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勇者を継ぐ者  作者: 本城達也
第一次オストルン大戦【前半】
29/106

修行前半終了

 グレンによる稽古・修行が開始されて一週間が経過した頃


  

 スパルタ特訓の成果や何が何でも短期間で強くならなければならないという強い意思の影響もあってか、タズとイリアの剣も大分良くなっていた。

 そして、魔法の方も順調に上達を続けていた。

 ただし、やはりタズとイリアでは、剣の扱いではタズの方が、魔法の扱いではイリアの方がうまくなっていた。

 今はまだギリギリ均衡がとれているが、いずれはタズは剣士に特化させ、イリアは魔法使いに特化させた方が良さそうだという印象であった。


 いずれにせよ、2人ともそこらの魔族相手なら魔法なしでも十分戦えるであろうレベルまで来ていた。

 



「大分良くなってきたな。

 それじゃあそろそろ魔法剣を試していくぞ。

 どの属性魔法でも剣に乗せられるが、最初は火、風、土辺りが簡単だろう。

 魔法剣を使うためには、自然を意識する必要がある。

 天地と一体になるような気持ちで魔法を乗せた剣を振るんだ。

 魔法は通常手の先から発動するが、剣先をその手先だと思うんだ。剣に魔法をかけ、剣先に魔力を待機させれば良い。まずは手本を見せてやろう。

 タズ、俺の木剣を持って、この剣も自分の手の一種だと思って真空刃の風魔法の魔力を剣先に待機させてみろ」

 


「う、うん。わかった。風よ来たれ・・・エアカッター」


 タズはグレンの指示通り、真空刃の風魔法を詠唱するも、魔法をその手から発動させることなく、手にもった剣の先まで魔力を伝わらせていく。そう、体内のマナを風魔法の魔力に変えただけの状態のまま、それを剣先にへと集めていった。


 この操作自体、剣を学ぶ前であれば不可能だったが、グレンのスパルタ修行のおかげで剣も腕の一部と思えるようになっていたタズには十分クリアできる課題だった。

 グレンは、タズの魔法待機が成功したのを確認し、タズから魔法をかけてもらった木剣を優しく受け取った。


「よし。これで良い。まずはここまでよくやったな。

 だが、ここからがかなり難しい。

 この状態のこの木剣は魔法がかかっていて魔力が待機しているから、少しの衝撃を与えれば待機している魔法飛び出す。だが、それでは明後日の方向に魔法が飛び出してしまうだけだ。

 せっかく剣に魔法をかけた意味がない。

 そこで、飛び出そうとする魔法を抑えて、剣技と一体化させ、その剣技に魔法を乗せて剣を放つ必要がある。

 自然と一体となった気持ちで剣先の魔力をコントロールしつつ、剣技をまるで自分の手を振るのと同じと意識しながら振るんだ。

 よく見てろ!

 いくぞ、エアスラッシュ!!!」



 グレンがそう言いながら近くの森に向かって素早く、かつ美しい弧を描きながら剣を横に振ると、前方30m先の木々が一斉に横一線に断ち切られて崩れ落ちた。あとには美しく半径30m、角度45°の弧を描いた綺麗に開けた空間ができていた。



「「す、すごすぎる…」」



 圧巻であった。


 魔法ありとなしでは実力が大きく違うといっていたグレンの話は確かに本当のようである。


 ただし、魔法ありになると、ただでさえ桁外れだったところからさらに3乗くらい上に変わるという印象だった。



「これはあくまで基本魔法かつただゆっくり横に剣を振っただけのときの威力だ。全然しょぼい。

 この程度であれば魔法なしの生身でも実現可能だ。

 だが、大魔法を剣に乗せたり、扱う剣技をさらに高めていけば、その分桁外れな威力が出るようになっていぞ!」



((これでしょぼいんだ。っていうか魔法使えなくてもこれできるんだ・・・))




 伝説の勇者と言われた存在の桁外れな実力を目の当たりにして二人は声もでなかった。

 これ、本当にボクたちいるの?状態である。




「よし、次は土魔法だ。投石の土魔法を剣にかけてくれ。魔法剣はそれぞれ特徴があるから使い道をよく見極めるんだぞ!」


 

 グレンが土魔法がかかった剣を逆手にもって構え、前方に踏み出しながら地面を掠るように上に切り上げる―ガイアストラッシュを放つ―と、切り上げた剣先の50m先までの地面が真っ二つに割れながら岩石が舞い上がっていき、縦一直線の大きな地割れが出来上がった。そして、地割れができたかと思ったら舞い上がった地面の大量の土や岩石がズドドドドという轟音を立てて地割れに向かって降り注いでいき、地割れを埋めていく――。



「とまあこんな感じだ。前から進軍してきた大量の魔物どもを地面に生き埋めにするのに使える」



 エアスラッシュよりもさらにド派手な演出に加えて、終わった後には元通りというその驚異の剣技を見て、((いやいや、生き埋めとかそんなレベルじゃないんだけど・・・))と思いながら、これはひょっとして夢なんじゃないかとすら思った2人だった。


 グレンは簡単などと言っていたが、まるでできる気がしなかった。



 最後の見せられたフレイムブレイクとやらについても言うまでもない。


 

 そうして、グレンからエアスラッシュ、ガイアストラッシュ、フレイムブレイクの3つの魔法剣を見せられたタズたちは、その後、早速その練習をはじめた。



 だが、しばらく試してみても、剣からしょぼい魔法が明後日の方向に飛ぶだけだった。

 剣撃に魔法を乗せて威力増加なんて夢のまた夢の状態である。

 それどころか、あまつさえ、自分の方に向かって魔法が飛び出し、自爆しそうになったことすらあった。


 それをみたグレンは・・・


「まあ、最初はそんなもんだろう。だがこれを一回やった後に素振りをしたり構えの練習をすると大分変わるぞ。剣技に対する意識の集中度が変わる。剣の中までより深く意識して剣が振れるようになるはずだ。

 というわけで、またしばらく基礎からだ。

 明日から俺は1週間ほど出かけるから、その間に素振りと構えの練習をしておけ。

 魔法剣が使えるようになるのはおそらく俺が帰ってきたあとだろう。

 そして魔法剣を修得した後の残り2か月はより高度な魔法剣を覚えていくことにする」



 こうしてグレンによる修行過程の前半のそのまた前半が終わった。

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