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カルロ王子のお妃選び 13

 *


 お妃選考会が終わってから、一か月が経過した。

 太陽の日差しで外が明るくなる。この世界にも空には太陽があり、前の世界と同じである。

 起き出したレーナは、先に起きていたアリアンナに挨拶した。


「おはよう」

「……」


 元気に挨拶するレーナとは対照的に、アリアンナは陰鬱な顔をしている。

 初めの頃は自分が何かしたのかと一々不安に感じていたが、それは全然関係なくて、構ってほしいとか、今日一日を怠けて過ごしたいとか、つまり、不機嫌でアンニュイな雰囲気の自分が大好きでわざと演じていると気づいてからは、一切気にせず放っている。

 今朝の不機嫌の原因も分かっていた。アリアンナの元にお妃選びの吉報が一向に訪れないからだ。


「もう通過者には通知が行っているのかなあ」


 痺れを切らして諦めかけているアリアンナは、深いため息を吐いた。

 悲劇のヒロインのようだ。


 玄関でカタッと音がした。


「今、誰か来なかった?」


 すっかり物音に敏感となっている。


「誰も来ていないわよ」

「あー、もう無理なのかなあ」


 アリアンナは、芯のないパスタのようにへたっている。


 ゾーエはまだ諦めていない。


「まだ分からないわよ。たくさんの候補者から選定するのだから、時間が掛かるでしょ。もしくは何かトラブルでも起きて揉めているかも。諦めるのは早いわ」


 アリアンナを励ますが、その言葉には力がこもらない。


 レーナは口出しせず、ペッピーノの体をモフモフしながら会話を聞いていた。


「レーナ、ちゃんとサポートした?」


 ゾーエの苛立ちの矛先が、レーナに向かってきた。


「ちゃんとしました」


 そこは毅然と言い返す。


 ヴィオラが冗談めかして言った。


「敗者復活とかないの?」

「敗者って、どういう意味?」

「敗者は敗者でしょ」

「ああ、ヴィオラは黙っていて」

「せっかくレーナがドレスを洗濯して綺麗にしたのにね」


 泥汚れを落とすのは大変だったなあと、レーナはしみじみ思い返した。遠い昔のようだ。


「結局、ドレスを落とした犯人は分からなかったね」

「あれ、あたしなの」


 ヴィオラがサラリと白状したので、全員、唖然として大口を開けた。


「え? ヴィオラが犯人だったの?」

「うん。ちょっと引っ張っただけなのに、竿ごと落ちちゃった。竿の引っ掛けが甘かったんだよ」


 テヘペロですませるつもりの上、レーナのせいにしようとしている。

 誰かのせいにするのは、この家の教育方針のようなものだ。


「なんであの時に素直に謝らなかったの」

「だって、みんながものすごく怖かったんだもの。でも、結局泥と一緒に水の泡だったねーって、今、巧いこと言えたよね」


 黙っていられないところは、やっぱり子供である。


 レーナは愕然とし、アリアンナは怒り出した。


「巧いこと言えたねって、褒めるわけないでしょ!」


 とはいえ、終わった話である。今さらヴィオラを責める気力は誰にもない。


 家族の話題がカルロ王子に移る。


「カルロ王子って、格好良かった?」

「結局見ていないわよ。どこかで私たちを観察していたようだけど」

「自分は姿を見せないで覗き見しているって、なんだかねえ。もしかして、人前に出られないほどの、もんのすごい不細工とか」


 ゾーエが想像で貶める。


「えー、それだったら選ばれなくて良かったのかも」


 本気にするアリアンナ。


「あんた、どんなに不細工でも相手は王子様だからね。文句を言うなんて百年早いよ」

「そんなあ!」


 お妃選考会に行っただけで上流階級になった気でいたゾーエとアリアンナだったが、すっかり以前に戻っている。

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