非日常
「さぁ、用が終わったから帰るぞ」
武蔵と雪が居る場所まできた周防は、そう言った。
剣をひと払いし、振りかざそうとした。
武蔵はその行動に違和感を感じた。
「元の世界に戻るには、逆さ礼拝堂に剣を突き刺すのでは?」
剣を止めた周防が答えた。
「あれは若狭が作ったシステムだ」
若狭が頬を指で掻き、苦笑した。
「万が一、この世界に迷い込んだ人用にね。役に立ったでしょ」
疑問が解決し、今度こそ帰る時が来た。
「アメリアさん、今度はお別れが言えます。今までありがとうございました」
雪がアメリアの手を握った。
「まさか、過去の英雄を連れてくるとは思いませんでしたよ。こちらこそ、ありがとう」
周防が剣を振りかざした。
光に包まれ、眩しさに目を閉じた。
目を開けるとそこは、開かずの扉二号の前だった。
時計を見た。
時間は十分ほどしか経過していなかった。
「戻ってきちゃった……」
雪がしみじみつぶやいた。
「そろそろ下校時刻だから帰れ」
教師の顔に戻った周防が帰宅を促した。
俺たちのちょっとした冒険はこれで終わった。
アメリアはサラ女王の謁見の間にいた。
「此度の働き、まことにご苦労じゃった」
サラ女王は避難もせず、あの騒動の中、玉座に座り続けたと聞いたとき、アメリアは思った。
「陛下は過去の英雄が来ることまで見えていたのですか」
アメリアが思った疑問をサラ女王へ聞いた。
サラ女王は笑うだけだった。
そして、違うことを話し始めた。
「……我にも、この国の外に対して野望がなかったわけじゃない。だが、あの黒い魔獣が見えていた。そして、荒廃した大地も。外へと向かった者たちとの違いは、見えていたかの差でしかないのじゃ」
サラ女王は一瞬、目を閉じた。
次の瞬間にはいたずらを思いついた目をし、にやりと笑った。
「今回のことを吟遊詩人たちに謳わせ、後世に残すのじゃ」
遠い世界の地で武蔵と雪は英雄を導いた賢者として語り継がれた。
元の世界に戻ってきた翌日の放課後、メディア部の部室で、雪が武蔵に聞いた。
「武蔵くん、私が書いた企画書はどこ?」
確か、英雄の部屋で最後に見た記憶があるが、その後はどうしただろうか。
考えた結果、一つの答えに行きついた。
「やばっ、向こうの世界においてきた……」
雪は腕を組んで、はぁと大げさにため息をついた。
「しょうがないなぁ……次の企画なんだけど、どっちがいい?」
「何と何だ?」
嫌な予感しかしない。
「教頭先生のヅラ疑惑を本人突撃インタビューと、女子にアンケートして男子の生え際後退ベストイレブンを決定!」
「どっちも却下だ!」
こうして、俺の非日常が戻ってきた。
ご愛読ありがとうございました。




