最上級魔法
「やったか!?」
騎士の一人が想像を絶する業火を見てそんなことを言った。
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タズとイリアは当然この程度でバトラーが倒せるはずがないと考えており、警戒を解くことはなかった。
せめてある程度のダメージさえ通ってくれていれば・・・
「フハハハハ!
少しはやるようだな!
多少は効いたが、この程度で我を倒せると思うなよ!」
炎が止んだ後、その場所には、多少はダメージを負っているものの、ピンピンしている様子のバトラーが現れた。
「わ、私のメガフレイムでもダメだなんて・・・
タズの剣も通用しないし、まずいわ・・・
せめて魔法剣が使えたなら・・・」
バトラーの襲撃があと一週間遅ければ・・・グレンの稽古が再開していれば・・・全く別の展開になっていたのかもしれないが、エビルサタンたちは今この瞬間を狙ってきている以上、どうしようもなかった。
だが、希望もあった。やはり上級魔法であればバトラーといえどもある程度のダメージが通ることがわかった。
タズとイリアの二人で上級魔法を駆使していけばいずれはダメージを蓄積させることができるかもしれない。
そう思わせる結果ではあった。
しかし、イリアもタズも、上級魔法を連射できるほど膨大なマナを持っていなかったし(タズに関してはペンダントの中に)、マナを魔力に変える際のマナ変換率も高くはなかった。
まだ魔法を覚えたばかりの2人にとって上級魔法は切り札であって、どこぞの某姉のように上級魔法をポンポン唱えられるわけではなかった。
イリアは一日に火の上級魔法が2発程度、タズは一日に風の上級魔法が1発程度で限界であった。
想像以上であったバトラーの実力に、二人はイチかバチかの手段を選択せざるを得なくなってきていた。
「お姉ちゃん、こうなったらイチかバチかの手に出るしかないかも・・・」
「そうね、万が一これで倒せなければもうダメかもしれない・・・。
けどもうこれしか手がない・・・。
やってみるしかないわ!」
タズとイリアは再び連携を始める。
イチかバチかの手段・・・
その手段とは最上級魔法ギガフレイム。
メガフレイムの魔力にメガフレイムの魔力を掛け合わせる必要があり、膨大な魔力を消費することからイリア一人では詠唱は不可能なはずだった。
すると、タズはイリアの左手を握り、フレイムを連続で唱えてその魔力をイリアの掌へとどんどんと移していった。
イリアもまた、メガフレイムを唱えて右手にメガフレイムの魔力を蓄えていく。
グレンの修行の成果は剣技だけではない。
魔法についても、魔法剣を身に付けさせる過程で魔力をコントロールする術をも身に付けさせており、このようにして二人で力を合わせれば一人では唱えることができなかった最上級魔法の行使を可能にさせていた。
しかし、これを唱えればタズもイリアもマナがほとんど尽きてしまう。
そういうイチかバチかの最終手段であった。
万が一、これを使ってバトラーを倒し切れなかった場合、二人はもう魔法がほとんど使えなくなる。
身体強化も弱まり、回復魔法も使えなくなり、バトラーに一方的に殺されるだけである。
(お願い、村の皆・・・ボクに力を貸して!)
タズがペンダントにそう祈ると、ペンダントは力強くこれに応えるかのようにマナを絞り出して魔力に変えていき、とうとうイリアのその両手にそれぞれメガフレイム1発分の魔力が宿った。
十分な魔力が宿ったことを感じたイリアは、自身のマナを振り絞って両手にそれぞれたまった魔力を掛け合わせていき、最上級魔法を作り上げていく――。
イリアが両手を合わせた後、バトラーに向かって弓を引くような動作をすると、それに合わせて両手に集まった赤い火の魔力が、赤く光り輝く矢と弓を形作った。
「いくわよー!
ギ ガ フ レ イ ム !!!!」
イリアがその魔法を唱えると、辺りが真っ白になると共に、イリアからバトラーまでを結んだ一直線上に巨大な業火の波動が発生して、バトラーを飲み込んでいった。
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魔法が止むと、そこには真っ黒焦げになったバトラーが鎮座していた。
ギガフレイムは文字通りメガフレイムとは威力の桁が違う。
メガフレイムでダメージがある程度通るのであれば、ギガフレイムなら十分倒し切れるはずであった。
イリアは真っ黒になって動かなくなったバトラーをみて、勝利を確信したその時であった・・・。
バトラーの身体を黒い光が覆った。
なんと、バトラーの身体が徐々に再生していった。
「ハァ・・・ハァ・・・。
さ、さすがに死ぬかと思ったぞ。
まさか最上級まで使えたとはな。
だが、残念だが俺も回復魔法が使える。
あと少しだったが残念だったな。
フフフフフ!フハハハハハ!」
しばらくして回復したバトラーは声高々に笑った。
最上級魔法を使った反動でフラフラになった二人は、その無情すぎる出来事に呆然とするしかなかった。
イリアはここまでやって倒せなかったバトラーに、そして回復魔法を駆使してくるという事実に、とうとう希望がなくなり、絶望の表情を浮かべた。
「そ、そんな・・・反則でしょ?」
「バカをいうな。
魔法は元々我ら魔族のものだ。
お前たちが使い出したことの方が反則だ」
そう、魔法の本家は魔族にある。
回復魔法も当然に。
バトラーは、タズたちが最上級魔法を使おうとしていたところを黙ってみていたわけではなかった。
無属性の対抗魔法を掛けることによって魔法の威力を緩和すると共に、月(闇)属性の魔族再生魔法を唱えて防御の準備をしていたのであった。
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イリアが絶望に沈んだそのとき、
タズは・・・
マナはほとんど底をつき、どうしようもなくなったという状況であったにもかかわらず、いまだその顔に絶望の影は落ちていなかった。
タズには密かに用意していた秘策があったのである。
今はソレが間に合うことを待っていた。




