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コレが溺愛に見えますと?  作者: 真朱


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10. 未知との遭遇

誤字報告いただいて調べた結果、認識した事実。

「ふんじばる」は「ふんばる」の方言だとばかり思っていたのですが、

「縛る」の方言でした…。なんてこと…。

本編では「ふんばる」に修正済です。ご報告ありがとうございました。


 それからマリージュは、学園でもリュカと一緒にいることが増えた。

 一緒に立ち向かう約束をしたということもあるが、それよりも何よりも、『得体の知れない何か』に興味深々だったのだ。


 (お化け的なものかな? わたし一度も見たことないんだけど、どんなのなんだろ…。おどろおどろしいカンジかな? 血みどろだったりするのかな?)


 リアルは未経験なのでいざとなったら違う可能性もあるが、JK時代は映像は全然イケるクチで、スプラッタ映画観ながら血の滴るレアなお肉を食すことにも抵抗感のない人種だったので、フツーに楽しみで仕方がない。


 マリージュが未知との遭遇に心を弾ませていたところ、突然リュカが、背後から首筋にするりと両腕を回してきた。

 途端に周囲から上がる、黄色い悲鳴。

 いわゆるバックハグというやつなのだが、先日すがりつかれたばかりのマリージュは、そうは解釈しない。

 例の『得体の知れない何か』のお出ましに、リュカが怯えているに違いないと思ったのだ。


 「リュカくん出た? 出たの? どこ? わたし見えないかも…」

 「うん。出たね。ほんとに見えない?」


 リュカの目線の先を追って前方に視線を送るが、マリージュの目には、こちらに向かって歩いてくるヒロインちゃんしか見えやしない。


 「うーんダメかも…。見えなくても殴れば倒せたりするのかな? 当たると思う?」

 「当たるね。でもマリージュの拳が心配だから、殴らなくていいよ」

 「うわあ! 当たるんだ!?」


 なぜかウキウキしているマリージュを、リュカは慈愛あふれる微笑みで見つめている。

 再び、周辺各所から上がる黄色い悲鳴。


 この黄色い悲鳴は、『リュカの穏やかな微笑み』という眼福な光景を目の当たりにした歓喜から発せられたものなのだが、マリージュにとってリュカの微笑みは日常の光景でしかないのでその歓喜を理解することができず、悲鳴の意味を正確に把握することは適わなかった。


 リュカが怯えている(ような気がする)状況からして、得体の知れない何かに対するものとしか考えられなかったのだ。


 (この悲鳴…恐怖をはらんでいるようには全然感じられないけど、悲鳴をあげるってことはリュカ教のみなさんにも『ナニか君』が見えてるってことだよね? 何でわたしには見えないんだろう…すっごく見たいのに…)


 マリージュは心底落ち込んだ。

 たぶん、この場で一番見たいと思っているのはマリージュなのに、そういう人間に限って見えないとか、ナニか君たらつれないではないか。


 そんなところにヒロインちゃんが到着し、リュカに明るく声をかけてくる。

 「リュカ様、こんにちは! あの、こちらの方は…?」


 にっこりと微笑みながら、上目遣いで見つめるヒロインちゃん。

 (うん。こんなに近くで見たのは初めてだけど、噂に聞いているとおり大変かわいらしいわ。『これぞヒロイン』って印象だよね)


 が、リュカは無言のまま、マリージュに回している腕に力を込めた。


 (…あれ? リュカくん警戒してる…?)


 ちらりとリュカの表情を覗き見ると、不機嫌そうに眉間に縦皺を寄せて、ヒロインから視線を外していた。

 その様子から推察できることと言えば。


 (もしかして、ヒロインちゃんがナニか君に取り憑かれてるってこと…?)


 リュカからは怯えは感じられないのだが、顔には出さないだけでやっぱり本当は怖かったりするのかもしれない。

 そういえば先ほどから、じわじわ密着度が上がってきている気がする。気心知れたマリージュにしがみついていないと不安ってことだろうか。

 それとも、足に力が入らなくなってきていて支えを必要としている、とか…?


 「リュカくん、もしかして立ってるのしんどい…? リュカくん大きいから絶対引きずっちゃうけど、体力が続く限りは頑張って引きずるから、そこはごめんね?」


 ハグをハグとも思わないマリージュにできる解釈なぞ、こんなもんである。

 そしてリュカの方はと言えば、マリージュがおかしな解釈をしていることに気づいていないはずがないのに、そんなことはお構いなしとばかりに、しれっと囁くのだ。


 「ありがとう。やっぱり俺のリジュは、いじらしくて可愛い」


 リュカはふんわりと微笑みながら、胸やけしそうなほどの甘い何かを全方位に向けて無差別に撒き散らかし、周りには黄色い阿鼻叫喚が巻き起こった。


 「リュカくん、振るい落とされたくなかったら、今は鳥肌で震えちゃうようなこと言ったらダメだよ」


 そんな甘さをぶち壊しながらも、リュカを落とさないようにと力強く踏ん張るマリージュに、リュカは後ろから頬を摺り寄せながら、うっそりと微笑んだ。


 その光景に、ヒロインちゃんは悲しそうに眉尻を下げる。

 「あの…、リュカ様…?」

 一向に返事を返してもらえず、ヒロインちゃんは瞳をうるうるさせる。それでもリュカは完全スルーである。声を発しないどころか、ちらりと視線を送ることさえしない。


 (ありゃ~…。目も合わせたくないだなんて、これ相当なレベルじゃない…? リュカくんの怯え…と言うより忌避感? を払拭しない限り、ヒロインちゃんはリュカくんに近づくことすら難しいように思うんだけど…。恋愛モードの発動はもうちょっと先ってことなのかなあ…)


 となれば、ここはマリージュの出番でいいはずである。

 当て馬として、適度なスパイス投下ができるんではなかろうか。


 「あの、ごめんなさい。リュカ様、ご気分が優れないようですので、ご休憩いただいた方が良ろしいかと思いますの。申し訳ございませんが、失礼させていただきますね?」

 「え、はあ…?」


 リュカは、誰の目から見てもご機嫌よろしく、マリージュに絡みついている。

 (((ちっとも、全く、さっぱり、具合が悪そうではない)))

 全観衆の総意であった。


 でも、それに唯一気づいていないマリージュは、自分より遥かに大きいリュカを何とか運ぼうと懸命に引きずろうとしているし、リュカはリュカで、自力で普通に立てているクセに、

 「ありがとうリジュ。私のために健気に頑張ってくれて嬉しい」

 なぞと嘯いて、マリージュに蕩けきった視線を送り続けている。


 リュカ教の信者たちも、そんなリュカをうっとりと見つめているだけで、リュカとマリージュの間に割って入ろうとする者は一人としていない。


 ひとり取り残された格好のヒロインは、呆気にとられたまま立ち尽くすしかなかった。




** こぼればなし **


リュカの一人称は、人前では「私」ですが、マリージュの前では「俺」です。

もちろん素は「俺」の方です。

マリージュは「わたし」。

「わたくし」ではないことを明示するべく、あえて平仮名にしています。

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