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お忍び王子 12

「レーナの悲鳴⁉ 何かあったに違いない!」

「急ぎましょう!」

「ワンワン!」


 先にレーナの異変を感じたペッピーノが吠えながら勢いよく走っていった。その後をカルロ王子とランベルトが追う。


 バンダナで顔を隠した男が、レーナを後ろから羽交い締めにしてどこかに連れ去ろうとしていた。

 顔を隠しても、バンダナの模様が同じだからバレバレだ。


「ガウウ! グルル!」


 ペッピーノが牙をむき唸り声を上げて、レーナを守ろうとバンダナ男に噛みついた。


「あっちへいけ!」

「ギャイン!」


 バンダナ男は、ペッピーノの体を振り落とすと蹴り上げた。ペッピーノの体は、遠くに飛んで行った。


「貴様! その娘をどこに連れて行くつもりだ!」


 カルロ王子とランベルトが剣を振りかざして向かっていくと、「ヤベえ!」と、バンダナ男はすぐに諦めてレーナを放り出して逃げ出した。


「キャ!」


 短い悲鳴を上げてレーナが地面に転がる。


「レーナ! 大丈夫か⁉」


 レーナに気を取られている間に、バンダナ男は走って逃げた。


「クソ! 逃げられる!」

「レーナは無事だ。それだけでいい」


 このまま逃がしては同じことが繰り返されてしまうと考えたランベルトは、バンダナ男を追いかけて行き、姿を消した闇に向かって大声で叫んだ。


「マルコーニに伝えろ! お前の陰謀は全て分かっている! これ以上レーナに関わったら、店が潰れるぞ!」


 声が闇に吸い込まれていく。


「これで手を引いてくれればよいが」


 レーナのところに戻った。


 カルロ王子が介抱し、ペッピーノは、自分も怪我をしているのに、レーナの顔を必死にペロペロと嘗めている。


「クウーン、クウーン」

「レーナは大丈夫ですか」

「はい。助けてくれてありがとうございます。えーっと、確かカルロと、お友達の方ですよね」

「ランベルトだ」

「本当に、なんて言えばいいか分からないほど感謝しています。それと、ペッピーノ。あなたも勇敢に戦ってくれてありがとう」

「クウーン、クウーン」


 レーナは、ペッピーノの蹴られたお腹を優しく撫でる。


「恐ろしい目にあったな」

「一体、何だったんでしょう?」

「ライバル店の嫌がらせだ」

「え? そうなんですか?」


 心当たりのないレーナは驚いた。


「私たちは今の男を知っている。ラーメンを作らせた男だ。あいつは、君の料理で繁盛しているのを許せないライバル店のマルコーニが営業妨害のために雇った男だ」

「そうでしたか。なんて卑劣なことを」


 悲しい目になる。


 ランベルトは、この機会に最初に渡したチップのことを確認した。


「初めて我々が来た時、フランカに君へのチップを託したんだが、受け取っただろうか?」

「チップですか? いえ、知りません。私にお客様のチップが回ってくることは、滅多にありません」

「そうか……」


 懸念した通り、フランカが独り占めしたようだ。


「あの店は辞めた方がいい。君のためにならない」

「でも……」

「身の危険がある上に、君の料理で繁盛しているのに報われなさすぎる」

「私の父が契約金を受け取っているのです。だから辞められないのです」


 レーナは、あの店で働く事情を話した。


「そうだったのか……」

「でも素敵なお客さんばかりなので、今はあの店で働くことを楽しんでいます」

「それならいいが……」


 カルロ王子がレーナを背負い、ランベルトは歩けないペッピーノを背中に担いで家まで送った。


(やれやれ、深夜にコヨルフを背負って歩くことになろうとは)


 ランベルトは、カルロ王子のわがままに付き合うのも骨が折れると思った。



 それ以来、レーナの周辺に怪しい男がうろつくことはなくなった。


 バンダナ男が、「レーナが騎士に護衛されていた」ことと、カルロ王子の言葉を伝えたことで、闇組織がレーナの後ろ盾になっている、自分の名前も知られていると考えたマルコーニが、恐ろしくなって妨害を諦めたからだった。

次章、カルロ王子のお妃選びで大騒動。

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