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勇者を継ぐ者  作者: 本城達也
シドル王都へ
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王都散策


「さて、タズ、まずはどこから回りましょうか?」


 イリアはタズを引っ張って早速王都へと繰り出した。イリアは末っ子であり、これまで仲の良い友人も年上のイリスだけだったことから、年下の可愛い弟ができて少しテンションが上がっていた。


「ボク、町って初めてだから何もかもがすごいや・・・」


 そして、タズの方はというと、昼の王都に圧倒されていた。その人の多さ、活気、何もかもが森の奥のエルフ族の村とは大違いである。

 その上、王都は、間もなく迎える平和記念日の大祭に向けて、活気づいていた。


「あっ!ねえ、あんなところに出店があるよ!イリア姉ちゃん、見に行っても良い?」


「ちょっとタズ、いきなり駈け出したら危ないわ。迷子にならないようにちゃんと私の手を握っててね」



「はーい!えへへ、イリア姉ちゃん、イリス姉ちゃんみたい」



(ふふーん!どうよイリス、私の方がお姉ちゃんできてるわ!私がこの子を立派な子に育てて見せるわよ!)


「いらっしゃい!姉弟でお出かけかい?仲良いね。肉の串焼き1本買ったら2本にサービスするよ」


 串焼き屋の出店の店主は、仲睦まじく手をつないで顔立ちも良く似た2人が店の前に来るの見てほほえましくなり、サービスすることに決めた。


「ホント!?じゃあ2つください!」


「はいよ!100Gな」


 この世界での人間の間での通貨は世界共通でGが使われている。

 しかし、この国の物価からすると、100Gではお菓子程度しか買えない。

 串焼き1本100Gというのは嘘であり、本当は500Gであったが、可愛らしいタズを見てついつい100Gで2本サービスしてあげることにしてしまった。


 奴隷商人すら落としたタズの笑顔に、串焼き屋の店主も思わず10分の1にしてしまったのである。


 元々出店自体、もうすぐ行われる平和記念大祭の一環として開いているものであったため、店主は子供が喜ぶのであればと考えていた。


「はい、これで大丈夫?」


 タズは王都に来るときに100Gコインをもらったことを思い出し、それを取り出して店主に渡した。


「ああ!大丈夫だ。毎度あり。姉ちゃんと仲良くな!」


「イリア姉ちゃん!串焼き買っちゃったー!一緒に食べよう!」


「もうタズったら、さっき朝ごはん食べたばかりじゃない。仕方ないわね。

 あっ、でも美味しい」


「うん!美味しいね!王都って色々あって楽しいね!」


 店主はおいしそうに串焼きを頬張る2人を見て大満足だった。


(それにしてもウィリアム製のコインか。)


 店主はタズからもらったコインを見てそうつぶやいた。この世界の共通通貨はGだが、製造者は複数存在する。その中でも特に品質が高いのが王宮で製造しているウィリアム製コインである。

 王宮の者にしか支給されないため、あまり出回らないものでもある。特にウィリアム製100Gコインは幸運のお守りにもなると言われている。御者がタズに渡したコインには実はグッドラックという祈りも込められていた。


 店主も思いがけず手に入れたコインと幸せそうな2人を見て、得したなと感じた。



「食べ終わったらまずは王宮に行きましょう!

 王宮前の広場で王宮騎士試験の受付をやってるはずだわ。忘れないうちにタズも登録しに行きましょ」


「うん!」


 シドル王国の王宮は、王都の港を挟んだ北側に位置している。タズは、先ほどからあちこち見ながら大興奮している。特に昼間の海を見たときは大いに感動していた。


 港を南北に縦断する橋を渡る際には、手を引っ張り駆け回ろうとするタズが橋から落ちないかイリアは不安で仕方なかった。

 しかし、そんなやりとりでもお姉ちゃん業ができて、イリアも幸せな気分だった。



「ここが王宮前よ!登録はあそこでやってるみたいね。行ってみましょう」


「ほぇー。やっぱり王宮はすごいでかいね!

 こんなでかいところに住んでるなんて、王様ってすごいんだね」


「そうね、でも王宮騎士もこの中で暮らして王宮を守っているから、王宮騎士になればタズもこの中に入れるわ。一緒に受かって王宮の中に入りましょうね!」



そんなやりとりをしている姉弟を見て陰で笑う二人組がいた。



「おいおい、なんだあのしょんべん臭いガキは。まさかあんなガキが見習い騎士試験を受ける気か?ありえんだろ」


「ハハハ!言えてる!って見てみろよ、あの女、教会のとこのメスガキじゃねえか。いつも「魔法さえ使えれば・・・」とかなんとか言って何もできない雑魚じゃねえか。アーッハハハ。こりゃ傑作だ。あの女が調子こいて先輩ぶってやがる」


「これは確かに傑作だな。しかし、こんな連中が受けたんじゃ伝統ある見習い騎士試験がお遊戯かなんかと思われちまう。ちょっと脅して出願撤回させてやるか」


「おっ!いいねぇ!そうしようぜ」

 

 そんな会話をしていたウィルとトマスの2人は、笑いながらタズたちを付けて歩き、隙を窺うことにした。


 ウィルとトマスの2人は今年14歳であり、これまで3年間見習い騎士試験を受け続けたが落ちてしまい、今年が見習い騎士になれる最後のチャンスでもあった。

 そのため、こうして受付会場の近くをたむろしてライバルとなりそうな相手を注視し、もし危険な相手がいれば2人がかりでこっそり排除してしまおうと考えていた。


 年長者の2人からすると、小さな子どもにしか見えないタズたちはライバルでもなんでもなく、むしろ実技試験で当たればラッキーな部類に入る。

 しかし、余裕のない2人からすると、まだまだ受けるチャンスがあるタズたちを妬ましく感じていたのである。


 露骨に名前を似せてるのでなんとなくわかっていた方もいたと思いますが、惑星アルスのモデルはアース(地球)です。南半球にある巨大な大陸というオストルン大陸はオーストラリア大陸がモデルです。

 シドル王都、マルボルン、ブリズバーン、セント・メリー教会はそれぞれシドニー、メルボルン、ブリズベン、セント・メアリー大聖堂ですね。

 

 異世界設定ですので、実在する国、地域とは一切関係ございませんが、ネットでこれらの地名を調べてみるとさらに楽しめるかもしれません。

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