第三夜
「 He then awoke to the real.」
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〜ユメから醒めた。〜
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月が輝くのを見て嗤った。
彼の人形は夢を忘れたのだろうか?
夢を、持つがゆえに。
目が醒めた。“目が醒めた”? 変な言い回しだ。私は、眠ってなどいないのに。
ご主人が閉じ籠られてから。
私は、重たいのか軽いかもわからない取っ手をどうするかもわからずただ立ち尽くしその場で蹲り。
ただご主人を想うだけで。
ムカツク道化師が何度も私を引き離そうとやってくる。大きなお世話なのに。
最果ての屋敷は、とどまってはならない場所だから。
「ドーリィ……」
ほら、またやってきた。
「何の用? 道化師」
「ここから、離れよう……?」
「嫌よ」
「ドーリィ!」
めずらしい道化師の剣幕に、私も息を飲む。普段有り得ない荒げた声に、私は余計体が強張る。
「……あ、すまない……」
謝る必要は、有ったろう。しかし、私が駄々を捏ねた子供でしかない限り、これは正当な怒声ではなかろうか?
ならば、謝る必要はその性質を失う。
「ドーリィ、何度も言うようだけれどね。きみの、ご主人は……」
また、その話。私は嘆息をそっと洩らした。
知ったことではないのに。道化師の。けれどしつこい。
[何]がこんなに必死にさせてるのだろう? 私には測り兼ねた。
「……泡沫兎がね、」
「“バブルラビット”?」
久方振りに聞いただろう。その名は特異な。
白いのに、『兎』と付くのに、アレはスタンダードの兎ではない。
何だろう。
「───“最果ての屋敷で、夢が終わり夢が始まる”と……」
私は、目を見開いた。
……まさか……。
「ご主人様?」
扉の向こうで音がした。
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