27 世界の理
一面白い世界へ来て数日。
私はニーネからこの世界の歴史の授業を受けていた。
本来であればこれは彼女ではなくフォルトの役目だったそうなのだが……
教師と生徒、両方から指名されたメイドのニーネがこうして部屋に来ていた。
彼女から教えられた話をまとめるとこうだ。
この世界では代々男なら聖王として、女なら聖女として呼ばれた者が国王としてトップに立ち、交代してきているという。その期間は大抵数年で、十年も王座に座り続ければ長いほうなのだそうだ。どちらにせよ、リアルの歴史しか知らない私には早すぎるという感想しか出てこなかった。
「どうしてそんなに短命なの?」
「戦争ですよ、ロゼ様。」
ホットミルクを継ぎ足しながらニーネは重々しく語る。
ちなみに私はこの年でまだ身長が伸びるのではないかと思うほどカルシウムを摂取していた。そろそろココアが飲みたいところである。
「ここは白薔薇領。黒薔薇とは戦わねばなりません。」
彼女の表情は暗い。
「そうなんだ……」
やはり、ゲームと同じなのだろうか。
そしてニーネは信じられないようなことを言う。
王が死ぬ度に、そのつど城外の町や村は消え失せ全国民が消滅する──ニーネの言葉を使えば白紙に戻る──というのだ。聖騎士団12人はそのまま城の中で次の主の誕生を待つ。
あまりにもぶっ飛んだ話ではあるが、彼女が嘘を言っているようには見えなかった。
そしてここの現王はこの私。政治のことなんてまるで知らないただの女子大生。
私が戦争で死ねば今この世界に生きる住民全てが死ぬことになる。
その重圧が恐ろしくて吐き気がした。
それだけではない。
もしここで死ぬと……現実世界へ帰れるのではないか、という根拠の無い考えが浮かぶ。
確証に足る証拠は一切無い。その為その検証にはリスクが大きすぎる上私一人の命では済まないことから、容易には試すことが出来ない。私にはその度胸はなかった。……リアルへの執着が薄れているのかもしれないという可能性を考えると、自分が恐ろしい。
「『神』は畏怖の象徴なのです。」
そう、静かにニーネは言った。
この世界にも神はいるのだという。しかしその存在は私が知っている神の認識とは全く異なっていた。
「神は悲劇をもたらす存在」
死を許されない聖騎士は「畏怖の象徴」を『神』と敬称した。
すがられる存在であるはずの神が、この世界では切除されていた。
その話を最後に、今日の勉強が終わった。それと同時にニーネから分厚い冊子を渡される。
また読めない歴史書かなにかかと思ったが、開いてみると何も書かれていない綺麗なノートだった。
不思議そうにニーネを見ると「日記として使ってくれ」とのこと。
万年筆がセットされており、羽根ペンじゃなくてよかったと心底安堵した。
ご精読、ありがとうございました(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)
これからもどうぞよろしくお願いします。




