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コレが溺愛に見えますと?  作者: 真朱


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06. ミステリーだかサスペンスだか


「リュカくん、お茶の味がブレてるけど、まだ動揺がおさまらない?」


リュカが落ち着きを取り戻した後(※ただし、一連がフェイクである。)

バリケードはそのままに、リュカがお茶を淹れてくれたのだが、その際にマリージュが零した言葉がコレである。


動揺していることに気づいた根拠として述べたにすぎないとは言え、

容赦なく『お茶が不味い』という趣旨のセリフをぶち込んでくるマリージュに、思わずリュカは、ふっと吹き出した。


完全に無意識のマリージュは、リュカが何に笑ったのかわからず、キョトンとする。


「どしたのリュカくん。何かおもしろかった?

 でも、笑えるくらいには回復してるってことだよね?」


あまり物事を気にしないマリージュにしてみたら、今のやりとりのどこに笑う要素があったのかという疑問は若干あれど、何かに怯えていたはずのリュカに笑みを零す余裕が戻ってきたのであれば、もうそれで良いような気になるのである。


そんな、心配してるんだかしてないんだか微妙としか言えない扱いの中に、マリージュらしさを見たリュカは、相好を崩しながら、

「うん、リジュがいてくれるからね」

なぞと、しれっと宣った。


リュカは普段、マリージュを愛称では呼ばないのだが、ときどき『リジュ』と呼ぶことがある。

どう使い分けてるのかはマリージュにはサッパリわからないのだが、何か意図はあるんだろうか。単に気分だろうか。


リュカの意図云々からは少し外れるが、映画なんかだと、普段と違うことをすると事件とか起きたりするものである。

『呼び方を変える』程度のことでも、そういうフラグ的なものに成り得るんだろうか。実際リュカは怖い思いをしたわけだし、また起こるっていう匂わせの類の可能性はあるんだろうか。


なんてことをぼんやり考えて、突如マリージュはある可能性に思い至った。



(…もしかしてあのゲーム、ミステリー要素があった…?)



JK時代の知識から言うなら、漫画とかゲームとかにはある程度のお約束があり、男性キャラの定番パターンから推察するに、リュカは『クールな知性派』枠だと思われる。


知性派なんて余所行きな表現をしてみたものの、要するに腹黒ポジションのことだし、マリージュの認識としてもリュカは腹黒である。

今のところマリージュに実害は及んでいないので気にしていないが、会話の端々に黒さがにじむことはあるし、リュカ自身、マリージュに己の黒さを隠そうとはしていないように感じている。


そんなリュカが怯えて縋り付いてくるなんて、つまりは命の危険を感じ取っているとかそういうことなのではないだろうか。

だってバリケードまで張るのだ。『何となく怖い』とかいうソフトなレベルだとは到底思えない。


例の記憶の中の妹は王子様一辺倒だったので、あのゲームの流れは王子様について…しかも朧気にしかわからないが、王子との交流は、ただもうひたすらイチャこらしていた印象しかない。


でも、他のキャラとの交流も同じテイストばっかりじゃ、ゲームのプレイヤーだってつまらないはずだから、他のパターンも織り交ぜてきているはず。

とすると、腹黒リュカが、ミステリーだかサスペンスだか担当をあてがわれても、それはもう順当というかお約束と言うか、納得感しかない。


それ故に『()()()()()()()()()()』。


(そっか、そういうことだったんだああぁぁぁ!!)



平和な日常に、じわりと非日常の気配が滲む。

ほんの少しだけ刺激的な、どきどきワクワクするような何かを感じて、マリージュは心が沸き立っていくような感覚を覚える。


学園に入学して、もしかしてゲームの世界なのかもと気づいた時、

女の子向けゲームのことなんか何もわからない、格闘ゲーマーとしての記憶しかないマリージュが、何故このポジションに置かれているんだろうとか思わなくもなかったのだが、その疑問がスカッと晴れた気がした。


得体の知れないナニか(※マリージュは『ナニか君』と命名した)と戦う気概と術が求められているのだ。

きっと、そういうことなのだ。


俄然、格闘ゲーマーの闘争本能に火が付いた。


「おっけーリュカくん! わたし全然怖くないから、一緒に立ち向かうよ!」


マリージュはメンタルの強さだけなら大抵のものに勝てる。リュカには勝てないにしても、少なくとも女子でマリージュを超えるメンタルの持ち主はまずいないと言ってしまえるくらいには頑強なメンタルの持ち主と言えるのだが、戦う術について言えば、激しく疑問が残る。


JKマリージュは、格闘ゲーマーとしては場数もこなしていたのかもしれないが、それは単なるキャラクター操作にすぎない。


指先のボタン操作で、画面上に技を繰り出していたダケにすぎず、

己の身体から繰り出せるリアルな技が何かあるわけもなく、

生身では全くもって無力だという事実に気づくこともなく、

マリージュはもう勝てる気になっていた。


だって、こういうのは気持ちが物を言うのだ。

マリージュの持論としては、気持ちで負けなければ、それはすなわち、いずれは勝てるのだ。

格ゲーだって始めは勝てないけど、しつこく食らいついていくうちに、だんだん勝てるようになっていくのだ。


そういうものなのだ!


そんなマリージュの盛大な脳内暴走に当然気づきながらも、リュカはそこは軽くスルーして、


「ありがとうリジュ。これからはなるべく一緒にいてね?」


と、満面の笑みを浮かべたのであった。



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