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勇者を継ぐ者  作者: 本城達也
第一次オストルン大戦【後半】
46/106

勇者の剣技


「キ、キサマ・・・

 その剣をどこで手に入れた・・・」




 これまで余裕の表情しか浮かべていなかったバトラーの表情が初めて引き攣っていた。



 それもそのはず。

 魔界の魔族にとって地上の人族との戦いは常にその剣との戦いであった。



 その剣に討たれた魔族は数知れない。




 魔界の究極目標は常にその剣を持つ者を倒すことだったからである。




 今はその剣がタズの手元にあった。




・・・・・・・・・・・・・・・





 タズは初めて構えてみたその剣から魔を討てという強い意思を感じた。



 まるで剣が未熟なタズに協力してくれるかのように、剣に風が集まってきているのを感じた。




(今ならあれが使える)




 そう確信したタズは、残りわずかなマナを使って聖剣に風魔法を付与していく。




 風魔法を付与してみるとわかった。




 その剣は受け取った風魔法をしっかりと包み込み、タズの意思とリンクしはじめたのだ。





「いくよ、バトラー!

 


 今のボクの全力、受けてみろ!」








 タズはバトラーに向けて美しい弧を描きながら剣を横なぎに払った。





 グレン直伝の勇者の剣技







グレン(勇者)流剣術奥義


 エアスラーーーーッシュ!!!」





 横なぎに払われた剣の先から星の力を乗せた真空刃が飛び出し、バトラーの身体を横一文字に断ち切った。




「なにーーーーーーー!!??ぐはぁああああああああああ!!」




 バトラーは何気なく振られただけに見えたその剣に大ダメージを受けた。





 バトラーはすぐに切断された身体に回復魔法をかけたが、再びタズの剣に風が集まってきているのを見て、回復が間に合わないことを悟った。







(ぐぬぬぬぬぬ・・・おのれ・・・またしてもあの剣に・・・)





 たった一つの剣の登場に戦況がガラリと変化した。




 あり得てはならないことであったが、このままでは敗北する。



 そのことを悟ったバトラーには2つの選択肢が頭によぎった。





 一つは主から預かった闇の召喚陣を使って(エビルサタン)に助けを乞う事、もう一つは・・・




 バトラーからすると、2つの選択肢のうち1つは存在しないも同然であった。




 こんなことで(エビルサタン)に迷惑をかけることなど、四天王筆頭のプライドが許さない。




 バトラーは残りの一つの選択肢を選択することにした。






「グフッ・・・

 グ・・・フフフフ・・・ハハハハハ・・・


 ここまでやるとは予想外だった。

 

 我が本気で戦わねばならないのはいつぶりか・・・

 覚えてはいないが、せいぜい楽しませてくれ」



 血を吐きながらバトラーがそんなことを言った。

 するとバトラーの身体が変化していく――。







 強い魔族はその知性を捨てることでより強くなることができるのである。




 バトラーは悪魔獣王。





 知性を捨てて魔獣化することによって悪魔獣王たる本来の姿に戻っていく。






(我はただ暴れ狂うだけのこの姿が嫌いであった。)



(ただの獣は智を尊ぶエビルサタン様が何よりも嫌う。)



(この姿にだけは戻りたくはなかった。)



(だが、あの剣が出てきた以上はやむを得まい・・・主に迷惑をかけるくらいならば)




 バトラーの失われた下半身から大きな太い脚が飛び出し、上半身も身体の厚さが増していき、両手からは鋭い爪が伸びていき、背中には漆黒に翼が生え、頭の2本の角はさらに太く逞しいものへと変化していく。





 バトラーの身体は魔界の幻獣とでもいうべき雄々しい姿となった。




 バトラーの第二形態―ヘルバトラーの誕生である。





 ヘルバトラーは雄叫びを上げた。





 グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ





 王都中が激しく揺れ、タズたちは思わず耳を塞がずにはいられなかった。



 聖剣に集まった大気すらその雄叫びに吹き飛ばされた。




 四天王筆頭のその全力、本当の死闘がこれから始まろうとしていた。


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