ぺトリコール
少しの間だけ降った小雨が残していったのは、どこか懐かしさを感じさせる土の匂いだった。対峙した相手を前にして、パーシーは深呼吸をして思いに耽る。凄いものを見た、それがウミストラと旭の激突を見て浮かんだ感想だ。どちらの実力も、頂に届きかけた、正しく圧倒される戦いだった。
親友の言っていた言葉の意味が少しわかるような気がした。数分前の落ち着きが嘘のように、心臓がバクバクと拍動する。緊張のそれとはまた違う、興奮の脈動。正直に言えば、この状況に昂っているのだ。
目の前の相手だけに限らない。これから先ぶつかる相手があのレベルだと妄想し、不敵な笑みが抑えられなくなっている。これまで、本当の意味でパーシーの相手になる人物はほとんどいなかった。存在していたとしても、実際に戦うことはなく縁が切れることもあった。だから、これからの戦いが楽しみで仕方がないのだ。
この日、パーシーと対戦したクラス・ジョカのシード枠、ルキド・クィンツァートは後にこう語った。
それは、あるいは獄蝶のジョカのように、対峙したその瞬間に死を連想させる怪物であったと――
(やばいなぁ、あれ。勝てんのかな?)
強さの推量くらいは一定のレベルに達している魔法使いならばできるものだ。相手の力量を正しく見極めることは戦場での生死に繋がる。だからこそ、ルキドは自分の目が間違っていることを祈る。そうでなければ、もしかすると、自分を含む誰も勝てないかもしれないと、冷や汗を流した。
「ちょっとはその覇気隠したら?」
「雑魚を散らすにはちょうどいいのよ。あんたも白旗上げとく?」
「いやぁ、ボクはもうちょっと足掻いてみようかなって」
「そう、じゃあ――」
どうなっても知らないから
耳を塞ぎたくなるような絶望的な一言が耳を過ぎったのと同時に、ルキド・クィンツァートの世界が歪んだ




