メガネの曇り part3
できるだけ毎日投稿しています。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
これの他に長編として『白い紫陽花』という小説も書いているのでそちらもよろしくお願いします。長編は毎週土曜日の午後に更新しています。
神社の参拝を済ませ、足早に実家に帰る。自然の中に不自然に現れる白い家。東京ドーム3つ分と、以前父さんが自慢していた。父さんは昔、大学病院で働いていて副医院長にまでなった人だ。心臓の世界では知らない人がいないほどの権威で、手術の予約は2年後まで埋まっているほどだったらしい。その頃はまだ自分も幼くてあまり覚えてはいない。スケジュールがパンパンなため家族の時間はほとんどなかった。そんな父さんがなぜこんな田舎にいるかというと、母さんが死ぬ時に自分をよろしくと頼んだかららしい。母さんの死因は心臓病だった。自分が、一番自信があって、実績もある場所で最愛の人を亡くしたのだから父さんのプライドはズタズタだったのだろう。そんなこともあり、決まっている仕事だけを片付けて自分と一緒にこの田舎町に引っ越してきた。この町には医者がいなく、地元の人からとても歓迎された。馬鹿でかい家兼診療所を作って積極的に患者さんを迎えた。全盛期よりは仕事量が減ったので父さんとの時間もできた。その時が一番、仲が良かった気がする。こっちに引っ越してきてから2年後に突然あの女がうちにきた。なずなを連れて。自分との時間よりあの女との時間の方が優先されてしまって、自分は孤独感に襲われていた。そんな時に一緒にいてくれたのがなずなだった。なずながうちに来たばかりのころ、なずなには痣が各所にあった。どうやらあの女が暴力を振るっていたらしい。でも、うちに来てその暴力がなくなって安心していた。寂しい自分と、少し安心して心に余裕があったなずなは自然に仲良くなった。今思い返すと、年上で心の余裕があるなずなに自分が一方的に甘えていたのかもしれない。あの女が出ていく時に、なずなを連れて行こうとしたがそれを拒否した。またなずなに手を上げようとした時にもともとあの女のことをよく思っていなかった自分が盾になった。あの時初めて人を殴った。そのことで結果的にあの女は家から出ていき、父さんと喧嘩になった。でも、なずなが自分たちと暮らすことを選んでくれたことは嬉しかった。だからこそ、都市部に行ってしまったことが悲しかった。今はまだ診療時間。表玄関から行くと、迷惑になってしまうと思い、裏口から入った。そこにはちょうど休憩中だった父さんがいた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
評価、レビュー、感想、コメント、ブックマーク等ありましたらよろしくお願いします。
明日もぜひ読んでください。




