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8 街へ





 森の中を歩き始めて三時間は経過しただろうか、視線の先に差し込む明かりを見るに、漸く森から抜けられそうな所までやって来た。

 道中、俺とルアンさん達はお互いに質問したり質問されたりと、耐える事無く会話し続けていた。体力は使うものの、同じ景色の中を歩き続けるという精神的疲労を考えれば、それはかなりの気休めになっていた。



「記憶がない、か……」



 一人だけ全くの手ぶらで集合場所に現われたのは四人から見ても相当不思議な状態だったらしく、四人共俺の返答に興味を示していた。なので記憶喪失という設定を合わせて話した所、意外な事に全員が俺の話を信じてくれた。こっちの世界では記憶喪失はよくあるのか……?



「そりゃ何も持ってなくて当然だな。大方、盗賊にでも襲われて、その時に記憶操作系の魔法を使われたんだろ」


「記憶操作系の魔法って、そんなのがあるんですか?」


「ああ。っても、余程実力のある魔術師じゃないと使えないっていうから、かなり大きな盗賊グループに狙われたんだろ。お前さん、中々ツイてないなぁ」


「はは……」


「笑い事じゃない。そんな危険な魔法を使える盗賊グループがあるのなら、早急に対策するべき」


「スーシィの気持ちは分かるけど、まだそうと決まった訳じゃないから。確固たる証拠が無いと、上も動くに動けないと思うよ?」


「……それもそうね」


「まぁ何にせよ、記憶操作系の魔法ってのは未だに解除方法の分からない未知の魔法なんだし、寧ろ新たな人生だと思って割り切った方が気も楽なんじゃないか?」


「デラ、そんな簡単な話では……」


「いや、意外とそれぐらいの気持ちの方が精神的に負担は少ないと思うよ。ねえ、ライト君?」


「まぁ、確かにそうですね」


「……君は大物になれるよ」



 呆れるスーシィさんに苦笑いを向けていると、何時しか森を抜けていた。

 森の先に広がっていたのは聞いていた通りの平原地帯で、膝下ぐらいの背しかない低木草がずっと広がっている、見晴らしのいい場所だった。



「ここがテラッサ平原といって、出現するモンスター的に見れば比較的穏やかな場所だよ。

……さて、余り先に行くとモンスターと遭遇しそうだし、ここら辺で休憩しようか」



 ルアンさんがそう言うと、他の人達はすぐさま荷物を横に倒してその上に腰掛ける。道中に腰掛けられる様な岩や切り株が無い時は、自分達の荷物を椅子代わりにする事はよくあるらしい。その際、中身が壊れないように注意するのが大事なのだとか。


 荷物の持っていない俺は当然地面に座り込むしかない訳で、その場に腰を下ろしているとマークさんから水の入ったコップを差し出された。



「……飲め」


「あ、有難うございます」


「うーん、やっぱ自分用の荷物を持ってないのは不便じゃねーか?

かと言っても、それを買う金も無い」


「うぅ……すいません」


「……よし、そう言う事なら僕が幾らか貸してあげるよ」


「ええっ!? い、いや流石にお金は……」


「ははっ、僕が良いって言っているんだから大丈夫だよ。それに、あくまでも”貸し”だからね。ちゃんと返って来るなら別に問題無いさ」



 な、なんて良い人なんだこの人は……!? こんな得体の知れない他人にここまで良くしてくれるだなんて、これが世にいう『身も心もイケメン』と言うヤツなのかっ。


 せっかくの好意を受け取らないのも申し訳無いので、ルアンさんの提案を受ける事にした。すると、巾着が一つ手渡された。



「これは?」


「君に貸しておくお金だね。確か全部で5000リン入っていると思うから、ちょっと中身を確認して貰えないかな」



 言われるままに巾着の中身を確認すると、五百円玉より少し大きめの銀貨が五枚入っていた。これ一枚で1000リンなのだろう。どれぐらいの価値があるか分からないけど。



「組合への登録が2000リンで、その後の初心者講習会が1500リン。初心者用装備なら残りの1500リンで揃えられるはずだから。詳しい話は組合に行ってから聞けばいいと思うよ」


「なるほど。すみません、何から何まで」


「何、これも未来ある若者の為への先行投資と言うヤツさ」


「ルアン、お前その言い方はジジクサいぞ?」


「なっ……ま、まだ二十代だ!!」



 その後もデラさんのルアンさんイジリが続き、それを断ち切るように立ち上がったルアンさんの掛け声で休憩は終了した。


 平原を少し進んで行くと遠くの方に建造物の影が映り込む。それが煉瓦造りの建物群だと気付くのは、もう少し歩いてからの事だった。



「お、そろそろラザニアの街が見えて来たな」



 見えて来たのは目的地であるラザニアの街というらしい。


 近付くにつれてその規模、賑わいが伝わって来る。街自体は石垣か何かで囲っているらしく、街の入り口と思われる場所には剣を腰に差した男が立っていた。

 その男がこちらに気付いたのか、手を挙げてきた。



「おおルアン達。もう帰って来たのか」


「収穫は無しだったけどね」


「そりゃ残念だったな。所で……そいつは新しいメンバーか?」


「あぁいや、冒険者組合に加入する予定の人だよ」


「へぇ……」



 男は頭のてっぺんから足のつま先まで、俺を品定めするかのようにじろじろと見まわして来た。そして俺と視線が合ったタイミングでそれを止めると、頭を掻きながら話し始めた。



「あーその、何だ。お前みたいな冒険者になりたての若者を何人も見送って来たから言わせて欲しいんだが、冒険者稼業は命懸けだ。恐らくどの仕事よりも一番命が軽く感じる世界だ、その事を忘れないでくれ」


「……はい。忠告有難うございます」


「うん。素直なのは良い事だ、その調子で先輩冒険者から色々教えて貰え。

ああ因みに、俺はここで番をやっているゾレオって言うんだ。冒険者やるなら良く顔を合わせるだろうから憶えておいてくれよ。未来の冒険者さん?」





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