冒険前の習慣
今日は皮の鎧を身に付けて、キャンディスイーツへ向かう。
早めに行って、フルーツジュースの補充を行った。後は切り札も。
「おはようございます、ダンバルさん。今日はよろしくお願いします。」
鉄の鎧姿のダンバルさんは、いつも以上に威圧感が強い。長剣を腰にさし、鉄の盾まで装備している。
「おはようございます。スラダンジョンに行くの?店は大丈夫ですか?」
不安そうに聞いてくるが、しっかりした装備をしてくれている。ありがたいね。
「そうです。スラダンジョンです。そこで、店で使う魔石を集めましょう!」
店の魔石の在庫が少なくなっている。あと100日分くらいしかない。毎日冒険者が魔石を持ってきてくれるから、減ることはないが、理由をつけるならこれが一番良いだろう。
「わかった。店の為に頑張る。」
良かった。ダンバルさんに魔石の管理を任せなくて。在庫は俺とユカリさんが管理していて良かった。
ユカリさんがじっと見てくるが、俺は準備万端だ。
「ユカリさん。こちらに、チーズケーキとグレープケーキがあります。ぜひ皆さんで休憩中に食べてください。」
スイーツ空間収納からホールケーキ4つを取り出し、店員全員に見せる。
まだ9時前だから、お客さんはいない!
これさえあれば、俺達は自由だ!
「はぁ。わかりました。気をつけて下さいね。」
ユカリさんは、諦めた様に言うが、内心喜んでいるに違いない。俺が早くに店に来た理由は、ケーキを作っていたからだ。
「それじゃ行ってきます。」
俺とダンバルさんは、スラダンジョンへ向かう。
ダンバルさんがスラダンジョンの場所を知っているみたいなので、案内してもらう。
「店長、教会に行ってもいいかい。」
ダンバルさんは、冒険前には教会で無事を祈ってから行くみたいなので、一緒に行ってみる。
俺は一度も教会に行ったことがない。村に教会はないし、成人のステータス鑑定は、村に来た教会の僧侶にやってもらったのだ。
歩いていると、木造の建物が見えてきて、ダンバルさんが中に入る。木の長椅子があるので、座って祈るみたいだ。
ダンバルさんが、目をつぶり両手を合わせて祈っているので、同じ様に真似をする。
『キャンディ。やっとあなたは来ましたね。』
ん?
幻聴か?
ダンバルさんをみると、うっすらと赤く光っている。
なんだこれは?
再度手を合わせてみる。
『私の言葉が聴こえますか。あなたは世界中の』
「なんだ?」
自分の手をみると、うっすらと白く輝いている。周りをみるが、教会の人がじっと見てくるだけで何も言わない。
『ちょっと!キャンディ!聴こえるんでしょ!私の言葉を聴きなさい!!』
ヤバい。ヒステリックな女の声が聞こえる。教会から出るか。
『どこにいく!座れ!』
『座って祈れ!美しき女神、ヒスライト様と!』
ヒスライトってなんだ?
目をつぶり祈ってみる。
「おお。確かに美しい。」
目の前に生クリーム並みに白い長髪の女性が立っていた。一面真っ白なのは不思議だ。30歳程の美人な女性だ。
『ようやく来たわね。何で成人したのに教会に来ないの!』
「いや。村に教会が無かったし、畑を耕していたらそんな時間もないし。」
『確かにあなた事情は知ってるけど、私の力のおかげなんだから、私の事は知ってるよね?』
ヒスライトなんて女神、聞いたこともない。
「さあ?」
『さあ?ですって!豊作の神と同じくらい有名な神、スイーツの神とは私の事よ!』
スイーツの神ってなんだ?
神様に愛された人達は、聞いた事がある。神の加護をもらっているらしい。
「そのスイーツの神様が俺に何の用事があるのですか?」
『ありがとうございますって言って!』
「なぜ?」
『言って!』
すぐにキレる。この女神は感情的なのかな。
「ありがとうございます、ヒスライト様。」
『んふふ!よろしい!それではキャンディ!君は世界中に私のスイーツ達を広めなさい。これがスイーツ大全集よ。スイーツ神の加護もあげる!』
笑顔の女神が俺の頭を撫でる。
頭の中にスイーツの作り方が情報として流れ込んできた。
なるほど面白いな。
異世界のスイーツか。
どら焼きって美味しそうだな。だが材料がない。
アズキってなんだ?
この青い生物が食べる食べ物なのか?
謎だ。
スイーツに関連した事が、頭の中で瞬時に知ることが出来るようになった。
『それじゃよろしくね。たまには教会に祈りに来なさい。じゃあね〜。』
目を開けると、ダンバルさんも祈り終わったみたいだ。
「大丈夫?」
「うん。大丈夫です。ちょっと疲れただけなので。それじゃスラダンジョンにいきますか!」
寄付をして教会を出る。
よし!
さっさとスラダンジョンに行こう!
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