第二夜
「 a false reputation.」
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〜中身の亡い、好奇な噂。〜
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実に不愉快だよ。
私は道化師。皆がそう呼ぶ。
私が自ら名乗らずも、誰も彼もがそう呼ぶのだ。
「ヘイ、道化師」
兎が、呼んだ。兎、と言ってもあの耳長のヤツではない。白い毛がふわりと舞うが、周知の兎とは程遠い。
しかしヤツは兎、なのだ。
「なぁ道化師」
「何だい? 泡沫兎」
泡のように実像のゆらゆらぶくぶくしている兎は、私に言った。
「なぁ、道化師」
「だから、何かな?」
「“夢”が終わるぞ」
唐突だった。
「どこのだい?」
「“夢”が終わる」
「どこの?」
「『最果ての屋敷』だ」
目を、見開いた。
“最果ての屋敷”。この前行ったばかりだ。
「誰の、“夢”?」
「人形だ」
今度は繰り返さず喋った、泡沫兎。人形……。
「ドーリィ?」
「だろうがな」
ヤツに、躊躇いは無い。
「そうか」
ついに、費えてしまう。
不思議なモノだ。
あの娘の『魂』が永眠(眠り)に就くだけでなぜか安堵する。
「なぁ、道化師」
「何だい? 泡沫兎」
「新たな“夢”が始まるぞ」
「……。どこで?」
「“最果ての屋敷”だ」
「……なぜ?」
「さぁな。だが、“夢”が始まるぞ」
私は舌打ちした。左手に持っていた傘を広げる。と。
「なぁ道化師よ」
泡沫兎が私を呼び止めた。
「何だい?」
急いでいると言うのに。
「お前は人間が好きか?」
「嫌いだね。あの傲慢たる救いようの無い様は見ていて良い気分にはならない」
「だがあの娘は人間が好きだぞ。なぜならあの娘は人形だからだ」
「……」
「忘れるな、道化師。たとえお前が爵位持ちでも、夢を終わらせることは叶わない。なぜなら夢は永遠に生と死を繰り返すからだ」
私は、帽子を被り直した。
「私を過信し過ぎじゃ……」
「道化師よ」
「永劫回帰には誰も逆らえないぞ」
「さぁ」
「夢が」
「終わる」
「そして、」
「夢が、」
「始まる」
傘を広げ飛び立った私にもう泡沫兎の声は届かなかった。
永遠のサークル。
永遠に朽ちない《世界》。
枯れないココロ。
永遠に。
いっそ消滅してしまえば良いのに。
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