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07. 未知との遭遇

誤字報告いただいて調べた結果、認識した事実。

「ふんじばる」は「ふんばる」の方言だとばかり思っていたのですが、

「縛る」の方言でした…。なんてこと…。

本編では「ふんばる」に修正済です。ご報告ありがとうございました。


それから、マリージュは、学園でもリュカと一緒にいることが増えた。


一緒に立ち向かう約束をしたこともあるが、そもそも『得体の知れない何か』に興味深々だった。


(お化け的なものかな? わたし見たことないんだけど、どんなのだろ。

 おどろおどろしいカンジかな? 血みどろだったりするのかな?)


リアルは未経験なので いざとなったら違うのかもしれないが、JK時代は映像は全然イケるクチで、ホラー映画観ながら血の滴るレアなステーキを食すことにも抵抗感のない人種だったので、フツーに楽しみで仕方がない。


マリージュが未知との遭遇に心を弾ませていたら、突然リュカが、背後から首筋に両腕を回してきた。


途端に周囲から上がる、黄色い悲鳴。


いわゆるバックハグというやつなのであるが、先日すがりつかれたばかりのマリージュは、そうは解釈しない。

例の『得体の知れない何か』のお出ましに、リュカが怯えているんだと思ったのだ。


「リュカくん出た?出たの? どこ? わたし見えないかも」

「うん。出たね。 ほんとに見えない?」


リュカの目線の先を追って前方に視線を送るが、こちらに向かってくるヒロインちゃんしか見えない。


「うーんダメかも。見えなくても殴れば倒せるかな?当たると思う?」

「当たるね。でもマリージュの拳が心配だから、殴らなくていいよ」

「うわあ当たるんだ!?」


なぜかウキウキしているマリージュを、リュカは温かい目で見つめる。

再びあがる、黄色い悲鳴。


その黄色い悲鳴は、『リュカの穏やかな微笑み』という眼福な光景を目の当たりにした歓喜から発せられたものなのだが、マリージュにとっては日常の風景なので歓喜の意味がわからず、悲鳴の意味を正確に把握することができなかった。


リュカが怯えている(ような気がする)状況からして、得体の知れない何かに対するものとしか考えられなかったのだ。


(この悲鳴… 恐怖をはらんでいるようにはあんまり感じられないけど、

 リュカ教のみなさんにも『ナニか君』が見えてるってことよね?

 何でわたしには見えないんだろう? すっごい見たかったのに…)


マリージュは心底落ち込んだ。

たぶん、この場で一番見たいと思っているのはマリージュなのに、そういう人間に限って見えないとか、ナニか君たら つれないではないか。


そんなところにヒロインちゃんが到着し、リュカに話しかけてきた。


「リュカ様、こんにちは! こちらの方は?」


にっこりと微笑みながら、上目遣いで見つめるヒロインちゃん。

大変かわいらしい。『これぞヒロイン』という印象である。


が、リュカは無言のまま、マリージュに回している腕に力を込めた。


(…あれ? リュカくん警戒してる?)


ちらりとリュカの表情を覗き見ると、不機嫌そうに眉間に縦皺を寄せて、ヒロインから視線を外していた。


(もしかして、ヒロインちゃんがとり憑かれてるの…?)


リュカからは怯えは感じられないように思うが、顔には出さないだけでやっぱり本当は怖かったりするのかもと、マリージュは推察してみる。


そういえば先ほどから、じわじわ密着度があがっている気がする。

気心知れたマリージュにしがみついていないと不安なんだろうか。

それとも、足に力が入らなくなってきていて、支えを必要としているとか…?


「リュカくん、もしかして立ってるのしんどい?

 リュカくん大きいから絶対引きずっちゃうけど、

 体力続く限り頑張って引きずるから、そこはごめんね?」


ハグをハグとも思わないマリージュにできる解釈なぞ、こんなもんである。


「ありがとう。やっぱり俺のリジュは、いじらしくて可愛い」


リュカはふんわりと微笑みながら、胸やけしそうなほどの甘さの何かを四方八方に撒き散らかし、周りには黄色い阿鼻叫喚が巻き起こった。


「リュカくん、振るい落とされたくなかったら、

 いま鳥肌で震えちゃうようなこと言っちゃダメだよ」


そんな甘さをぶち壊しながらも、リュカを落とさないようにと力強く踏ん張るマリージュに、リュカは後ろから頬を摺り寄せながら、うっそりと微笑んだ。


その光景に、ヒロインちゃんは、悲しそうに眉を下げる。


「あの、リュカ様…?」


一向に返事を返してもらえず、ヒロインちゃんは瞳をうるうるさせる。

それでもリュカは完全スルーである。

声を発しないどころか、ちらりと視線を送りさえしない。


(こりゃダメだ。リュカくんの怯えをある程度払拭しないと、

 とり憑かれているヒロインちゃんには、近づくことすら難しそう。

 恋愛モードの発動は、もうちょっと先かなあ…)


となればここは、マリージュの出番でいいはずである。

当て馬として、適度なスパイス投下ができるんではなかろうか。


「あの、ごめんなさい? リュカ様、ご気分が優れないようですので、

 ご休憩いただいた方がよろしいかと思いますの。

 申し訳ございませんが、失礼させていただきますね?」


「え、はあ…?」


リュカは、誰の目から見てもご機嫌よろしく、マリージュに絡みついている。

『ちっとも、全く、さっぱり、具合が悪そうではない』

全観衆の総意であった。


でも、それに唯一気づいていないマリージュは、自分より遥かに大きいリュカを何とか運ぼうと、懸命に引きずろうとしているし、

リュカはリュカで、自力で普通に立てているクセに、

「ありがとうリジュ。私のために健気に頑張ってくれて嬉しい」

なぞと嘯いて、マリージュに甘い視線を送り続けている。


リュカ教の信者たちも、そんなリュカをうっとりと見つめているだけで、リュカとマリージュの間に割って入ろうとする者は一人としていない。


ひとり取り残された格好のヒロインちゃんは、呆気にとられたまま立ち尽くすしかなかった。



** こぼればなし **


リュカの一人称は、人前では「私」ですが、マリージュの前では「俺」です。

もちろん素は「俺」の方です。

マリージュは「わたし」。

「わたくし」ではないことを明示するべく、あえて平仮名にしています。

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