森の異変―再び
タズたちが稽古に向かおうとしたそのとき、王宮の方角から大きな花火が3発上がったのが見えた。
いよいよ100周年を迎える平和記念日の大祭の始まりである。
「うわぁー!お姉ちゃん、あれなに!?魔法じゃないの?
凄いよ!」
「あれはいよいよ平和記念日のお祭りが始まるっていう合図よ!
花火っていって火薬を空に打ち上げて空で爆発させるものなの。魔法じゃないわ」
「へぇー!凄いなぁ!」
タズは初めて見る空に浮かぶ大輪におおはしゃぎだった。
「タズ、こんなので驚くのは早いわよ!
夜はもっと凄い花火がたくさん上がるし、夜だと凄くキレイに見えるわよ!」
お祭りにワクワクといった様子でテンションが上がっているタズを見て、イリアは微笑ましくなり、つい甘やかすことを決めてしまうのであった。
「タズ、今日は早めに切り上げて、夜は一緒にお祭りを見に行きましょう!
グレン様もお祭りにかまけるなとは言ってたけど、お祭りに行くなとは言ってなかったわ」
「ホ、ホントに!?やったぁ!!ボクお姉ちゃんと一緒にお祭り行きたいっ!
うわぁ!楽しみだなぁ!!」
「そうね!でもそれにはちゃんと稽古しないとね!
さっ、行きましょう!」
イリアとタズは祭りの熱気に包まれた王都を出て、シドル王都南側の森の中のグレンの稽古場へと足早に向かっていった。
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――だが、
―――――――――――。
・・・森は異様に静かであった。
森に棲む鳥の声も虫の声も全く聞こえない。
何かに怯えるように息をひそめているのか、それとも逃げ出してしまったのか、生き物の気配が全くしないのである。
「まったく、凄い人で王都を出るのも一苦労だったわね。
夕方にはもっと人が王都に集まってくるでしょうし、街に入るのに時間がかかるかもしれないわ。
やっぱり今日は早めに切り上げた方が良さそうね!」
イリアはタズに向かってそんな話をしていたが、珍しくタズからの反応がない。
タズは森に少し足を踏み入れたところで、激しい悪寒がしていた。
この感覚には覚えがあった。
忘れることがないあの日、姉と一緒に森に出たときと同じ感覚――。
森に住む生き物や魔族とも異なるモノ――得体の知れないモノがこの森のどこかに潜んでいる、そんな感覚である。
あの日、イリスだけがその違和感に気が付くことができ、タズは違和感に気が付くことができなかったが、今のタズは、村を出て長く森を旅した経験等から森の違和感に気付くことができるようになっていた。
急に足を止めるタズに対して、森の違和感に気が付いていないイリアは
「タズ?どうかしたの?」
と、声をかけた。
そんなイリアに対してタズは、周囲を警戒しながら小さくつぶやいた。
「お姉ちゃん、森の中に・・・魔王がいる・・・」
予想外のタズの返答にイリアも足を止めていた。




