メガネの曇り part4
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これの他に長編として『白い紫陽花』という小説も書いているのでそちらもよろしくお願いします。長編は毎週土曜日の午後に更新しています。
「帰って来たのか。久しぶりだな。」
「そうだね。2年ぶりくらいかな。色々と忙しくて帰ってこられなっかったけど。夏休み中はこっちにいる予定だからよろしくお願いします。」
「そうか。ゆっくりしていけ。ここはお前の家なんだから。待ってろ。今なずな呼んでくるから。」
そう言って父さんは診療室に向かって行った。父さんがなずなを呼びに行ってすぐに、なずなが飛び出して来た。
「亮介なの?」
「そうだよ。ただいま。」
「久しぶり。」
なずなは近づいて来て自分を抱き寄せた。身長は自分よりは少し低め。女性らしい体系で何より香水なしでいい匂いがする。
「恥ずかしいよ。」
「大きくなったね。5年ぶりだもんね。急に黙って出て行ってごめんね。」
「いいよもう。すぎたことだし。」
自分もなずなのハグに応えるように抱きしめた。
しばらく、この体勢でいたかったがなずなは仕事中なので早めに切り上げることになった。
「亮介の部屋はそのままにしてるから。掃除もきちんとしてるし。きれいだと思うよ。長旅で疲れてるだろうから。ゆっくりしてね。」
そう言い残しなずなは仕事に戻った。
久々に自分の部屋に入る。なずなの言った通り、部屋はきれいに整理整頓されていた。男子特有の恥ずかしいものは全部向こうに持って行ったはずだから心配はない。多分。スーツケースから荷物を出していると、部屋のドアが少しあいた。
「入っていい?」
「いいよ。」
なずなだった。
「仕事はいいの?」
「お父さんが今日はもういいから久しぶりに2人っきりでいなさい。って言ってくれたから。」
赤面して応えるなずな。その反応を見て自分も恥ずかしくなって来た。
「彼女とかいないの?」
久しぶりに帰って来て、最初の質問がこれか。まずいな。かなり恥ずかしい。
「いないよ。できたこともないし。向こうだと基本1人でいるから。」
「そうなんだ。よかった。」
何かボソボソと話していたが聞こえなかった。
「なずなこそ、婚約者とかいるの?」
「何、突然。いるわけないじゃん。」
「そっか。もったいないな。なずなきれいなのに。」
なずなは顔を伏せて黙ったままだった。
「夏休み中はずっとこっちにいるからよろしくね。」
「うん。」
何を話していいか分からなくなって無言の時間が続く。仕方なく持って来た荷物を整理整頓する。
「私も手伝う。」
急に立った反動でなずなはつまずき自分にもたれかかって来た。
「ごめん。すぐに離れるね。」
離れようとするなずなを抑え、抱きつく。
「ごめん。離れたくない。このままがいい。久しぶりに好きな人と会えたから。」
少し体をはなし何かを確認するように顔を近づける。なずなは抵抗することなく自分を受け入れてくれた。無論、自分にとって初めてだった。
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