048 VSキメラスライム
キメラスライムとの戦闘が始まった。
「戦い方は打ち合わせどおりにお願いね! 【極光の弓】」
リザさんはオーロラの弓を構える。
俺、結菜、カーミル、奈々絵は「はい」と返事をする。
俺達は、ムナールさんからキメラスライムの情報を貰っている。
その情報によると、キメラスライムは触れたモノを取り込みその能力を使えるとの事だ。
キメラスライムの至る所から出ている魔物や人間の部位は取り込まれたのだろう。
他に、キメラスライムは切っても別々の個体となる。
安易に斬るのは危険だ。
それと、キメラスライムはモノ溶かす液を出す事が出来る。
普通の鎧や武器は簡単に溶かすとの事だ。
調査隊は、前衛部隊がキメラスライムの能力よって全滅し、そこから崩壊したそうだ。
リザさんは、その情報を元に、遠距離攻撃主体でキメラスライムを攻撃していく作戦を立てた。
「【光の剛弓】」
奈々絵が光の弓を構え、矢を放つ。
「【龍炎弾】」
カーミルの放った魔法はキメラスライムの頭部に着弾する。
「【氷弾】」
結菜は氷の弾を打ち出す。
リザさんは弓からオーロラの矢を次々に放っていく。
俺はというと、後ろで待機していた。
理由はキメラスライムの強さが未知数の為だ。
もし、リザさんに〈死からの反撃〉を発動させてもらって、キメラスライムの方が強ければその時点で戦況が危うくなる。
じゃあ、最初からキメラスライムで〈死からの反撃〉を発動すればいいじゃないかとなるが――キメラスライムは分裂する。
今はキメラスライムが1体だけだが、分裂したキメラスライムがもし残っていて、それが今戦っているキメラスライムより強ければ、その時点で戦況が危うくなる。
分裂したキメラスライムがくっついてまた1体に戻っている可能性もあるが、実際、何があるか分からないからとの事だった。
だから俺は、リザさんがキメラスライムの強さを見極めるまで後ろに下がっている。
キメラスライムが電撃を放つ。
「【土剛壁】」
リザさんが土の壁を作り、電撃からみんなを守る。
「ナナエちゃん、少し切り取っちゃって!」
「分かりました! 【光剛刃】!」
リザさんの指示で、奈々絵が光の刃をキメラスライムの手に放つ。
キメラスライムの手が真ん中あたりから切断され、落ちる。
その落ちた部分が形を変え、全長1メートルくらいのキメラスライムが生まれる。
「カーミルちゃん! お願い!」
リザさんが弓で本体のキメラスライムを牽制しながら指示を出す。
「【龍炎渦】」
カーミルが放った魔法が、新たに生まれたキメラスライムを炎の渦が襲う。
数秒後、毒々しいマーブル状の色をした全長1メートルのキメラスライムは跡形も無く燃え尽きた。
リザさんの考えた作戦は、キメラスライムを遠距離から魔法で攻撃しつつ、キメラスライムを少しずつ切っては、分裂したキメラスライムを倒し――つまり、ちょっとずつキメラスライムを削り取って倒す事だ。
「分裂した個体は、本体ほどの強さは無さそうね。どんどんいくわよ!」
「「「はい」」」
結菜、奈々絵、カーミルが返事をする。
キメラスライムの切断された手は元に戻っていた。
「【光剛刃】――えっ!?」
奈々絵の放った光の刃はキメラスライムが作った氷の壁に阻まれる。
「【暴風】」
カーミルは、キメラスライムが飛ばしてきた溶解液を風で押し返す。
溶解液が落ちるとジューっと音ともに床を溶かした。
あんなの普通に浴びたら一溜まりもないな。
リザさんは、オーロラの矢を連射し、氷の壁を壊す。
「ナナエちゃん! 今よ! ユイナちゃんはキメラスライムの気を引いて!」
「【氷散弾】――奈々絵!」
「結菜ちゃん! 【光剛刃】」
結菜が氷の散弾を放ち、奈々絵が再び、キメラスライムの手を切り落とす。
「【龍炎弾】」
カーミルは切り落とされた手から新たなキメラスライムが生まれる前に焼き払った。
「【光剛刃】」
奈々絵の攻撃が、キメラスライムの氷壁によって再び防がれる。
「――【屈折光剛刃】」
奈々絵が再び放った光刃は氷壁の横を通った後、軌道が折れ、キメラスライムの手を切り落とした。
カーミルはそれをすぐさま魔法で焼き払う。
奈々絵がキメラスライムを少しずつ切っていき、カーミルがそれを焼く。
結菜がキメラスライムの気を引き、リザさんが全体の指示とフォロー。
4人の連携の取れた動きでキメラスライムはみるみるうちに小さくなっていく。
あれ? 俺の出番あるのか?
なんか、そのまま倒してしまいそうだぞ。
1時間ほどで、キメラスライムは半分の15mほどまで小さくなっていた。
「キメラスライムの攻撃手段が減ってきたわね」
たしかに、リザさんが言った通りだ。
明らかに最初より攻撃の方法が少なくなっている。
「――――もしかして、取り込まれているモノがなくなればその攻撃を使えなくなるのからしら?」
リザさんは少し、考え込む表情をしながら呟く。
たしかに、キメラスライムは小さくなったが他に、取り込まれていた魔物や人の部位がみんなの攻撃により最初より明らかに減っている。
「カーミルちゃん、ユイナちゃん、ナナエちゃん、魔力量は大丈夫――――そうじゃないわね」
リザさんの問いに3人は厳しそうな顔をする。
「ユウシン君! 手番よ!」
「はい! リザさん! 待ってました!」
やっと俺の出番が回ってきた。
「――【光刃】」
リザさんは俺に向けて魔法を放った――――
――――――――――――〈死からの反撃〉発動。
「ユウシン君、キメラスライムに取り込まれてるモノをどんどん切っていちゃって――でもスライムの所はあまり切らないようにね」
「分かりました」
「3人は後ろに下がってなさい。後は、私とユウシン君で終わらせるから」
「優心、任したよ」
「ユウシン、後はお願い」
「優心君、後、お願いね」
結菜、カーミル、奈々絵は俺に一言ずつ声を掛け、後ろに下がっていく。
俺は短剣を抜き、キメラスライムに駆け寄る。
リザさんが魔法で後ろから援護してくれる。
俺はまずキメラスライムの足から出ている魔物の角を斬り飛ばす。
キメラスライムが電撃を放ってきたが俺に当たると消滅した。
キメラスライムは再び電撃を放ってくるが俺はそれを無視して、足から飛び出ており、取り込まれたと思われる魔物や人間の部位を次々に斬っていく。
「ユウシン君!」
俺はキメラスライムの溶解液を躱しきれずに左腕に浴びてしまう。
溶解液は俺の短剣と左袖を一瞬で溶かした。
左腕がジュージューと音上げており、焼けたように痛かった。
スキルが無かったら、腕ごと持っていかれてたな。
痛みは〈死からの反撃〉の再生能力ですぐに引いていった。
キメラスライムの2メートルはある拳が俺に襲いかかる。
俺はすぐさま後ろに跳び、距離を取った。
それから、足に取り込まれたモノを全て、斬り飛ばし終えた。
「私が引きつけるから、背中をやりなさい!」
リザさんが大量にオーロラの弓から矢を放つ。
俺はリザさんがキメラスライムの気を引き付けてくれているうちに後ろへ回り込む。
背中にある取り込まれたモノの位置を確認する。
よし、1回で決める。
俺はキメラスライムの肩に跳び乗った。
そこから背中を駆け下りつつモノを全て切り飛ばした。
「その調子よ! ユウシン君!」
俺はそれから、リザさんの援護をもらいながら、キメラスライムに取り込まれたモノを次々に斬っていた。
数分後にはキメラスライムに取り込まれたモノは無くなっていた。
攻撃方法も溶解液と物理攻撃しかしてこなくなっていた。
「予想通りだったわね」
リザさんの推測は当たったようだ。
そろそろ〈死からの反撃〉の効果が切れそうだった為、リザさんの元に戻る。
「ユウシン君、スキル切れそう?」
リザさんがキメラスライムに矢を放ちながら聞いてくる。
「――今、切れました」
「【光刃】」
――――――〈死からの反撃〉発動。
「ユウシン君、一気に切り刻んでいいわよ」
「リザさん、いいですか?」
俺は心配する。
そんな事をしたら、キメラスライムの数がとんでもない事になるからだ。
「大丈夫よ。多彩な攻撃手段もない上に、最初からしたら半分以下の大きさよ。やっちゃいないさい」
「了解です」
俺はキメラスライムに駆け寄り、手始めに両足を斬り飛ばす。
次に飛び上がり、首を刎ね、落ちながら胴を切り刻んだ。
バラバラになったキメラスライムがそれぞれ人形になろうとする。
「ユウシン君! 離れなさい!」
俺が急いで離れた瞬間だった。
「【雷光の裁き】」
リザさんの放った魔法により、分裂した全てのキメラスライムが焼き払われた。
俺達は無事、キメラスライムを討伐する事が出来た。
俺はリザさん達の元に戻る。
「お疲れ様、裸の英雄君」
「ちょっ! リザさん今関それは係無いでしょう」
その呼び名は辞めてほしい。
不名誉だ。
「よく自分を見てみなさい。裸の英雄君」
「リザさん、何を言って――――」
俺の服が無かった。
俺は全裸だった。
俺は咄嗟に息子を両手で隠す。
「リザさん、何か着るものください」
「どうしようかな~」
リザさんは悪戯げな笑みを浮かべる。
「リザさん!?」
ふと、3人が視界に入る。
結菜とカーミルは少し顔を赤くしながらこっちを見ていた。
奈々絵は耳まで真っ赤にしながらも同じくこっちを見ていた。
そんなに見られると恥ずかしいんだけど。
「はい、ユウシン君」
俺はニヤニヤ顔のリザさんからローブを受け取り、すぐに着る。
リザさんの表情が非常に難しいものに変わっていた。
「――――なんか、嫌な予感がするわ。早くダンジョンを出ましょう」
リザさん以外の俺達4人は首を傾げる。
俺達はリザさんを先頭にキメラスライムのいた部屋から出ようとした。
――――その時だった。
「あ~あ、ワタシの作った可愛い魔物ちゃん、死んじゃった」
知らない女の声がした。




