セント・メリー教会①
いかつい奴隷商人の男2人に手を繋がれながら歩く可愛いエルフの少年の姿はこの王都では異様に目立った。
普段ならそのような目立つ行動は絶対に取らない者たちだったが、このときばかりはタズに骨抜きにされ、完全に油断していた。
第一、場所も王都最大の教会セント・メリー教会である。
間違っても奴隷商人が近づく場所ではない。
「おい!お前たち、その子をどうする気だ!」
あまりの異様な光景に見かね、奴隷商人たちの背後から教会の神父が声をかけた。
「あん?・・・
ゲッ!お前はアスター神父!」
「わしを見てその慌てよう。やはり貴様ら奴隷商人だな。その子を離せ」
「チッ!・・・いやいや何を勘違いしているのかわかりませんねぇ。俺たちはこの子が教会を見たいというから案内していただけですわ。何の証拠があってそんなことを言っているのか・・・」
嫌疑をかけられ証拠を出せなどと言うこと自体が白ではない何よりの証拠とも言えそうであるが、そう言われると決定的な証拠がないのも事実であった。
「うん、そうだよ!ダルおじちゃんたちがボクを拾って案内してくれたの!」
そこにタズもそう言って援護する。
しかし、
「!?!? お前さん、もうちょっと顔を見せておくれ!」
タズが振り返ってアスターに話しかけると、アスターは慌ててタズに近寄ってきた。
「お、お前さん、もしかしてイリスの弟のタズか?」
なんと、その神父はタズの名前を知っていた。
「えっ!どうしてわかったの?イリスはボクのお姉ちゃんだよ!」
「いやいや、どうしても何も、その髪の色もその顔もイリスと瓜二つじゃないか。
そうか!やっぱりタズだったか!
・・・・・・いや、とうとうこの時が来てしもうたか・・・。」
何やら色々納得した様子の神父であった。
「タズ、よく王都まで来たな!イリスから何か聞いてないかのう?」
アスターはあまりにも遠いエルフの里から、どうみてもイリスなしの一人で来た様子のタズを見て、何があったのかを察しながらタズに話しかけた。
「そういえばお姉ちゃんが王都の綺麗な建物に知り合いがいるみたいなこと言ってたかも!」
「そうじゃろう!わしがこの教会の主、イリスの知り合いのアスターじゃ。
タズのこともイリスからよく聞いておった。長旅で疲れたろう。今日はうちに来なさい。」
「うん!
ごめんダルおじちゃん、ボク今日はここに泊まるよ。お姉ちゃんから言われてたんだった」
「そ、そうか、タズ、俺たちはただの案内だからな、気にするな。元気でな・・・」
アスターとタズがただならぬ関係であることを察した奴隷商人らは分が悪いとみて慌てて退散しようとした。
アスターはそんな奴隷商人たちを睨み付けて制した。
「・・・お主ら。この子は我が教会で保護する。もう売り物になると思うなよ。」
すると奴隷商人は観念したかのような表情を浮かべた。
「・・・ああ、わかったよ。この子を幸せにしてやってくれ・・・いい子なんだ。頼む」
「ほう・・・どうやらすっかり毒が抜かれているようじゃな」
「ばいばい!ダルおじちゃん!ありがとね!」
てくてくとダルの足元にやってきて抱きついて感謝を伝えるタズに奴隷商人も頬を緩ませて頭を撫でた。
「ああ、またな」




