違いではないだろう……チーズインハンバーグ、正しく罪だ…。


「天津川ちゃん、どうか僕にもお恵みを!意地汚いのはわかってても、これはもう公開処刑みたいなもんだよ!?我慢出来ない!」

「わ、私も!今度また一緒に料理作る時で良いから、私も食べたいです!」


「……ふふふ。では、そうしましょう」


 半分涙目の意地汚い二人に、天津川は特に気にすることなく承諾した。

 しかしてっきり小鳥遊の提案を吞んだだけかと思ったが、彼女は鞄から大きめのタッパーを取り出した。


 タッパーの中には、大量のミニハンバーグが入っていた。

 ハンバーグは、四つのおかずケースに分けられている。


「どうぞ、お召し上がりください。おかわりも沢山ありますよ」

「「あ、天津川さまー!」」

「お二人の分の目玉焼きもありますよ。食べますか?」

「「食べるー!」」


 どうやらこうなることを予期して、予め作っておいたようだ。

 そういえば日記で、天津川が唐揚げを一個兵頭にあげたみたいな話があったな。それで事前に準備してたのか。


「……大丈夫か?俺の分だけでも大変だろ」

「いえ。気にしないでください。それに、流石にそうそうこういう事はしませんよ?今回は私が、皆さんで一緒に楽しみたいなーっと思っただけですので。せっかく三澄さんの謹慎明けですから」


 あー。なるほど、お祝いみたいなもんね。

 確かに毎日これじゃ、無駄な食費が出るもんな……あ。そうだ。


「天津川。弁当のことなんだけど、これっていつもいくらぐらい使ってるんだ?流石に食費くらいは払っておきたいんだけど…」

「あ。それでしたら、全然気にしないでください。お母さんからお弁当代を多めに貰っているので、いつもお金には余裕があるんです」

「でもよ…」

「本当に大丈夫ですよ。それにこれは……三澄さんを幸せにする為の、必要経費ですから」


 そう言う天津川は、何が何でも俺からは金を受け取るつもりはないらしく、せっかく持って来た10万円が無駄になった。

伊達に有名監督の息子をやってない乙葉。おこずかいはたくさん貯蓄してます。

ちなみに葵もたくさん持ってます。


深夜に読んだ方はいらっしゃいましたか?

作者は書いてて腹減って来ました。


この話が面白いと思ったらブクマ登録と高評価、いいねと感想をよろしくお願いいたします。


次は「神様は純粋な者にこそ、夢のような力を与える」

https://ncode.syosetu.com/n6895hq/

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